世界の始まり編 新たなる世界へー③
しおりを読み始めて1時間が経とうとしていた。
この1時間、ずっとしおりを読んでいてわかったことがいくつかある。
『ファンタジア』の世界。
俺たちプレイヤーが冒険する世界の名はユグドラシルというらしい。
そしてゲームシステム面についてなのだが、
まず、1番驚いたのはゲームを開始した後にチュートリアルがないらしい。
なのでプレイヤーはゲーム開始前にこのしおりを読んでおかなければ何もわからないまま、ユヅドラシルの世界に放り出される形になってしまうということだ。
そして事前情報にて公開されていた、AIが物語の進行を管理しているという点にて、AIというのがユグドラシルでは大いなる意志と呼ばれているらしい。
そしてしっかりと、ユグドラシル内での時間経過についての記載もあった。前情報からの変更はなく、ログイン時だけでなくログアウトしている間も世界の時間が経過するので注意が必要と書いてあった。
種族に関しては自分がどの種族がいいかを指定ができないということだ。
ゲームを開始すると大いなる意思なるものから種族がランダムで言い渡される。
初回起動時に種族が自動で決定され、端末に記憶されるので、変更ができない仕様になっているらしい。
種族が決定したにキャラクタークリエイトが始まる。
その種族でのストーリーを終わらせることができれば再度、大いなる意思にて種族の再抽選を行うことができるらしい。しおりにはあくまでも終わらせることができればと、意味深なことが書いてあったのが若干引っかかるが、再抽選の方法も存在するらしい。
次に驚いたのはHPが0になり死亡した場合、コンティニューのはならず、キャラクターデータは削除されるということだ。
前回まで使用したキャラクターは病死や戦死をしたことになり、一族の歴史に刻まれる。
再びゲームを開始する場合は最初に決められた所属の別の人物として新たな人生を歩むことになる。
特別なスキルを所得することができれば、前回で使用していたキャラクターの経験値や習得済みスキルの一部を引き継げるとのことだ。
スキルについても、よくあるレベルアップをしてスキルポイントを割り振っていくタイプではなく、ゲーム内での日々の行いの結果、自動で習得になるらしい。
決まった取得方法もないので別のプレイヤーと同じ方法を用いても必ず取得できるとは限らないとも書いてあった。さらに上位スキルなるものもあるらしいのだが、決まった取得方法などもなく、完全に運らしい。
他にも、様々なことが書いてあったが、ここまでしおりを読み感じたことはキャラクターを育成するというよりかはユグドラシルという世界にてAI、すなわち、この世界の神にて決められた種族にて第2の人生を送るような印象だった。
俺は素直に自分の勘に従ってよかったと思っていた。
今までのVRMMOの感覚でゲームを始めていたら、まず間違いなく自分の納得のいく種族が出るまで無意味なリセマラを行っていただろう。さらには無茶な冒険を繰り返し、せっかく育てたキャラクターをロストする事態に陥っていたことだろう。
俺はしおりの内容の確認を終了し、一旦休憩をすることにした。
休憩をしているとスマホの通知音が部屋に鳴り響いた。
俺はスマホを手に取り内容を確認する。
光輝はちゃんと『ファンタジア』買えたのか?
こっちの苦労もお構い無しで連絡してきたこいつはゲーム仲間の海堂 傑。
高校からの友人でよく一緒にゲームして遊んでいる。
傑は俺なんかよりゲームが上手い。
傑が得意としているジャンルはFPSだ。
ランキング戦が始まると常にランキング上位にいるような奴だ。
正直俺は、FPSは苦手なので普通にプレイできるだけでも理解に苦しむのに、ランキング上位なんて人間を捨ててしまっているとしか考えられない。
そんなやつから『ファンタジア』の名前が出てきたのだ、どういう心境の変化があったのかと思っていると返事が送られてきた。
俺がVRMMOなんて珍しいだろとのことだ。
どうやら傑は普段からプレイしているFPSのチームメンバーから『ファンタジア』を一緒にプレイしないかと誘われたらしい。それでVRMMOがメインジャンルの俺に連絡をしてきたらしい。
パッケージを開けて分厚い冒険のしおりを見て自分の手には負えないと思ったらしい。
まぁ、傑は説明書はたいして読まないで直感でプレイしていくタイプなので無理もないと思いながら、
俺は今まで確認することのできた内容を簡単に伝えた。
(てか、これくらいのこと取説に書いてあるんだけど…)
そんなことを思いながら俺は『ファンタジア』の起動の準備を始めた。