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【SIDE:ファイ】ボーデン公爵家??・ファイ その2

※引き続きファイ視点のお話


―――時刻は深夜。


ボーデン公爵家の影の長として主君に絶対の忠誠を捧げるこの俺・ファイは、常に主君のためにあり主君を守るために存在する。


いついかなる時も主君を狙う悪女ロロナ・レーゲンへの警戒はおこたらない。今宵こよい、我々はヒト族筆頭公爵家からやってきた間諜スパイロロナ・レーゲンとの眠れぬ夜の戦いに挑んでいた。


夜闇の静寂が全ての音をかき消す。いや、ロロナ・レーゲンの呑気な寝息は響いているけれど。くぅっ!そうやって呑気に寝たふりをしてもバレバレだ!我々は貴様の策になど乗るものか!しがないヒト族の小娘に後れをとる我らではないわぁっ!


―――あぁ、それにしても守護神・黒狼シュヴァルツヴォルフ。名をわふ太くんと言うらしい。めちゃくちゃかわいいなぁ、わふ太くん。主君と同じ黒い毛並みのわふたんぬいぐるみ。もへっと感がたまらない。


うぅっ!こんなかわいらしいわふ太くんがこんな悪女の手に囚われているだなんて!許せずはずもないっ!!しかしながら、もう少しの辛抱だわふ太くん!必ずや我々が、君を悪女の手から救って見せる!よし、部下たちも全員同じ意見のようだ。


引き続き警戒をゆるめるな!我が主君も警戒を緩めない。我らも主君に続くのだ!


―――その時だった。


穏やか過ぎる寝息を立てていたはずの悪女ロロナ・レーゲンが突然目をカッと見開いたのだ!


ぎょぇ―――っ!!?


お、落ち着けぇ―――。ふは―――、ふは―――。大丈夫だ。ロロナ・レーゲンは我々には気が付いていない。たかがヒト族で魔力もほぼない小娘が我らに気が付くはずがないのだ。ヒト族は我々とは違い、暗闇になれていない。慣れているのはごく一部の闇に生きる者のみ。少なくともこの娘は闇に生きる人種ではないはずだ。それは調査結果からも分かっている。特に魔法にも武術にも秀でていない小娘。まぁ、本はよく読むし勉強は人一倍頑張っているみたいだが。―――では、何故?


はっ!!まさかあの女、ついに行動に移す気か!!みなのもの、警戒態勢!警戒態勢!主君の殺気もぶわわっと強まっている。我々もいつでも準備はできております、主君!


そして次の瞬間!ロロナ・レーゲンは、ロロナ・レーゲンはっ!!


くるくるくる~。


―――は?


―――え?


何してんの?あの女。今の何?寝返り?いやいやまさか。てか、子ども!?子どもの真似!?日々真面目に淑女のマナーレッスンを受けていた君は一体どこに行ったんだぁ―――っ!!!


そして案の定レオンさまの背中に軽くぶつかると、素早く主君がロロナ・レーゲンを振り返り夜目が利くその金色の瞳で鋭くロロナ・レーゲンを見据える。おっと、我らもほうけている場合ではない!みなのもの、かまえ!


―――ロロナ・レーゲンの目は完全に泳いでいる!ふふふっ、貴様の計画など我々にはお見通しなのだ!ヒト族の策略などお見通しだ!!先ほど我々の目が泳いでいたのは気にするな!うん、決して気にするでない!


さぁ主君、合図を!いつでも、れます!にっひひひ。


そして主君がロロナ・レーゲンの方へ向き直り、一言二言述べるが彼女は完全に固まっている。勝機は我らにあり!


更には主君がロロナ・レーゲンの体を後ろから拘束する。そして、そして―――・・・


何でそのまま横になって寝だすんですか主君~~~っ!!!そ、そうやってロロナ・レーゲンを油断させるおつもりで?やっぱりそうなんですか?主君??


まぁ、その。これもチャンスですし。ゆっくりと気配を消しながら、狼狽うろたえるロロナ・レーゲンに這い寄る。


ふふっ。いきなりの主君の奇襲に、ロロナ・レーゲンは手も足も出ないようだ。後ろから主君に拘束されているんだもんな。


ははっ!ヒト族の小娘が!獣人族筆頭公爵家のボーデン公爵家に乗り込み、うまく主君に取り入りこちらをおとしいれる気だったのだろうが。


こちとらプロだ。貴様みたいな何のとりえもない小娘に我らをあざむくことなどできまい?さて、そろそろ我らが守護神・黒狼シュヴァルツヴォルフを放してもらうぞ。


まずはこの隙にロロナ・レーゲンの口を窒息させるか、いや喉を潰すか?それともこの神経毒を注射するか。我らが主君に手を出したむくい。どのようにあがなってもらおうかな?


クッククッ。


口元を覆う口蓋の裏でほくそ笑み、そっとロロナ・レーゲンに手を伸ばした時だった。


―――すっ


俺が爪を立てた指の前に、主君の手がそっと伸びてきたのだ。

な、何故。何故止めるのですか、主君!!格好の機会じゃないですか!女もれる、我らが守護神・黒狼シュヴァルツヴォルフをお助けできる!そうではないのですか!?


―――って、ひょえええぇぇぇ―――っっ!!?


あ、あのぉ―――。主君っ!?


や、やべぇ。この気配はやべぇ。


何故かその瞬間ロロナ・レーゲンが目を閉じ、主君がカッと目を見開いてこちらを凝視している。何の殺気もない。


―――無―――


しかしながら、その双眸の中からはただならぬ気配が感じ取れる。


―――まだ。


まだ、その時ではないということですね。主君。


俺はそっと部下たちに撤退を命じた。





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― 新着の感想 ―
[一言] ま、永久にその時は来ないのですが…(笑)
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