【SIDE:ラファエル】レーゲン公爵付き専属騎士・ラファエル その2
※今回もラファエルさん視点のお話です※
※ちょっと危ない思考注意。でもまだ序の口※
―――その日私はヴィリアムさまに同行し隣国へ赴いていたため、不覚を取ったのだ。家令が息せき切って隣国まで馬を飛ばし(※家令は何故か乗馬が大得意)てやってきた知らせに、私もヴィリアムさまも息を呑んだ。急いで業務を強制的に終えたヴィリアムさま、家令と共に大急ぎで帰国しその足でボーデン公爵家を訪れた。
私としては一刻も早くエミリアを誑かしたアホアレクセイを斬り刻みたかったのだが、ロロナさまに視線で制されては我慢するしかない。何より、エミリアを元婚約者のアレクセイに誑かされたロロナさまが我慢をしているのだ。ここは私も。
いや、違う。ロロナさまは完全にわふたんお耳にしっぽのボーデン公爵にわっふわふではないかっ!くっ!私もボーデン公爵のようにエミリアの心を独占したい。いや、待て待て。まだその時ではない。私はあくまでもヴィリアムさまの騎士なのだ。ここは我慢するしかあるまい。
―――だがその前に追い出されたヴィリアムさまと共に帰邸することとなった。
はぁ、ロロナさまのわふたん好きを軽く見るからこうなるのです。全くヴィリアムさまはシスコンが過ぎる。
しかしそんな主君を見るのもおもしろ・・・いやいや、聞き流してくれ。
そして屋敷に帰れば。さすがに使用人たちに取り囲まれて涙目になっているエミリアがソファーの上で縮こまっていた。主君のお父君・ヴィダルさまは許してあげなよ~と相変わらず呑気だったが。
「ラファエル。暫くはお前にエミリアの監視を任せる。部屋に軟禁し、外に出さないように」
んなっ、主君!?自分にその権利をくださると!?何と言う僥倖!!
しかしながらそれにヴィダルさまが噛みつかれた。
「そんなかわいそうだよ~、ね?」
「うん、お父さま」
とヴィダルさまの言葉にうんうんと頷くエミリア。は?それは何?俺に軟禁されることが不満ってこと?ちゃんと本能でわからせてあげないとわからないのかな、エミリア。
「父上。では父上が一緒にいてあげてください」
「うん、そうだね!一緒にいるよ。かわいいエミリア!」
「お父さま!」
何だ、このアホとバカな娘と父。私のウッキウキの初監禁、いや軟禁にまさかヴィダルさまが付いてくるとは。主君、私をじらしたいんですか。
そして初軟禁はと言えば。何だかエミリアとヴィダルさまがウッキウキで楽しんでいた。エミリアを私が楽しませているのではないのが不愉快でたまらない。
―――いずれ、私がその権利を主君から得た時は、徹底的に監禁して差し上げなければ。これはこれで萌え、いや燃える。
そして4日間は何事もなく過ぎ、暴走したヴィリアムさまが爵位をもらいに行くと同時に、ヴィダルさまが領地へと向かって旅立った。さすがに見送りの時は軟禁を解かれたエミリアは涙し長あらヴィダルさまを見送った。
更に、爵位をもらったその足でボーデン公爵邸へ向かったヴィリアムさまに続いてお側に控えていればその場にエミリアが乗り込んできた挙句、家令が息せき切って再び馬を飛ばしてきたのだ。
そしてその知らせを聞いて一同は目を瞠った。
なんと、レーゲン公爵家が襲撃されたのだと。
私はエミリアを姉君・ロロナさまに預け、主君と共に事件の捜査や犯人の捕縛任務を完遂した。もちろん、捕らえたアレクセイのバカは盛大にバキボキ折った上で王国騎士団に突き出してやった。
陰で“狂犬”だと囁かれていたが、まぁいい。どうせ私は狂っている。
しかしながらボーデン公爵家から連れ帰ったエミリアは。
―――まさかの、ロロナさまお手製ねこちゃんぬいぐるみを腕に抱えていたのである。
そ、それは何ですかロロナさま!私への宣戦布告なのですか!?何故犬ではないのですか!!
何でも、エミリアはあちらにいる猫耳しっぽメイドに猫耳しっぽ萌えしたらしく、早い話、ハマってしまったのである。うぐぅ。それはこれか。ロロナさまが私に与えし試練なのか!!
―――やはりあのお方は全てをお見通しなのだ。初めて目を合わせたその瞬間から!
そしてその夜、私は主君であるヴィリアムさまに呼ばれた。
「ラファエル」
「はい、ヴィリアムさま」
私は静かにその名を呼んだ主君に騎士の礼を捧げる。
「実は、王命で王女が降嫁することになった」
あぁ、ネーベル侯爵家への降嫁が中止になりましたもんね。他のめぼしい年の近い高位貴族の子息の候補がいないのでしょう。既にボーデン公爵はロロナさまと婚姻を結ばれてしまいましたから。これに獣人族側が反対するという可能性もありますが。他でもないボーデン公爵が此度の事件に協力して下さり、そしてレーゲン公爵家のロロナさまがボーデン公爵に嫁いだのです。変に騒げばボーデン公爵の不興を買います。ボーデン公爵を見ていてわかりますよ。私はヒト族ですが、それでも犬特性を持っています。―――ただし狂っていますが。
ボーデン公爵はロロナさまにメロメロなようですし、ロロナさまも同じ気持ちなのでしょう。そんなおふたりの様子は、最近新聞でも取り上げられていましたね。ほかならぬロロナさまが腕に抱いた黒い毛並みのわふたんぬいぐるみが世間の好感度をぐぐっと上げたそうですし。下手に反発すれば民の心が離れますから。
「それと言っては何なのだが、ぼくが結婚するにあたってな。ちょっと頼みがある」
「はい、我が主君のためならば何なりと」
公爵位を賜り、そして一番に巻き起こった騒動を無事ボーデン公爵家と共に収めたヴィリアムさま。一体私に何をお命じなるのか。何をお命じになっても、私は主君のため忠誠を尽くす所存です。例え、ロロナさまが新たな試練を私に与えてきたとしても。
「そうか。ラファエルには長年、辛い思いをさせたことはわかっている。そして、よくこれまでぼくを支えてくれたな」
「いえ、辛いだなどと」
「だが、これからもラファエルにはこの公爵家を共に支えていってほしいと考えている」
「もちろんでございます」
「ではラファエル。ラファエルに、我が末の妹・エミリアをもらってくれないか。恐らく、このようなことを頼めるのは、ラファエルだけなのだ」
「ヴィリアムさま」
一瞬、これは幻聴かと疑ってしまった。
「貴殿には苦労をかけると思うが」
「いえ、ありがたき幸せ」
私は柄にもなく、無表情を極めたその顔ににっこりと半月状の笑みを浮かべた。
「そ、そうか」
丁寧に騎士の礼を贈り、顔をあげてみればヴィリアムさまの顔が引きつっている。ご自分で言っておいて、ドン引きするのやめてください。主君。
※ヒロイン最恐説(ラファエルの妄想)※




