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極度の人見知りが男女比1:20の世界に転生した  作者: ウルセ
暑い夏休み
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家出2

時刻は午前二時。

いくつもの夏の虫が静かな夜を賑わせている。


そんな時間帯に僕は女装をして家出をしようとしている。

聞こえてくる音色を聞きながら、小さいバックを持ち家を出た。


必要な荷物があるかチェック。

必要な荷物といっても財布とか、スマホとかぐらいしかないけど。


荷物の準備は香奈がいない時間帯に済ませた。

ボディーガード三人組は余程のことがない限り僕の部屋に入ってこないので、すんなりと済んだ。


よし。

入念なチェックを終わらせると、緊張緩和のために大きな深呼吸をして一歩を踏み出す。


そっと部屋のドアを開け、玄関に向かう。


香奈は『スー……スー』と可愛らしい寝息を立てていたので、でかい音を出さない限り大丈夫だと思う。

ただ香奈は僕の気配が激しく動いている事を感じて、起き出したりするので要注意だ。


なるべく足音を立てず、最小限の動きで玄関まで辿り着くとそっと靴を履く。

一つ音を立てる度に後ろを振り返り、香奈が居ないか確認。


よし。香奈は後ろにたってはいなかった。

玄関ドアを開けて廊下に出る。


第一関門突破。

運良く床が軋まなかったのが大きかった。


冷房の効いた部屋から出ると、この夏の蒸し暑さも倍以上に感じられる。

虫たちもこんな暑い中ご苦労さまな事だ。


廊下から顔を出し下を覗くと、マンションの明かりで僅かに見える黒い四角い物が見えた。

おそらくあれがお姉さんの車だろう。


さて、ここからだ。

問題はこの廊下をいかに突破するか。


以前、音夢が気配を感じて起きた前例がある。

音夢が出来るなら、片岡さんと杙凪さんも多分同じだろう。


絶対に音は立てない。

ソロリソロリと歩いていく。


片岡さんの部屋の前を通過中。

今のところ問題は無い。


暑さと緊張。

その両方のせいで、もうはや一滴の汗が地面に落ちた。

もはやその滴の落ちる音ですら、彼女達は起き出してしまうのではないかと感じる。


途中何度か落ちてある葉っぱを踏んづけてしまいそうになるが、なんとか回避して片岡さんの部屋を通過。


さて、ここから起きた前例のある音夢の部屋の前だ。

これ以上何をすればいいのかよく分からないが、とりあえず気持ちを大きく持ってまた歩き出す。


……あれ? 案外すんなりと行けてしまった。

まぁいいか。


音夢の部屋を通り過ぎると、鍵のついた小さな扉がある。

そこを開けた先に階段があり、そこを降りるとようやく外に出られる。


さてと鍵を開けようか。

ポケットから鍵を取り出し扉を開ける。

カチャッと鍵が開いた音がした。

ついでに頭の後ろからチャキッと音が聞こえた。


? そんな音ならないはずだけど。


「動くな」


後ろから音夢の声が聞こえてくる。

だけどトーンは普段より下がっていて、正直一瞬だれか分からなかった。


「手を上げて」


こう言うって事は……

あのチャキッって音、もしかして拳銃の音……


素早く手を上げ、抵抗の意思はない事を示す。


「こっちを向いて」


ヤバい…… 今女装をしていて後ろ姿だからバレてないだけで、顔を見られたら絶対バレる。

それにバレたら確実に次の家出の機会はなくなる。


「はやくして」


逃げても足の速さで負けるだろうし、なんなら発砲されるかもしれない。

…… 音夢の意表を突ければ。


真夏の夜に吹いた風はどこか寒々しかった。



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