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あの日、お父さまは未確認飛行物体に攫われてしまったらしい。

※解説多めです※


―――私が初めてその話を聞いたのは私たちの伯父でお母さまの兄である前グレンツェ辺境伯が亡き母の葬儀のため我がレーゲン公爵家を訪ねてきた時のことだった。


前グレンツェ辺境伯であった伯父さまは悲し気に私とヴィルお兄さまに語ってくれた。


***


お父さまはその昔、レーゲン公爵家の神童とまで謳われた存在だった。その16歳の時のお父さまはピンクブロンドのふんわりとした髪に、エメラルドグリーンの優し気な瞳を持つ元祖イケメン凶器。それが私たちのお父さま。


そんなお父さまには幼い頃からの婚約者であった母の存在がいた。ふたりはとても仲睦まじかったそうだ。しかしながらそんなふたりの幸せはある女性が現れたことで一変してしまう。


それがフュフテ男爵令嬢の存在だ。フュフテ男爵令嬢は、王城での舞踏会にて運命的な出会いを果たす。そしてフュフテ男爵令嬢の誘惑に辛くも堕ちてしまったお父さまはまたたく間にフュフテ男爵令嬢との燃え上がるような恋を爆発させた。


―――つまりは浮気である。我がお父さまながら情けない。そのことに怒ったのが前グレンツェ辺境伯であった伯父さまと前レーゲン公爵であった私たちのおじいさま。早速お父さまをレーゲン公爵家から除籍させ廃嫡にしようとしていたところで、まさかの事態におちいったのだ。


何とフュフテ男爵令嬢は媚薬を使いお父さまを誘惑し、更には怪しげな魅了魔法を使って傀儡かいらいにしようとしたとのこと。おじいさまと伯父さまの影が調べ上げたところそのような事実が発覚し、更にはフュフテ男爵家はそれを利用して他国に情報を売ろうとしていたのだ。


そんなことが明るみに出たものだから、即刻間者としてフュフテ男爵家はお家取り潰しの上、令嬢ともども処刑となりこの重大事件は幕を閉じたと思われた。


―――しかし。そこで問題になったのは他国の間者にまんまと乗せられたお父さまの失態である。本来ならばお父さまも追放されてしかるべきだったのだが。


お母さまを裏切ってしまったことに絶望したお父さまは、お母さまを何かドラマ性を感じさせる崖に呼び出したと思えば、そこから勢いよく身を投げたのだそうだ。


しかしながらそんな絶望のどん底にあったお父さまの宙に浮いた体を、ハット形の未確認飛行物体から照らし出された光が吸収していった。


そして再び崖の上に光から降ろされて生還したお父さまは。


―――頭が、バカになっていたそうだ。


しかしながら、そこまでして罪をいようとしたお父さまのためにお母さまは身を張って庇ったのである。更に、調査でわかったのだが。お父さまが売った王国の情報は一切なかったのだ。つまりフュフテ男爵令嬢が誘惑してもお父さまは一つたりとも王国の情報を漏らしたりはしていなかった。魅了魔法にかかりながらも王国への忠誠心を示したとしてお父さまはその罪を許された。むしろ崖から身を投げてまでその罪を償おうとしたこと、そしてお母さまとの真実の愛が報われるべきだと世間をセンセーショナルにいろどったことが大きく挙げられる。


だが、お父さまが我がレーゲン公爵家に残した醜聞も大きい。ましてやウチはヒト族筆頭の公爵家である。ヒト族の地位を地におとしめたお父さまの首は、お母さまが残した種族の壁を越えて絶賛・称賛された真実の愛によってかろうじてつながっていたと言ってもいい。そんなお母さまの愛で何とか生かされたお父さま。


そんなお父さまに対し、おじいさまは公爵家の籍に残すことだけは許してくれたそうだ。だがしかし、お父さまが跡を継ぐことは許さなかった。後継についてはお父さまとお母さまの間に産まれたヴィルお兄さまが成人を迎えたら公爵位を引き継がせるという遺言を残したのだ。


祖父亡きあと、お父さまは爵位を引き継げなかったため、レーゲン公爵は空位となってしまった。そこでとられた救済策が例外的にヴィルお兄さまが成人するまでお母さまが代理を務めるというものだった。


しかしながらその後、お母さままで亡くなってしまった。


後に残されたのはお父さまと幼い私たち兄妹。そして公爵家の後釜を虎視眈々と狙う分家や他の貴族たち。危うく私が顔も知らないおっさんと婚約させられそうになったり、エミリアがそのヒーリング魔法の才を狙われてさらわれそうになったりしたのを伯父さまが必死で守ってくれた。


けれどもいつまでもそのように当時辺境伯であった伯父さまに守っていただくわけにはいかなかった。かと言って、お父さまに兄弟はいない。苦肉の策でお父さまは爵位を引き継がず“代官”となり公爵領を治め、お兄さまが爵位を受け継ぐことはできないが“当主”となった。


幸い、お母さまに仕えてくれていた家令は優秀だったため、領地のことは家令に任せ、ヴィルお兄さまは王太子殿下の側近をやりながら徐々に領地経営のことなども若くして家令から教えを受けて若き当主として身をにして働きつつ、私は竜人族や王族とのコネ作りのためにネーベル侯爵家のアレクセイと婚約を結んだわけだ。


なお、家令が代官とならなかったのは家令が平民であり、分家や他の貴族からのバッシングを減らすため。公爵家の直系であるお父さまが代官となれば少しは文句を言うやからを牽制できるから。まぁバカになったとはいえ、お父さまはあの一件以来お母さま一筋で、後妻の座におさまろうとする女性を文字通り薙ぎ払いそして謎の天運で幾度の困難をも家令が称賛するほど華麗にかわしてくれた。さも、伝承に残る筋肉超人と言う名の“勇者”のように。


―――そう考えれば、今回の縁談についてもお父さまのその天運が導いたものだったのかもしれない。ま、代官で名ばかりとはいえ最終的な許可のサインをするのはお父さまなので今回の一件がまかり通ってしまったわけだが。


結果私はわっふわふなレオンさまと結ばれることができてウッキウキなのだ。


だがしかし、ひとつ物申していいだろうか。


―――未確認飛行物体よ。一体レーゲン公爵家に何の怨みがあるよ。これ以上、レーゲン公爵家のひと族を使って超人生産はやめてほしい!いや、ほんとマジで!!もう2回失敗したんだからいい加減やめろやっ!!


―やっぱり、主人公・ヒロイン特性持った何の変哲もない村人とか、本当は貴族の生まれなのに孤児として苦労しながら教会に引き取られる不憫少女みたいな設定じゃないとうまくいかねーわ。うん、やめとく~―


脳内に、そんな女性の声が響いた。


ほんっと!ヴィルお兄さまの娘とか息子ができたとして、それをアホやバカに改造しないでくれ!!



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[一言] お父様も謎の飛行物体の犠牲に…(笑)
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