【SIDE:ラファエル】レーゲン公爵付き専属騎士・ラファエル その3
※今回もラファエルさん視点のお話です※
※時系列は前半:エミリアの幼少期、後半:現在となります※
※なお、本話においては以下の注意報が発令中ですので、みなさまどうぞお気をつけてお読みくださいまし(笑):ドM注意報、ヤンデレ注意報
―――ねぇ、そこに誰かいるの?
神々しいそれは、俺にとっての天敵。ましてや封じられて以来、ずっとずっと穴倉の中にいた。そんな時に降り注いだ、神々しくも甘美な匂いを運ぶそれを俺は知っていた。
―――アァ、聖女だ。
一度、この口で食んで以来、ずっとずっと恋焦がれてきた。その味がこの身に一気に蘇る。女神に愛されしその清らかな身を、穢すその瞬間が、この上なくたまらないっ!アァ、飢えて渇いた喉がその甘美な味を求めているのだっ!
それなのに、結局は女神が加護を授けた勇者のせいでこの身を封じられてしまった。もう一度、もう一度聖女のその甘美な肉を味わえば力が戻るだろう。勇者ですら倒しきれず封じることしかできなかったこの俺がまさに今、復活する!
既にこの屋敷には女神が勇者を精製したことはわかっているが。ふっふふ。それが失敗したことは目に見えて明らか!俺の封印が弱まるのを見越して、この屋敷に産まれた小童に加護を授け精製しようとしたようだが、まんまと失敗した。
元々女神の加護が付与されている以上、悪しきものはこの屋敷に足を踏み入れることができない。勇者もどきがこの屋敷に住んでいるうちは。
しかしながら、元々ここに封じられていたものならば。
―――勇者精製に失敗した以上、この俺を縛りつけるものは何もない!
『あぁ、苦しい。ネェ、その縄を解いて』
もどきとは言え、聖女の力をもつヒトの子。きっとこの弱り切った封印も解けるはず。
「くるしいの?わかった!えみりあがといてあげる!」
そうか、そうか。エミリアと言うのか。クッフフ。何も知らずに俺を解き放ち、なおかつ名前まで俺に教えてしまうとは、愚かと言わざるを得ない!さぁ、俺をここから解き放て!!
―ブチィッ―
『アァ、解けた、トケタ、封印がトケタァッ!まずは聖女エミリア、貴様を食んでくれようっ!!』
俺はその愚かな聖女に襲い掛かった。牙を剥き出しにしながら唾液を滴らせながら!!
『アーッハッハッハッ、―――ンァ?』
―――な、何だ?
何か、唐突に恐ろしい気配を感じる。
この気配は古の時代に感じた偉大なるお方と同じ気配!
そんな、そんなバカな!勇者もどきと聖女もどきしかおらず、なおかつ女神の加護で悪しきものは入れないようになっているはずなのに!
もしくは俺と同じく封印された存在?いやいや、今までそんな気配はちっとも感じてこなかったのに!一体、一体どういうことだァァァッッ!!!
俺は無我夢中で振り返った。その瞬間。
グワシッ
「妹に何、してるの?ねぇ、***」
―ピシィッ―
な、何故だ。俺の頭を押さえつける少女の姿をしたそれは、次の瞬間俺の真名を告げたのだ。な、な、何故っ!何故このようなヒトの子がそれを知っているううぅぅぅっっ!!
「***」
再び少女の口からあどけないかわいらしい声で発せられる、しかし恐怖の響き。
―バキバキバキィッ―
身体中を駆け巡るその鋭い痛みに俺は震えた。震えが止まらない。あぁ、キモチィッ!久々の快感っ!!これは、これはまさしくぅぅぅっっ!!俺を跪けさせる唯一無二の存在!!
「だっ、大魔王さまぁ―――っ!!!!!」
※なお、上記のセリフには本人の妄想が含まれている場合があります。
俺は必死になって平伏した。そして大魔王さまの陰から今度は少し年上だと思われる男のヒトの子が現れる。
「それ、だれ?ウチに迷い込んだの?どこのお家の子?」
はぁ?誰に命令してやがるたかが小僧がああぁぁぁっっ!俺を跪かせることができるのはそこな大魔王さまだけじゃああぁぁぁっ!!!
―にっこぉっ―
ビクッ。少女がとびっきりの怒りのスマイルを向けてきた。すんませんっした大魔王さま。素直に答えますから、ハイ。
「い、家は、ないです」
「ないの?じゃぁ、ここではたらく?住み込みだよ」
そう、男のヒトの子が言う。
「そうだ、おにーさまの騎士がいいよ!だって、おにーさまはしょうらいこうしゃくさまになるんだもん!」
―え?大魔王さま?俺にこの小僧の家来になれと?―
「ね?いい考えでしょ」
にっこぉ。あれ、俺これ、逆らえなくね?
