旦那ターンVSわふ太回
―――ボーデン公爵邸・応接間
「―――とまぁ、こんなことがありまして。お兄さまが成人の18歳を迎えるとお兄さまが爵位を継承されるんです」
「成人と共に、そうなるとは聞いていた」
レオンさまもご存じだったんだ。
「きっと今度は公爵閣下としてくるでしょうね」
「あぁ、面倒くさいな」
ですよね。レオンさまもそう思いますよね。全くあのシスコンは。
「あ、ところでアレクセイはどうなったんでしょうね」
さすがに浮気した挙句一方的な婚約破棄をしたとなってはただじゃ済まされないのでは?
「あんな男の名を呼ぶ必要はない」
何だか、一瞬ビクッときてしまった。レオンさまの声がいつも以上に低かったような?
「あの男なら、既にネーベル侯爵家から除籍させた」
ん??
“させられた”のではなく“させた”ってどう言うことだろう。爵位はレオンさまのほうが上だけども、まさかね?
「まぁ、でもそれが妥当ですよね。せっかくネーベル侯爵家のご長男が王女殿下と婚約なさっているのに、婚約者の妹に横恋慕するようなひとを家においておけるはずがないです。王女殿下に横恋慕されたらもともこうもないですし、万が一婚約が破談になったらネーベル侯爵家にとってもよくないですから」
「―――そうだな。王太子が」
王太子殿下が?
「正式に婚約を取り下げさせると騒いでいた」
え、あの冷静沈着で好青年そうな王太子殿下がですか?
「五月蠅かったから」
王太子殿下に五月蠅いって顔色ひとつ変えずに言えるレオンさまはある意味かっこいい。
「ネーベル侯爵にあれを除籍させろと、脅した」
―――誰が。まさかレオンさまがっ!?うえぇっ!?侯爵閣下に!?いや、確かに相手が竜人族とは言えレオンさまの方が爵位は上だし?けど、脅したってどゆこと!?
てか、アレクセイが完全に物扱い。
「シスコンを鎮めるために、ネーベル侯爵もそれを呑んだ」
うおぉ。まさかのシスコン。王太子殿下までシスコンかよ、オイ。そんな感じには見えなかったのだけど。いや、ウチのヴィルお兄さまもはた目から見たらそうは見えないか。
あぁ、意外なところにヴィルお兄さまのシスコン仲間がいたとは。確かレオンさまにはご姉妹はいなかったはずだけど。
「レオンさまには妹さまやお姉さまはいないのでしたよね」
「―――あぁ、俺は一人っ子だ」
ご兄弟もいないのよね。
「でも、今はロロナがいる」
ぽふっと頭に乗っかる優しいレオンさまの手。これが逆の立場だったのなら、私は間違いなくその機に乗じてわふたんお耳をふにふにしてしまうところだ。
―――するり。
ん?
頭に乗っかっていたレオンさまの手がゆっくりと頭の側面を伝っていつの間にか頬に移動しているぅ―――っ!!!
んなっ、なっ、あなたもですかぁ―――っ!!!
「ロロナ」
「は、はい。レオンさま」
え、なにこれ。何この超展開!まさかの今まで旦那をほっぽいてわふ太回を回しすぎたから、旦那の逆襲劇が始まったとでも言うのっ!?
―――しかしながらその超展開もまさかの一報で急遽終わりを告げた。
「たっ、大変なんです!奥方さまぁっ!!」
応接間に飛び込んできたのは、まさかの私付きのメイドで猫耳しっぽツインテールなリマであった。
「リマ?体は平気なの?」
「は、はい!すっかり良くなりました!で、でもっ!」
リマが俯きがちに涙をこらえながら、メイド服のエプロンをぎゅっと拳で握りしめている。
な、何この猫耳しっぽ萌え―――っ!!!
「ろ、ロロナ、は、わふたん派っ!!」
いや、そのレオンさま。いきなり私の両肩を掴んで驚愕した表情を向けないでください!!
「えっと、私はわふたん派ですよ」
「ん、そぅか」
そう、答えてあげると私の肩から手をそっと降ろし落ち着いたいつもの仏頂面を見せる。あ、てことはさっきの表情はレオンさまのレア顔―――っ!!
「って、そうじゃない!リマ、どうしたの!?」
まさかリマの猫耳しっぽを脅かす敵が現れたとかじゃないよねっ!?
「リマ、しっかり」
そんなリマをお姉さんウサ耳しっぽのメイド・セレナが支える。
「うぅっ!私が、私が抱っこして寝ていた間に、わふ太くんがっ!わふ太くんが攫われてしまったんです―――っ!!!」
んなっ!?何だと―――っ!!?
せっかく旦那ターンになったかと思えば、まさかのわふ太の危機ですとぉ―――!?




