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六、二人の勇者とメルシアルの姫

今回は3000文字のつもりが4000文字になってしまいました。

文字数もちょうどいいかどうかを知りたいのでぜひお聞かせください。

 ざわざわと木々は音をたて、草は揺れる。風は木の葉を運び、そのまま訓練場に新たな空気の流れを作り出す。風は砂を舞い上げ、砂煙を発生させる。その砂煙に人影が揺れる。

 砂煙が晴れていき、構えられた木剣の先が顔を出す。木剣が砂煙を払い、鋭い眼光がこちらを睨みつけた。


 それを合図のようにカズトが木剣を片手にその眼光めがけて走り出す。俺も木剣を構えてその後ろに続く。短い距離を一気に加速して剣先が届く範囲まで近づいた。


 カズトは左手を前に出し腰を少しかがめ、それを反動にして下から木剣を振り上げる。そしてそのまま追撃の振り下ろしが鋭く空気を切り裂く。


 エルゼはそれらを鼻先で躱し、振り下ろしを狙い木剣を構えるが、カズトを挟んで向かい側にいる俺を見て構えを下ろしバックステップ。


 カズトと入れ替わるようにして次は俺がエルゼに向かう。その勢いのまま突きを出すがそれも横に躱され、その動きに合わせて木剣を横に振る。その攻撃が俺の脇腹に当たる寸前にカズトがそれを止めに入る。硬い木材同士が当たりカンと高い音が響く。


 カズトはエルゼの木剣をそのまま薙ぎ払って体勢を崩させ、それに合わせ俺ももう一度構えて、突きを出す。エルゼはそれをさっきよりもきつそうな体勢で避ける。


 避けたところにカズトが低い姿勢のまますかさず突きを繰り出すがエルゼはそれを木剣で上にいなし、カズトの懐まで距離を潰し、木剣を握っている方の腕でみぞおち辺りに肘を食らわせる。カズトは顔をゆがませて後方へ飛ばされた。


 俺は二人を離すようにして横から木剣を振り下ろす。しかしエルゼは身をそらしてそれを避け、右足を軸にして左足でしたから回し蹴りをする。俺はそれをよけきれずにもろに顔面に食らい足が地面から離れる。


 体勢を立て直したカズトが斬りかかっていき、何回も剣を振るうがそれらすべてをいなすか避けるかでエルゼは躱していく。俺も体を起こしてカズトと挟むようにして後ろから斬りかかっていった。


 軽く視線を後ろに向けて俺の姿を確認すると大きく飛び上がり俺の頭上で後方宙返りをしてそのまま俺の後ろに着地し、横に薙ぎ払いを行う。


 カズトも俺に向かって戸惑いなく木剣を横に振るう。俺は即座にそれをしゃがんで避け、両者の木剣がぶつかり合い頭上でまた、木材のぶつかる高い音が響く。


 その場の時間が止まったようになり、その中で俺はエルゼに向かって木剣を斬り上げようとした。エルゼの少し驚いたような顔が見えたと思ったそのとき、エルゼだけがその場で加速するように動き出す。


 力強くカズトの木剣を薙ぎ払い、その威力にカズトの木剣は吹き飛ばされ、はるか後方へ突き刺さる。そして目前にまで迫った俺が斬り上げている木剣を自らの木剣で地面に押さえつけた。その力強さはすさまじく全く動かせない。


 そのまま木剣を握っていない方でこぶしを握り俺の顔面に殴りかかってくる。俺は万事休すと目をつむり、歯を食いしばった。


 顔前に大きな風が吹くがこぶしが当たる衝撃はない。俺がゆっくりと目を開けると目の前にはこぶしが寸止めされていた。


 エルゼはこぶしを下げ一呼吸おいて今日の訓練の終わりを告げた。


 俺たちは訓練場の端で座って休憩する。水を飲んで息を整えながらエルゼに聞く。


「今まで本気じゃなかったんですか?」


 エルゼは首をかしげたがすぐに俺が何を言おうとしているのかに気付いてああ、と笑いをこぼす。


「いや少し前から本気でやっていたよ。ブラッド流だけの話だったらな」


 カズトも興味を持って顔を向ける。


「ほかに何か使ったんですか?」


「ああ、身体強化を使ったんだよ」


 身体強化、確か前に少しだけ言っていたような気がする。魔法を使ったものだとかなんとか。だけど身体強化を使っただけであれほどまで差をつけられるとは思わなかった。

 エルゼは立ち上がりながら言った。


「今日のはさすがに危なかったからな、つい使ってしまった。しかしそれは二人とも確実に強くなっている証拠だ」


「でもまだ二人がかりでも剣をかすることもできてないですけどね」


 俺が自嘲気味にそういうとエルゼは困ったように言う。


「いやたったこれだけの期間でここまでブラッド流を使いこなすことができるやつなんてそうそういないんだよ」


 俺たちはこれまで様々な訓練を受けてきた。基礎体力作りに始まり、基本武術、そしてブラッド流身体操作術および剣術、そのほかにも乗馬などの武術以外の技術、この世界で生きるための基礎知識などを身につけてきた。


 そしてエルゼはこれまでの訓練によくついてきたと俺たちを称賛する。


「私が教えることができるものも少なくなってきたな。今日はここまでだ。しっかりと体を休めるように」


 俺たちはエルゼに礼を告げて訓練場を出る。その足で宿の近くにある王立図書館へと向かった。

 最近この世界の文字が読めるようになってきて本を読むのが楽しくなってきた。言葉がなぜか通じているのはやはり神のおかげなのだろうか。


 王立図書館の前に着き、顔なじみになってきたかなり歳を重ねた受付、メリルさんに軽く挨拶をして、中に入る。俺たちはその場でわかれ、それぞれ自分の読みたい本を探しに行った。


