黒幕と事件の顛末
―――その後、レーゲン公爵家襲撃事件は、王国騎士団・魔法師団の他、獣人族筆頭貴族・ボーデン公爵家のヴォルフ騎士団の協力の元徹底捜査が行われた。
この両種族が手を取り合って事件の真相究明、犯人確保に動いた騒動は瞬く間に王国中、いや隣国まで轟いたそうだ。
“ついにヒト族と獣人族が手を取り合う時”“竜王陛下の両種族友好作戦が功を奏した!”“やはりわふたんは最強である!”などと言った見出しを付けた新聞が号外として配られたのだ。
私的には、コラムの“やはりわふたんは最強である!”にすっごく目が行ったのだが。重要なことをまずは説明しなくては。
今回の騒動で、無事にアレクセイは捕まり持ち逃げされた宝石や金品も全て押収できた。その背後にいた魔法使いと言うのが隣国から入ってきた流れの魔法使い。そしてその中心にいたのは。
―――かつてお父さまを利用しようとしたフュフテ男爵の落とし胤だった。男爵家のものたちは処刑されたと聞いていたけれど、まさか生き残りがいて当時のことを逆恨みしてこんな大それた計画を練っていたとは。
捕らえられた主犯やアレクセイを含めた襲撃犯たちは捜査が全て終了した後、処刑されることが決まった。
何でも主犯に付いてはよくわからないことを口走っているらしい。“俺は主人公なんだ”“フュフテ男爵家を陥れたレーゲン公爵家に復讐して、お家再興を果たすのが使命なんだ”“何でシナリオ通りにいかないんだ!”など様々。言っていることはよくわからないが。そもそもフュフテ男爵令嬢の方がお父さまとお母さまの仲を引き裂き、お父さまに取り入ったのでしょうに。
それを彼に説明してもまるで聞く耳を持たないのだとか。捜査が終了するまでに彼が自分のしたこと、フュフテ男爵家がかつて犯した罪を理解できるといいのだけど。
あ、因みにアレクセイの生家であるネーベル侯爵家はアレクセイを既に追放しているということで無関係を貫いていたのだが、そもそもネーベル侯爵令息だった頃から計画は練られており、エミリアに近づいた時点で首謀者に唆されていたことがあきらかになった。
アレクセイと彼らの接触は、もう何年にもわたって続けられていた。それこそ、私がかつてアレクセイと婚約した時から。だからこそ無関係を貫くにはあまりにもお粗末で、ネーベル侯爵家自体の管理能力も問われたのだ。今はネーベル侯爵家もこの件に絡んでいるのではないかと捜査が進んでいる。
なお、王女殿下の降嫁はなかったことにされた。かつてお父さまを誑かして王国の威信を揺るがそうとした一派と繋がっていた令息がいたのである。これも当然のことだ。
―――近いうちにネーベル侯爵家はお取り潰しになるのだろう。そしてネーベル侯爵家の関与如何によっては処刑もあり得るそうだ。
ま、私にとっては浮気者の元婚約者の家だ。気にかけるのもバカバカしい。それに今はレオンさまの妻だしね。
「それで、エミリアは結局どうするんですか。ヴィルお兄さま」
***
ヴィルお兄さまたちが捜索に向かっている間、エミリアはこちらで預かっていた。この際だ。エミリアの獣人族に対する偏見も解かなくては。そう思って私付きのメイドたちや屋敷のみんなを紹介したのだが。
―――エミリアは、猫耳しっぽ萌えのリマに一目で堕ちた。
エミリアは叫んだ。
『猫耳しっぽ萌え~~~っ!』
そしてそれはエミリアを預かっている数日間にすっかりと定着し、彼女は猫耳しっぽ萌えでもう恋なんてしない体制に移行したのである。
うん、多分終わり良ければ総て良しなのだ。
だけどエミリアよ。姉はわふたんお耳にしっぽ萌えだから。そこだけはよく覚えておくように。
さて、話を戻そうか。
***
「あぁ、そのことなのだが。やはりエミリアにはウチで徹底的に隔離、管理を行うことにした。やはりあの類まれなるヒーリング魔法を狙うものは多い。魔法師団からもスカウトされたのだが、何となく管理体制に不安を感じた」
あぁ、それは私もわかります。レオンさまにも聞いたのですが、十中八九その能力目当て。あのアホさでは危険だろうと。
ウチで預かっている間も、レオンさまはエミリアのアホさと、猫耳しっぽ萌えについて十二分に理解したらしい。捜査を終えてきたレオンさまと、何故かお兄さまもくっついてきて4人で共に晩餐をしている間にすっかりレオンさまも理解してくれたらしい。
―――うん、ヴィルお兄さまのことは大好きなのだけど。基本相手から誘惑されなければエミリアはアホなのでビッチみたいなことはしないのだ。
そして猫耳しっぽを崇拝する姿勢も、割と初期のエミリアへの厳しい視線も和らいだ。いや、ここはわふたん系のお家なのだけど、猫耳しっぽ萌えを崇めることは別に悪いことではない。
『だが、ロロナはわふたん萌えで頼む』
そう、レオンさまに要求されたけれど。
『私は一生涯に誓ってわふたん萌えです!』
私はわふ太を掲げながら宣言した。
「それでお兄さま、エミリアの管理はどのようにするおつもりで?」
ひとまず猫のぬいぐるみをあげたので、それがあればエミリアは大丈夫だと思うが。
「それがな。まぁ、その。ロナも知っているだろう?お兄ちゃんの専属騎士・ラファエルに任せることにした」
へぇ、そうなんだ。ラファエルね。―――またエグイところにやったなぁ、ヴィルお兄さま。
けれどラファエルなら、少なくともエミリアを利用してどうこうすることはないだろう。
―――だって、ラファエルは。
「最適な人選だと思います」
「そうだろう?」
そしてレオンさまが私を迎えに来たことでお兄さまと私の面会タイムは終了し、レオンさまに連れられていく私にお兄さまが断末魔の声で叫んでいた。いや、公爵なんだから恥ずかしいことしないでよ、ヴィルお兄さまったら。
―――そうだ。たまには領地で隠居しているお父さまにでも手紙を出そうかな。




