潜んでいる目
『え、あの人この前の男性じゃない?』
『本当ね……休んでるって聞いてたけど復帰するのね!』
『久しぶりに学校に行く事が楽しみに思えてきた……』
『彼の前で歩いてる人だれ……?すごい怖い……』
『噂では前までこの学校の警備員してたらしいわよ……』
片岡さんの背中に隠れながら下駄箱の方に進んでいく。
彼女がこの場にいる生徒達の目線を惹き付けるため、入学式程の緊張はない。
すると突然彼女がこちらを振り向き口を開く。
「……美月さん。場が少し混乱してきたので、急いで上靴に履き替えて教室に上がりましょう」
「あ、わかりました」
確かに遠巻きで僕達を見つめている人数が増えている気がする。
いや現在進行形でどんどん増えてるな……
するとまた片岡さんがこちらを振り向き言った。
「……すみませんが手を繋いでもらえますか?」
「え?は、はぁ」
後ろに出された筋肉質な手を掴む。
すると掴んだ瞬間に強く腕を引っ張られ、僕の体は体感したことの無いスピードまで急加速した。
ちょっ、腕が……痛い痛い!
……あっという間に下駄箱に着いた。
速すぎるだろ……
放心していると後ろから音夢に話しかけられる。
「ボーッとしてないで早く履き替えて」
「う、うん。ごめん」
ていうか音夢……あのスピードに着いてこれたのか……
さっさと上靴に履き替えると今度は片岡さんに声をかけられる。
「早く教室に上がりましょう」
「す、すみません……」
□□□
「お、おはようございまーす……」
自分でも声量が小さいなと思うほど小さな声で発したあいさつは、不思議と賑やかな筈の教室に響き渡った。
「美月!」
「音夢〜!」
同じ班と二人が駆け寄ってきた。
「おはよう!」
夏が僕の目の前で立ち止まり挨拶をしてくれた。優奈は脇を抜けて行った。
「お、おはよう」
「よかった〜学校に来てくれて……クラスの皆でもしかしたら二度と学校に来ないんじゃないかって噂してたんだ」
「そ、そうなんだ……」
「音夢〜何で休んでたの〜?」
後ろから甘えた声がしてきたので振り向くと、優奈が音夢に抱きつきスリスリしている。
「……ちょっと風邪引いた。あと鬱陶しいから離れて」
「やだ」
本当に嫌そうな顔をしている音夢はお構い無しで優奈は抱きしめ続けている。
「音夢さん」
すると片岡さんがいつもの呼び方ではなく音夢に声をかけた。
「私は美月さんを連れていきますので」
「……わかりました」
二人とも敬語だけど、どうしたんだろう?
喧嘩でもしてたの?
ていうか何処に連れていかれるの?
「では美月さん行きましょう」
よくわからないけど、とりあえず片岡さんに着いていく。
相変わらず片岡さんの背中に隠れてしばらく進むと、保健室に着いた。
「失礼します。杙凪先生はいらっしゃいますか?」
「はいはい?……どうぞ、お入り下さい」
さっきから何でそんなに敬語なんだろう?
「それでどうされました?」
「いえ、美月さんが体調悪いため横になりたいと仰っていたので」
え?そんな事言ってないけど……
「……なるほど。どうぞ」
「ありがとうございます。……美月さん」
「え?は、はぁ」
よくわからないけど呼ばれたので保健室のベッドの上で寝転ぶ。
「では、ごゆっくり」
そう言って杙凪さんはベッド周りにあるカーテンを閉めた。
これでこの空間には片岡さんと二人きりになる、
すると片岡さんはサングラスを外しスーツの内ポケットに入れた。
そして緊張感のある顔で話かけてきた。
「あの教室に盗撮カメラが複数台設置されている可能性があります」
最近小説家として大切なものがすべて欠如している気がしてきました……
読んでくださりありがとうございます!