 カズトはおそらくこの世界の動植物の図鑑でも見に行ったのだろう。最近はまっているようだ。俺は魔法関連の本を探しに行く。何千冊とある魔法関連の本をざっと見て、面白そうな本を手に取って机に置く。


 その場で背中を伸ばし椅子を引いて座ろうとすると横から本の塊が歩いてきた。本で前が見えないのか、本の重さなのかよろよろと細身の足で歩きながら近づいてくる。

 と、右に大きく反れて積み重なった本が止まることなく一気に崩れ落ちていった。


 焦った様子で本を拾い集める少女の方へ行って拾うのを手伝う。


「大丈夫?」


「あ、ありがとうございますっ」


 声も焦っている。本を拾いながら彼女の方を見る。少し大きな帽子をかぶり、黒縁の眼鏡をかけていて、カズトと同じくらいの少女だった。


 本をもう一度積み重ねて次は半分以上を俺が持つ。少女はそんな申し訳ないと慌てていたが無理やり持った。落とした時すごい音がして周りの人からすごい冷ややかな目で見られたからな。


「しかし、若いのに勉強熱心なんだな」


 すると俺の机にある本の束を見て不思議そうな目で俺の目を覗き込む。


「あの、私と同じくらいの歳ですよね。あなたも勉強熱心じゃないですか」


「ウ、ウン。ソウダネ」


 俺は応えづらくなって顔をそらして言った。彼女は俺の向かいの席に本を置き、俺もそこに本を積み重ねる。本を置き終わってから彼女の方を向き軽く自己紹介をする。


「俺はシュウイチ。もし片づけるとき言ってくれたら手伝うよ」


「ああいやいやそんな申し訳ない。私はシ……メル、そうシーメル。ヨ、ヨロシク~」


 彼女は目をそらしながら俺と握手した。何かやましいことがあるのかもしれないがここは深入りしないでおく。


 気を取り直して席に座り本を手に取る。召喚魔法と書かれた本だ。基礎魔法に関するもので魔法を習得しようと思ったこともあったが結局わからなくて今はいろいろな種類を読んでいる。


 召喚……王族……空間……契約……、転移……神……王族……出口……、辞書を引きながら読んでいくがこの手の専門書はまだ読むのが難しい。ばらばらと読み進め次の本を手に取る。魔法陣のようなものが書いてあるが見ていても使い方がわからないので読み飛ばしていく。


 赤い日差しが窓の外から差し込み始めたころすべての本を読み終わった。大きく伸びをしてシメルの方を見ると彼女は本を開いたまま寝ていた。暗くなる前に帰った方がいいだろうと思い方を揺らして起こす。シメルはハッと起きると窓の外を見てもうこんな時間!?と驚く。


 そこに本を読み終えたカズトが俺たちの方に来た。俺はカズトにシメルを紹介する。


「こちらはさっきここで会ったシーメルだ」


「シ、シーメルです。さっきシュウイチに助けてもらったんだ」


「あ、僕はカズトです、よ、よろしく」


 俺はカズトがほんの少しだけ顔を染めたのを見逃さなかった。若いっていいな。


 今度はカズトが加わり、三人で本を分けて運ぶ。片づけ終わった俺たちは図書館の外に出る。外は暗くなっていたのでシーメルを送ろうとしたが彼女はかたくなにそれを拒否した。迷惑をかけるのもいけないので気を付けるようだけ言って俺たちは別れた。

 俺とカズトは今日図書館で見つけた本について話しながら宿に帰った。




 次の日ドンドンと騒がしくドアがたたかれる音で俺たちは目を覚ます。ドアを開けるとエルゼが急いで部屋に入ってくる。


「二人とも急いで身支度をしろ。急遽予言会議で決議が決まった」


 俺たちは急いで着替えてエルゼとともに城の方へ赴く。


「詳しい事情は後で教えよう」


 エルゼは急いだ足取りで城へ向かう。

 

 城につき、大広間につくとそこにはすでにゲンさんやステイ、シアなどの予言会議に出席していたであろう偉い方々、そしてメルシアル王がいた。


「シュウイチ、カズト、勇者の両名ただいま着きました」


 エルゼがそこにいた人たちに向けて言い、それを確認したのち、予言会議で決まったことが説明される。


 予言の内容までは伏せられたが議長の説明によると俺たちはすぐに隣国へ向けて旅立たなければいけないらしい。非常事態があることも考えての判断だと議長は言う。旅をするのは俺とカズトの勇者二人、そしてエルゼとあと一人を含む計四人のみらしい。


 議長が改めて俺たちのことを紹介する。


「旅に出る四人を紹介する。勇者シュウイチ=イシザカ、同じく勇者カズト=イノウエ、この二人の教官兼護衛エルゼ=ブラッド、そしてメルシアル王国の姫君


――シーナ=メルシアル


以上この四名に予言の旅の任を命ずる」


 名前が呼ばれて前に出た人物、それはどこかでみた顔、シーメルだった。

読んでいただきありがとうございました。

次回はついに彼らの旅が始まります。そしてメルシアル編も次が最後になり新たな章が始まっていきます。


もしよろしければ感想、ご意見、レビュー、ブックマークなどしていただければかなり励みになります。

ぜひよろしくお願いします。

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