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未来からの電波を受信!ピピピッ

(これは2010年9月8日の出来事である)



四角いアナクロな無線受信機の前に座り、ダイヤルを予め決めておいた数字に合わせる。


そしてヘッドホンをはめて僕はじっと待つ。


未来からの電波が届くのを。


10年後の僕が、この受信機に時空を超えた電波を送信してくれる予定なんだ。


僕の中には既に「過去に向けて電波を飛ばす送信機」の設計図が出来上がっている。


送信機は10年あれば完成しているはず。


ただし僕の理論が正しければ、極めて短い情報しか送れない。


時間にして2秒が限度だろう。


とにかく今日、この日の受信機に向けて、未来からの情報が送られてくるはずなんだ。


そろそろ日が暮れる。なのに待てど暮せど雑音しか届かない。


10年後の僕は一体、何をしているのか。


送信機は完成しなかったのか?


送信機が完成する前に、僕は死んでしまったのだろうか。


それとも……情報を送りたくないほど悲惨なことが起きているのか?


ヘッドホンを外そうとしたその時。


雑音の中に、男の声が混じっていることに僕は気づいた。


よく聞いてみると、同じメッセージを繰り返している。





『……ダネー……ソダネー……ソダネー……ソダネー……ソダネー……ソダ……』





未来からの情報の受信に成功したらしい。


声の主は大人になった僕だと分かったから。


でも言葉の意味は全く分からなかった。


せっかく未来から情報を得ても。


これじゃあ、まるで役に立たないもの。


一体何があったのだろう。


なんでこんな情報を?



※※※※



「なるほどな。そういうことだったのか……」



それから8年の月日が過ぎた。


今は2018年12月3日だ。


『今年の流行語大賞が決まりました』


ニュースを見ていた俺は、あの時の言葉の意味をようやく知り、体が震えている。



『そだねー、が大賞に決定しました』


同時に未来の自分に対する怒りがフツフツと沸き起こる。


なんでアイツ、2018年の流行語大賞の「そだねー」を送信したんだ!?


そんなもん意味が分かるわけがないだろう!


時空を超えてまで伝えるべき情報なのか。


もっと他に伝えるべきことはなかったのか!?


そりゃ2017年の流行語大賞「インスタ映え」を送られても分からんけどさ!


俺は再び受信機に向かってみた。


この怒りが2年後まで続いているなら、今日に向けて何かしら情報を送っているはずだ。


2020年のアイツから。


ヘッドホンをはめると、雑音の中から俺の声がする。




「……ロナ……コロナ……コロナ……コロナ……コロナ……コロ……」



俺はヘッドホンを外した。


またわけの分からんことを言いやがって、アイツ。


太陽大気の話か?それともメーカーの話なのか?


もしや株でも買えってこと?


いやいやいや。そんなあやふやな。


未来の俺ってば、何を考えてるのかサッパリ分からんな。


全く、未来からの電波を受信したって、これじゃあ何の役にも立たないな!


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― 新着の感想 ―
[良い点]  今見えている星の光は数百年、数千年、数万年、前の光だと言いますよね。  光の速さで飛ぶ飛行船から、何か電波を送れば同じようなことができるかもしれません。
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