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来たれ、わふわふ!


―――応接間


「ここに署名して、婚姻成立ですね」


「あぁ、これを陛下に提出すれば正式に婚姻が成立する。だが、いいのか」


「はい。貴族令嬢として、覚悟はできております」

ビシッ。


「わかった」

そう頷くと、レオンさまは侍従に書類を王城に届けるように命じた。


―――続いては私の部屋だ。


「ここの部屋を使ってくれ。必要なものがあれば逐一教えてくれればいい」


「わかりました。レオンさま」

急に嫁いだとは言え、婚姻については結ばなくてはならないと決まっていたので最低限の用意はしてくれていたようだ。


「夫婦用の寝室もあるが、ここにもベッドもあるから」

確かにこちらにもベッドが用意されているけれど。


「あっ、寝る時は別々なのですか?」


「?」

レオンさまがきょとんとしていた。えっと。


「俺と寝るのか」

そう、静かな声だが意外そうに聞いてこられた。


「もう夫婦ですよね?」

ならば一緒に寝るのでは?獣人族の文化に夫婦はわざわざ別々に寝るというのはなかった気がするのだが。


「君は、それでいいのか」

え?どういうこと?


―――まさかっ!


レオンさまは白い結婚をお望み!?


―――と、言うことはだ。


「あ、あ、愛人ですか」

貴族あるある。上流階級あるある。


「は?」


「愛人がいるのですね。わ、わわわわかりました」

これでも貴族令嬢。世の中にはそう言うのもあると聞いた。だって政略結婚だもの。それに相手はお若いとはいえ公爵さまである。たかだか侯爵令息しかも次男であったアレクセイですら、我が妹・エミリアのちょっとアホなところに付け込んで手を出したのである。


もふっ


あぁ、私の中では君だけが救いだよ。わふたんぬいぐるみ。因みに名前はわふ太。♂で永遠の5歳と言う設定だ。


「だ、大丈夫、です!」

私は毅然として背筋を伸ばし、わふ太を胸にしっかりと抱きながらレオンさまを見上げる。私にはわふ太がいるから!!


「いや、待て」

レオンさまが手で制してくる。


「いいえ、待ちません!私は、別に。別に、いいんです」

ただ、レオンさまのお耳をふにふにしたかった。けれど愛人との子とは言え、父親がレオンさまならば同じわふたんお耳としっぽを受け継ぐ可能性もある!


「ただ、そのー。愛人の方に、産まれたら抱くだけ抱かせてくださいとお伝え願えますか!!」

所詮は政略結婚である。白い結婚でも構わない。ただ、そのふにふにのお耳とわふわふしっぽだけが心残りだ。


「いや、君は何の話をしている。愛人など、いない」


―――いない?


愛人がいない、と言うことは。


「正妻がいらっしゃるのですね」


「いや、正妻は君だ」


「では、側室の方が」


「側室もいない!」


「だ、男色!?」


「いや、それも違う!君はよく話を聞きなさい!」


「えっ、あ、違うのですか?」


「その。俺が結婚するのは君だけだし、妻は君だけだ。めかけを迎えることはない」


「では、ただの白い結婚と言うことですか?」


「白い結婚を、君は望んでいたのではないのか」


「な、何故ですか!」

くわっとついついレオンさまにがっついてしまい、慌てて引っ込む。


「貴族令嬢として育って来た以上、政略結婚だって視野に入れてますし、お勤めはしっかり果たす心構えです!」

バンっと胸に手を当て、レオンさまに告げる。もちろんもう片方の腕にはわふ太をしっかりともふっと抱いている。


「そ、そう。か。では寝室は、こちらだ」

レオンさまが夫婦の寝室に案内してくれた。大きなベッド。きっとふっかふかなのだろう。きっと、寝ながらなら偶然を装って、お耳をふにふにできるかもしれない。寝返りを打った隙に腕をさりげなく上げて、それで偶然お耳に触れてふにふに。あるいはついつい寝返りを打った隙にそのふわっもふなしっぽに触れる、と言ったわふわふイベントに移行できる!!


「夜が、楽しみです!!」


「そうか。楽しみ、なのか」


「はいっ!!」

よっしゃぁっ!わふわふイベント楽しみ~っ!


あぁ、やったよわふ太。私に付いてきてくれてありがとう、わふ太。わふ太と一緒なら私、頑張れる!!



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