「おにーさま、名前つけてあげなよ」
ひえぇ―――。それほんまもんの契約ですやん大魔王さまぁ―――っ!!!いや、真名を教えないだけましっすけども。
「それじゃぁ、そうだ!ラファエルにする!この前の本に出てきたもんっ!」
え、何そのこの俺の存在に著しく似合わなさそうなそうな名前はあああぁぁぁっ!!んああぁぁっ!でもダメ!この名前で縛られる感覚がっ、快感には抗えないいいいぃぃぃっっ!!!
***
こうして俺は、大魔王さまの策略によって主君ことヴィリアムさまにお仕えすることになってしまった。そしてその傍ら、この聖女と言う生き物に興味を持ち、―――酷く惹かれた。
思えば、あの日であったその瞬間から、この聖女を手にしたくてしたくてしょうがなかった。一度、この口に食んだあの甘美な味わいよりもなお、存在そのものが俺を甘美な刺激をもたらすのだ。
「エミリア」
「んっ、んぅっ」
俺の腕の中で、エミリアは眠たげに目を開けた。こんなに愛おしい少女が、この地上にいるとは。
「ふふ、寝言までこんなにかわいいなんてな。これは初耳だ」
「ん~?、あれぇ、なんでらふぁえるがいるのぉ~?」
純粋無垢でひとを疑うことを知らないまっさらな魂。
「何故って、エミリアが俺のものになったからだよ」
あぁ、遂に彼女に告げてしまった。
「何言ってるの?私がラファエルのもの??どういう意味?」
きょとんとしながら見つめてくる彼女は、俺に信頼を寄せてくる。ひとつ、文句を言っていいのならば彼女は純粋すぎるのだ。だからこそ、誰にでも心を開き、疑うことをしない。まぁ、ちょっとばかりあのバカアレクセイのせいでもう恋なんてしない妄想に走ったが。
「大丈夫。エミリアにもしっかりわかるように、俺が一から教えてあげるから」
俺がこれからたくさん、愛を注いで、囁いてあげるから。君は何も心配することはないんだ。
「そうなの?それじゃぁお願いね!」
「あぁ。―――それにしても(もう外に出さなくて良くなったのは都合がいいな)」
彼女は純粋すぎて誰にでもほいほいと付いて行きすぎだ。今回のアレクセイのことだって。その分、正式に俺のものになり、更には俺が彼女を一生独占する権利を得たことはこの上ない幸せであろう。
「今、何か言った?」
「ううん、何も」
「そうだ、お兄さまは?」
「公爵になったばかりなので執務が忙しいのですよ」
彼女の口から出てくる男の名が、我が主君のものでなければ、即刻使い魔に捕らえさせて贄にしていたものを。―――少しだけ残念だな。
「む~、お兄さまと遊べないなんて。そうだ!お父さまにお手紙だそうっと。あれ、メイドは?」
うぐっ、そう言えばあの勇者もどきも彼女にとっては大切な存在なのである。これは文句を言ってもしょうがない。大魔王さまにオシオキされるのはやだもん。
「メイドは今日からいないよ。まぁ、俺がいない間は使い魔をつけるけど」
メイドね。同じ女だとしても、家族意外と彼女を会わせるつもりはない。本当は家族からも隔離したいけれど、それは主君とそして大魔王さまが許さないだろう。
何より、現在エミリアが大切そうに抱っこしている猫のぬいぐるみがそれを物語っている。こ、これは恐らく、大魔王さまからのお達しだ。
―自分が嫁に行ったからって調子に乗ったら許さない―と言う名の!!
※若干本人の被害妄想が入っている可能性があります
「使い魔?ラファエルって使い魔いるの?騎士じゃなかったの?」
「俺は騎士で魔法使い。そう、これからは念願かなって主君の許可もとれたし。それに」
ヴィダルさまももうこの屋敷にはいない。つまり使い魔たちを自由に邸内に放ち、そしてエミリアのために配備できる。ま、ヴィダルさまの女神の加護が抜けた分、屋敷内の警備は今以上におろそかになりネズミが紛れ込む可能性も高い。領地の方はヴィダルさまがいるから、滅多なことは起きないだろうけど。
なんせ新公爵はまだまだ若い。ボーデン公爵のように魔物相手に戦功をたててきたわけでもない。
「ふっ、せいぜい守ってやろう」
我が愛しの妻のために、ね。




