結婚式(なにこのまともなサブタイ)
―――レーゲン公爵家を巻き込んだ襲撃事件から暫く経ち、後始末も落ち着いた頃。
私はレオンさまと念願の式をあげた。もちろんヴィルお兄さまも参列している。お父さまは領地で隠居しているので、式を挙げるという知らせを送り、お祝いの品を送ってくれた。
何だか、お父さまとお母さまふたりからお祝いを贈られたみたいで、何だか嬉しい。領地はここに比べて、だいぶ清らかだから静養にはちょうどいい。あっちでは何気にゆったりと穏やかに過ごしているらしいけれど、長い間筋肉超人である勇者と同じような務めを果たしていたお父さまは、体には結構堪えているようで今回の式への出席は見送ったのだ。
それでも。
「―――だいぶ間引いたんだけどな」
「ロロナ?」
「ううん、何でもない。レオンさま」
今日はレオンさまとの婚約を祝うパーティーで。何故かシスコン全開でやってきた王太子殿下にシスコン話を聞かされたり、婚約を結んだお兄さまと王女殿下の仲睦まじげな様子を見てほっとしたり。獣人族やヒト族、竜人族がまじりあっているパーティー会場は賑やかである。
「竜王陛下が心配するほど、両種族の隔たりはないんじゃないですかね?」
「さぁな。もしかしたら、ロロナのおかげかもしれない」
「いえ、わふたん萌えと猫耳しっぽ萌えの影響も絶対ありますよ!」
ついでに、現在猫耳しっぽメイドのリマは給仕を担当している。
「ろ、ロロナは」
何だろう。レオンさまがふるふるしている。
「私は安定のわふたん萌えですよ?」
「なら、いいか」
「えぇっ!」
にっこりとレオンさまに微笑んでいれば。
「ロナッ!ロナ~~~ッ!!!」
あぁ、ウチのシスコンが来たかー。
「うぇっ、今からでも、帰ってこないか!?」
いや、パーティーの時までそんなこと言わないの!お兄さまったら。隣の竜人族の王女さまがびっくりしてるし。
「リーシェお義姉さま。こういう時は遠慮なくツッコんでいただいて構いませんよ」
因みに、リーシェさまとは王女殿下のお名前である。銀色の流れるような髪にアメジスト色の瞳を持つ竜人族の美女で、頭からは竜角、後ろからは竜の尾が覗いている。
「まぁ、では。えいっ」
わぁ、本当にツッコむとは。めちゃくちゃフォームのいい手刀である。
「げふっ。あれ、何だこの感覚。どうしよう。ぼくはリーシェに惚れてしまったようだ」
「えっ!?」
どうやらウチのヴィルお兄さまは、ツッコミ加減によってドキドキするたちらしい。
「以前から思っていたが、あれは大丈夫なのか」
レオンさまが真顔でそう問うてくる。うん、まぁ、レオンさまも後ろでリーシェお義姉さまをストーキングしている王太子殿下の側近を一緒にされているんだものね。ヴィルお兄さまの優秀なところと合わせて、残念なところもたくさんご存じなのだろう。
因みに王太子殿下とリーシェお義姉さまは髪と瞳の色がそっくりだ。ただちょっと王太子殿下の顔がにやけ過ぎなだけで。
「たまに大丈夫じゃないですが、リーシェお義姉さまならヴィルお兄さまをうまく扱えると思います」
「まぁ、仲良くやっていけるのならそれでいいが」
「そうですね」
そう言って、ふたりの仲睦まじげな様子を見て苦笑する。背後では王太子殿下が嫉妬マックスなのだが。ついでに王太子妃殿下は竜人族の方で、現在懐妊中とのことで参加はされず、代わりにお祝いのお品をいただいたのだ。
「あぁ、でも。王太子のストーキング具合のことは、後でチクっておく」
誰に、とは聞くまい。多分レオンさまが王太子妃殿下にチクるんだろうな、と確信する。
そしてヴィルお兄さまの側にその専属騎士・ラファエルを見かけたので手を振ってみる。
ビクッ
いや、何で私と目が合ってそう身震いするよ。オイコラ、ちょっと顔貸せやコラ。
「本日は、おめでとうございます。だ、だ、だいま」
「ラファエル?」
にこっ
緊張しているのかな。しょっちゅうヴィルお兄さまの護衛でパーティーやひとの多いところには付いて行っているだろうから、今更緊張なんてしなさそうなんだけど。
「はっ、ロロナさまっ!!」
何だろう。めっちゃすっごい気合いを込めて騎士の礼をされた気がする。
「エミリアは元気?」
こう言う場に来ると、狙われやすいから。あの子。結婚して身を固めた以上は必要以上に社交界に出る必要はないだろうし、本人も今は悠々自適に生活しているらしいからいいのだけど。
「えぇ。毎日我が愛を囁き、甘い吐息を吹きかけ、愛を注いでおります」
わぁ、新婚さんらしくイチャイチャー。
「(俺たちも今夜は)」
って、え―――っ!!?レオンさまったら耳元で何を!?そんな積極的なキャラでしたか!?いや、たまにすっごいぐいっぐいくるんですけど、そのわふわふお耳をふにふにしたくてたまらなくなるんですけどっ!!
「あ、猫も元気?」
エミリアが猫耳しっぽ萌えを起こしたのでプレゼントした自前のねこちゃんぬいぐるみのことである。
「も、もちろんです。決してロロナさまには逆らわないとの誓いを守っております」
いや、何の話だ。そんな誓いした覚えないから。てか、忠誠ならヴィルお兄さまに捧げればいいじゃん。主従の関係なんだから。
「ロロナの周りは、賑やかだな」
「そうですか?ちょっと騒がしいかもしれません」
「ん、たまにはいいか」
確かに。私はあまりこういう場は好きではなかったのだけど。
「レオンさまと一緒なら、楽しいです」
「そうか」
そう言うと、いつものようにレオンさまが私の頭にぽふっと手を乗せてくれた。―――あの時のように。




