一、石坂秀一の最期
はじめて小説を書きました。なので文章力は大目に見てください(笑)。
一応、web小説として読みやすいように改行などを工夫はしているのですが至らない点があると思います。もしよろしければそういったのを伝えていただければ幸いです。
もちろん感想も気軽に書いていってください!よろしくお願いします。
カーテンが閉め切られた暗く冷たい部屋の中、壁にかけられた時計の針の音が耳をつんざくように鳴り響く。どれくらいこうして天井を見つめているのだろう。今日が何日なのか、今が昼なのか夜なのかもわからない。どうでもいい。
おなかが時計の針の音を遮るようになった。何かする気力がなくて寝っ転がっているだけでもずっと何も食べてなければおなかもすく。
俺は重い体をどうにか持ち上げて立ち上がる。頭が痛い。めまいがする。ふらふらとおぼつかない足取りでいくつものごみが転がった床の上を歩き、冷蔵庫へ向かう。しかし3歩ほど歩いて床に散らばったゴミに足を取られ、転がってしまった。
もう起き上がる気力すらない。そう思ったとき、小さなカーテンの隙間から光が差し、俺の向いていたにあたる。きらっと光が反射し、もう何日も暗い部屋にいた俺はその光さえまぶしく目を細めた。光を跳ね返したのは赤い南京錠だった。ああ、たしか詞音がヨーロッパに行ったときに買ってきたんだっけ。愛の南京錠とかいったかな。
南京錠に手を伸ばそうとするが届かない。俺は起き上がらない体を引きずって必死に手を伸ばす。
「うっ……、ハァ……ハァ……。ぅぐっ……、ハァ……ハァ……」
残っている力を絞り、やっとの思いで南京錠に手が届く。もう何日も泣いた。嗚咽をはいて何度も何度も。だからもう涙は枯れきっていると思っていた。しかし手をそっと開けてそこにある南京錠を目にしたとき、詞音との思い出が反芻し俺はまた涙を流した。
「……ごめん、詞音。ごめん……、ごめん……」
――何日か前のこと。
白く消えていく息を見ながら俺は詞音と電話で話していた。
「……うん、そっか。……ハハッ、良いんだよ気にしないで」
「……ううん、吐き出せてよかった。ありがとう、シュウ」
電話の向こうでふぅと詞音は息をつく。俺はそれを見計らって今日話そうと思っていたことを口にした。
「今度の日曜さ、久しぶりにデートしない?ほら、結婚式の準備とかで最近忙しくて全然いけてなかったじゃん。だからストレス発散も含めてさ、行こう?」
「……うん!久しぶりにしよっか、デート!……楽しみだなぁ」
電話越しの彼女の笑顔を想像して俺も自然と笑顔になった。もうすぐ結婚して、二人で暮らして、……子供ができたら二人でいっぱい可愛がって、そうして幸せな家庭を作っていきたい。心からそう思った。
日曜日、彼女は死んだ――。
いつもの駅で待ち合わせをしていると詞音の母から電話がかかってきて、詞音が事故にあったと言った。俺が病院についたころには彼女はもう還らぬ人となっていた。そこから先のことは曖昧にしか覚えていない。彼女の葬式で俺は涙を流せなかった。
家に帰り、空虚な部屋でふと手にあった日記帳に目を落とす。詞音の母が俺に持っていてほしいと渡してきたものだ。パラパラとページをめくる音が響く。デートの前日の日記を読むころにはもう目の前が見えなくなっていた。詞音は信号が赤になっているのに気づかずそのまま渡って事故にあった。もしその原因がこの日記に書かれた、まだ俺に言うことのできなかった悩みだったなら。もっと彼女を理解していたら。悔やんでも悔やんでも取り返しのつかない出来事を前に俺は自暴自棄になった。
時計の音が時間は進み続けていると騒ぎ立てているが俺の中の時間は止まったままだ。彼女の南京錠を手に冷たい床の上で意識が薄れて行く。もうすぐ俺も詞音のもとへ逝けるんだ。そう思いながら俺はそっと目を閉じた。
次回から異世界に行くと思います……行くはずです。