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極度の人見知りが男女比1:20の世界に転生した  作者: ウルセ
暑い夏休み
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家出8

「じゃあ私が食べさせてあげよっか?」


「え……」


お姉さんは肩口まである髪を、耳の後ろに流し、前屈みになって言った。


お姉さんの顔はニヤニヤしていて、でも僕をじっと見つめる瞳は僕の心すら見えてそうで怖い。


な、なに言って……! っ! や、やばい!


お姉さんが前屈みになったことによって、また純白の丘が零れ落ちそうになっていた。重力に従う彼女の胸は大きく揺れる。


このままだと、また色々反応しそうだったのでお姉さんから咄嗟に目を逸らす。


「あっ! エッチだな〜美月は…… 」


お姉さんは顔を紅潮させながら、胸を腕で隠した。

ただ、軽く腕を前に置けばいいのに、お姉さんはやけに力強く胸を隠す。

よって、さらに大きな丘になるのを視界の端で確認した。


正直わざとらしすぎる。そのお陰で多少は平常時に戻ってきたと思う。まだ胸の引力は健在だけれども。


「あれ? もうちょっと面白い反応してくれると思ったんだけど……」


お姉さんは残念そうに頬ずえをつき、またアイスをぺろぺろと舐め始めた。


「自然とわざとは全然違いますよ…… 」


別にそういうのに執着する訳では無いけど、思わず独りごちる。


ていうか膝のアイスなんとかしてくれませんかね…… そろそろ痛くなってきたんですけど。


するとお姉さんは、僕の膝のアイスを取ってくれた。取ってくれたってか、お姉さんが置いたまんまにしてたんだけど。


お姉さんは膝の上にあったアイスを白衣のポケットに仕舞うと、

「う〜ん…… もうお腹いっぱい」


と言って、舐めて溶けかけてるアイスもポケットに入れようとした。


「ちょ、それはポケットに入れちゃダメです! ちゃんと残った中身を出して、一回濯いでゴミ箱に入れないと! ゴキブリとかが湧きますよ! 」


あまりの行動に、普段潔癖でない僕でもたちまち声を上げてしまう。


「え〜、容器に入ってるし大丈夫だって」


いやいや。


「蓋空いてるじゃないですか」


普通に考えて、ポケットの中で盛大にアイスが漏れるに決まってるだろう。そしてポケットの中だから、洗濯機に入れてもあまり落とせない。だから手洗いである程度落とさないといけないのだ。


「は〜面倒臭いな…… じゃあ美月が残り食べてよ」


は? いやいやいや、なんでそうなる?


「食べさせてあげるし、もうあと残ってるの半分くらいだから」


そこじゃない。 問題点はそこじゃない。


「いや、あの……」


必死に『関節キス』を口に出そうとするが、言おうとすると恥ずかしさから口ごもってしまう。ああああ、もどかしい!


「それとも私が口を付けたの食べたくない?」


お姉さんは瞳に影を落とし、ポソッとすぐに消えてしまいそうなトーンで言った。


「ちがっ、そうじゃないです…… あ」


焦って即刻否定するも、トラップだったことに口から出た瞬間に分かった。


その言葉を聞き寂しげな表情はどこへやら、お姉さんはニッコリと、


「じゃあ食べれるよね?」

と言った。


「いやっその〜…… まだ数回しか顔合わせてない二人がそういう事するのは早いと思うんですよ。 ええ」


「大丈夫だから。 ほら食べて?」


『大丈夫』で全てを片付けないでくれ。


ついにお姉さんは僕の口の近くに、アイスを持ってきた。漏れ出ている冷気を唇で少し感じた瞬間、お姉さんはアイスを引っ込めると、クスクスと口を抑えながら笑った。


「楽しいな〜」


…… これじゃあギャルに遊ばれる陰キャだ。

前の世界ではこんなシチュ、羨ましな〜とか思ってたけど、実際されると結構ムカッと来るんだ。


意識的にジトッとした目をお姉さんに向けていると、機械がピーと音を鳴らした。


「お、終わったみたいだね」


お姉さんはモニターの方を振り返り、微動打にしなくなった。それほど集中しているんだろう。


声は掛けない方がいいか。


□□□


数分後ーーー


「ふ〜ん、なるほどね」


暇だったので女性っぽい可愛らしいTシャツに描かれている英語を適当に和訳していると、お姉さんがようやく動き出した。


というか女装してたのすっかり忘れてた。

お姉さんが集中してモニターを見ている間、後ろで少し悶えてたのは秘密だ。


「あの…… なにか分かりました?」


「ん〜? あ〜、簡単に言うと、美月の身体から異性を興奮というか、暴走させるような物質が出てるっぽいね」


え?…… 僕は性欲大魔神かなにか?


「いや出てるのは美月だけに限らないと思う。でも常軌を逸した行動を女性達がしてる原因は分かったね」


「それは…… 」


大発見なのでは?


「これはかなりの大発見だね。ついでにこの物質に身体が段々と慣れていくみたい。それに伴って効力は段々と薄まってくるみたいだし、この研究結果は世界を変えることができるかも」


真面目な口調で語るお姉さんに、僕はここで一つ疑問を覚えた。


「あの…… 本当にお姉さんがその化粧品を作ったんですか?」


正直この人が大量殺戮した化粧品を作り出した人とは思えない。


だって人の事からかったりするし、人並みに笑う。

寂しそうな表情も、楽しそうな表情も、色々な顔を見せるこの人がそんな物作るとは思えない。思いたくない。


するとお姉さんはチラリと僕の事を見ると、溜息を一つ落として僕の方に体を向けら近付いてくる。


そして僕の頬を優しく抓った。

それから彼女はフッと顔を崩すと、幼子に語りかけるように優しく言った。


「別にそんな心配そうな顔しなくても、私が作ったわけじゃないよ。あれは私のお母さんが作ったの」


「ふぉうなんへふか?」


「うん。それにお母さんは私が八歳のとき『買い物行ってくる』って言ったっきり帰ってこなくなったんだ。

だから美月がお母さんと対面することもないから大丈夫」


お姉さんはニコリと笑いながら言った。

その時、なにかに堪えるように僕の頬を抓る力が少し強くなった。


僕は人見知りだし、人と話す事も苦手だ。他の人より圧倒的に会話の数は少ないと思う。

だから人の感情を察することが人並みにできない。


けど、目の前で笑っているお姉さんが無理しているのは気づいた。


「だからそんなに心配しなくても大丈夫。ちゃんと美月もこの後家に送るから」


顔を横にブンブンと振り、お姉さんの手を頬から剥がす。


「あの!」


「なに?」


お姉さんは、急に手を引き剥がした僕を少し見開いた目で見ている。空中にはまだ、頬を抓っていた頃のお姉さんの手が滞空していた。


多分お姉さんは孤独だ。家庭的な事情も相まって友達とかも居ないだろう。

いたら、こんな孤独に慣れた顔はしない。

まるで不登校で部屋にこもってた時の僕のような。


孤独に慣れることなんてないし、慣れちゃいけない。

慣れたと思っても、それは心を壊しただけだ。


きっと今の僕は暴走している。けど、ここは暴走する僕に身を任せよう。


「僕をしばらくここに泊めてくれませんか?」



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