最高のライバル
あたしには、ライバルが居る。
此の先、一生こんな奴には出会えないんじゃないかってぐらいの真のライバル。
名前は、「葉山 拓」
部活も嫌いだった勉強も今じゃ全力。
何においてもこいつだけには、負けを認めたくない。
…ある例外を除いて。
「好きです!!付き合ってください!!」
「えっと…ごめん、俺好きな奴居るから」
あーあ、また告られてるよ。
颯爽と、というよりメチャクチャ恥ずかしそうに帰ってきた拓をあたしは目一杯冷やかす。
「また告られたんだぁ〜、付き合っちゃえばよかったのに」
「うっせぇよ!!俺だって告られたくて告られてるわけじゃねーよ!!」
「出ました!!モテモテ発言!!」
「黙れ、このやろう!!」
いつもこんな感じ。
でも、あたしの冷やかしはただの冷やかしじゃない。
唯一勝てない項目に勝つ為。
…あたしは、拓が好きだ。
気づいたらっって感じ。
誰にも言ってない密かな気持ち。
だから、もちろん告白なんてとんでもない。
諦めようと思ってるくらいだ。
…だって見込みないもん。
放課後。
あたしと拓は、いつも最後まで残って練習する。
あたし達は、バスケ部だ。
「おい!!ディフェンス練習付き合え!!」
「いいよ!!今日も負けないからね」
こうして白熱したバトルが始まる。
だいたいこのバトルは、30分程度で終わりを告げる。
「よっしゃっ!!今日は勝ったぜ!!」
拓が喜んでる。
負けたのに少しだけ嬉しいのはそのせいだろう。
「んじゃ、今日は何きいてもらおーかなぁ〜」
いつも放課後の勝負に勝った奴が負けた奴の言うことを一つだけ聞く。
拓の作ったルールだ。
あたしもはっきり言ってこのルールを結構気にいってる。
こいつは、時々とんでもないことを言い出すから不覚だ。
そんな所にもドキッとしたりする。
「…俺さ、一つだけお前に勝てないものがあるんだ」
「え?なんかあったっけ?」
思い当たらない。
何か決着のついてない勝負でもあっただろうか?
「俺、お前のことが好きだ」
「…?え?…えぇぇぇぇぇぇえぇええええ!!?」
拓の一言のせいであたしは、とんでもない声を上げてしまった。
だって…このタイミングで告られるとは…。
「だからこの勝負俺に勝たせて?
俺と付き合ってください!!」
恥ずかしそうに目を伏せて手を差し出す。
OKなら握手をしろという意味なのだろう。
…まさかこんなことになるとは。
「えっと…あたし、拓には負けられないよ」
「…そっか…ごめんな、いきなりこんなこと言い出して」
「そうじゃなくて!!」
「え?」
息を軽く吸い込む。
言うなら今しかない!!
「あたしも拓が好きなの!!」
「…?え?…えぇぇぇぇぇぇえええぇええ!!?」
拓があたしと同じような声を出す。
びっくりの驚異だ。
拓は少し考えた末、口を開いた。
「…それじゃ…永遠に引き分けってことで♪」
そうはにかんだ笑顔で笑った拓は、ものすごく可愛かった。