シスコンイケメン凶器の策略
「それで、話とは?」
引き続き、ここはボーデン公爵邸の応接間。私とレオンさま夫婦はイケメン凶器な上にシスコンと言う残念な組み合わせを併せ持つヴィルお兄さまと相対していた。
ヴィルお兄さまの発狂ぶりに対し、レオンさまは相変わらずの仏頂面で冷静である。だからちょっと目立たないかもしれないが、このイケメン凶器と話をする上ではとても心強い味方である。
「無論、俺の妹のロナとの婚姻のことだ」
「あぁ、これは竜王陛下の命だ」
いい加減仲良くせぃやっ!と言うドラッヘルン王国国王、通称竜王陛下から賜った完全なる政略結婚だ。だが私は旦那さまがわっふわふ公爵なレオンさまで大満足だったりする。まんざらでもないのだ。
だからシスコンは別に出てこなくていいのだが、何より小説の物語性と言うものがそれを許してくれない。
うん、この小説にも物語性と言うものは一応存在はしているのだ。ただわふわふしたいだけではないのだ。ついついわふわふしてしまうけれど。わふわふ愛が溢れてしまいがちだけれど。
「それは承知している。そして、つい最近まで婚約者のいるロナが嫁ぐことは万が一にも婚約が破談にならぬ限り不可だった。そしてウチの次女であるアホ、じゃなかったエミリアに貴殿の妻は無理だ。絶対に」
まぁ、確かにそうなのだ。エミリアには無理である。エミリアは類まれなるヒーリング魔法の才を開花させられた影響で、アホと言う特性を帯びてしまったのだから。ぐすん。姉としてはクソ妹でも一生アホ妹でも、どこか静かなところでマッチョに囲まれながら幸せに暮らしてもらいたいと思っている。あれ、てか何でマッチョに囲まれながら?ヤバい、妄想が膨らみ過ぎてしまったらしい。このマッチョ思想については、妹を憐れ、いや心配する姉心だと思って聞き流してくれ。わふっ。
「だが、幸か不幸か。エミリアがあのクソアレクセイと浮気したおかげで婚約は破棄され、無効になった」
ヴィルお兄さま、口が悪いですよ。いや、たまに回想でエミリアをクソ妹と評してはいるものの、それは姉、兄として妹への愛情と言うか哀愁(笑)が少しはあるからこそそう評しているのである。ただ、私の元婚約者・アレクセイに対するそれは完全に悪口である。
いや、アレクセイのヤロウは滅多クソに言ってもらって構わないが。あ、やだ私ったら。私も“クソ”とか言っちゃった。公爵家の生まれなのに。てへっ☆
それで私がボーデン公爵家に嫁ぐことを、エミリアの婚約確定のために先走ったお父さまが即認めてしまい、私はこちらに嫁いできたわけだ。
「そして、あのクソ親父が俺が隣国に出ている間に勝手にロナを嫁がせやがった!」
因みに、お父さまに対するその発言は完全に悪口である。妹には多少の情はあるもののお父さまには、どうだろう?娘と言うのは時に、お父さまに対しとても冷酷になるのだ。お父さまは知っているのだろうか?あるひと時を機に“お父さまの靴下臭い”と言い出す娘の多感なお年頃について。
「今でも遅くない。レオン。妹を返してくれ」
いや、無理だろ。もう結婚しちゃったし。
「婚姻に関する書類は、昨日の内に陛下に受理されている」
「ん‶の‶ぉ―――っ!!!」
うん、すっごい早かった。本当は数日かかるはずなのに。さすがはお国の種族間友好作戦のための政略結婚だ。むしろ竜王陛下も王太子殿下もヴィルお兄さまがこうして乗り込んでくることを見越して昨日のうちに書類を全て揃えさせたのだろうか。
そして、恐いくらいに全て完璧に用意されていた婚姻に関する書類は、後は私の署名をするだけだった。あれ、そう言えばレオンさまは既に署名を終えていた。
レオンさまもヴィルお兄さまの行動を事前に予期していたことと言うことか。でも、竜王陛下と王太子殿下はそれに必死だとしてもレオンさまは何故?そんなに私と結婚がしたかった?いやいや、ないない。多分、種族のためだよね。レオンさまはこのドラッヘルン王国の獣人族筆頭であるボーデン公爵家のご当主さま。ボーデン公爵閣下なのだから。
―――本当に、ヴィルお兄さまにも少しは見倣ってもらいたいのだが。
「では、続いての作戦を実行してもらいたい」
何だ、続いての作戦って。
「実はロナ。本当にエミリアが嫁がなければならなくなった場合、オフホワイトの結婚と言うのを提案していたのだ」
え、何?白い結婚は聞いたことがあるけれど、オフホワイトの結婚って何?
「その、外面上は結婚したことにしておいて、エミリアはウチに幽閉しておくという策だ」
まぁ、エミリアをウチに幽閉しておくのはいい考えだと思う。エミリアのアホに付け込むアレクセイのような連中を追っ払えると思うし。あぁ、アレクセイも昔はあんなバカじゃなかったのに、どうしてあんなバカ令息になっちゃったんだろう。
―――まさかっ!!エミリアのように未確認飛行物体に!?でも竜人族の聖女なんて聞いたことがないし。そもそもアレクセイは男だから聖女になれないよね。未確認飛行物体がアレクセイを攫って魔法超人にしようとして失敗してバカになったという線は薄いか。
「だから、お兄ちゃんの妹・ロナについてもそのオフホワイトの結婚を推奨したい」
あぁ、その策のどこら辺が“オフ”なのかはわからないが。これだけは言っておこう。
ヴィルお兄さま、何そのしょうもない策略は。―――ぅおっふ。
※続きは明日更新予定です(/・ω・)/※




