大きすぎる関門(中編)
次回で電車での災難はラストになると思います。
長引かせてすみません。
綺麗なお姉さんに捕まり脅迫され連絡先を教えた。外見はパッとみスーツを着ている美人OLなのだが、誰があんな冷徹な目をすると考えれるだろうか?
「うんうん、いい子ね」
つい数秒前の顔とは全く違う優しいお姉さんの顔をしていた。…誤魔化されないぞ。あんなトラウマ物の目をしておいて。
だけどすぐにお姉さんは僕を解放してくれた。案外優しいのかもしれない。あんな柔らかい笑みを浮かべれるのだから。…僕の勘違いだったのだろう。
しかしお姉さんはまた冷徹な目をしながら言った。
「返信してくれないと…連絡先ネットにばらすからね?ちゃんと返信するんだよ?わかった?」
僕は首を縦に振る以外の選択肢を取れなくなった。やっぱり優しいお姉さんは僕の勘違いだったようだ…涙が出てくる。外でまともに話した人がこんな人だなんて…あわよくばこの涙に免じて連絡先を消してくれないだろうか?
「あぁ、もう、泣かないで…虐めたくなっちゃう!」
お姉さんは「ハァハァ」と興奮しながら言った。視界で何かがピクピク動いていたのでそちらを見ると、お姉さんの右手を左手が抑え込んでいる所だった。
僕はお姉さんの理性に感謝しながら男性専用車両の方に走って逃げた。
□□□
なんとか男性専用車両のドアの近くまで来た。しかしそこは女性達が自らの体でバリケードを作っている所だった。何をしているんだ?
『あの男の子はまだ男性専用車両に行ったことは確認されてないわ!だからどこかに居るはずよ!捜索班は追跡班と共に探しに行きなさい!残りの人はこの車両を重点的に探りなさい!次の駅までは十分に時間があるわ!落ち着いて作戦を実行して!調査班…よろしく頼むわよ』
金髪縦ロールのTheお嬢様が女性達の指揮を取っていた。ドレスは着ていないが私服でも十分雰囲気がでている。すごいカリスマだ。
そんなTheお嬢様を観察するのは止めて、現在進行形で起きている問題の解決策を必死に頭の中で考える。
お嬢様の作戦はもう僕には詰みと言わざるをえない状況だった。僕は今人混みに紛れて隠れている。バレないように息を止めているがそれも長くは続かない。多分息をしたらバレる。…あの冷徹お姉さんの所で隠れていた方が良かったかもしれない。
ここである一つの作戦を思い付いた。かなりの博打だがやらないよりか圧倒的にマシだ。
まずお嬢様に捜索&追跡班と呼ばれていた人達を躱すことが第一条件だ。そもそもこの人混みだ。まず気を付ければ発見されないだろうし彼女達もまともに動けない。さらに捜索&追跡班は一度回避すれば作戦通りに動くはずなので後続車両に行くはずだ。しかしその次が問題だ。
鍵を握るのはこの車両を重点的に探す班だ。これに関しては詰みだ。どうしようもない。行ける所まで行って後は強行突破だ。しかし先を行っていた捜索&追跡班が戻ってくる可能性が高い。
最後は男性専用車両の前でバリケードを張っている女性達だ。彼女達もどうしようもない。視界に少しでも入ったらおしまいだ。
つまり運頼みになる作戦。はたして勝てるだろうか?
ただ調査班なるものがわからない。
何を調べているのだろうか?
□□□
今、数人の捜索&追跡班が先行し僕のことを探している。だがここは予定通り回避できた。やはりかなり穴のある捜索のしかただった。
さてここからが正念場だ。後続の先頭車両を重点的に探してくる班の目をできるだけかいくぐり、さらに乗客の人達の目も躱さなければならない。
が…そんなの無理なわけでして。
動き始めて約五秒程で班の人達に見つかった。
「いたぞ!」 「誰か捕まえて!」 「ぐへへへぇ!」
僕は一気に加速する。その先はバリケードの役割を果たしている女性達。全員、総じて手を広げて慈愛の顔をして待っていた。この鉄壁とも呼べる女性達をかいくぐる方法は…
今、生存本能が刺激され体のリミッター解除されているはずのこの身体で飛び越える!
ウォォォォォ!
いっけぇぇぇぇぇえ!
ポスッ!
「わ、私に抱き着いてくれるなんて!嬉しいぞ!」
読んで下さりありがとうございます。
少し短かったですね。
文字数を増やせるように頑張ります!




