女性達の理想像
コンビニを出てから特に話す事もなく部屋まで戻ってきた。そして今は音夢の部屋の前に居る。
「どうぞ」
「お、お邪魔します……」
初めて異性の部屋に入る事もあり、かなり緊張している。
さぞ女性らしく可愛らしい部屋なのかと思ったが、そこに広がっていたのは人一人なんとか通れるダンボールだらけの廊下と質素な小さなテーブルがあるだけのリビング。
「適当な所に座って?お茶入れるから」
「う、うん。ありがとう」
とりあえずテーブルの前に正座で座る。
「何がいい?」
「えーと……紅茶とかある?」
「わかった」
「ありがとう」
音夢はキッチンでお湯を沸かしている。僕はビニール袋からさっきコンビニで買ってきたパンをテーブルの上に置いていく。
しかしパンは二つだけなので、ものの数秒でする事が無くなってしまった。
やる事が無いのでとりあえず部屋を見渡して見るが、やっぱり凄い質素な部屋だ。カーペットも敷かれてないし、カーテンは黒一色だ。
質素すぎない?もう本当に必要最低限の物しか置いてない。
じゃあ、廊下にあったダンボール達は何だろうか?
まだダンボールから出てないだけで普段はオシャレな部屋なのだろうか?
「あんまりキョロキョロ見ないで?」
「あ、ごめん」
音夢は紅茶を僕の前に置いてくれた。
紅茶のいい匂いがする。
音夢も僕と同じ紅茶のようだ。彼女は僕の対面に座ると手を合わせた。
「いただきます」
「い、いただきます」
音夢がクロワッサンを手に取ったので僕はショコラブレッドを食べる。
うん、美味しい。
「あのね」
「な、なに?」
音夢が、クロワッサンをチビチビ食べながら話し掛けてきた。
「私が大学に居た時の話なんだけど、男性と話す機会があったの」
「う、うん」
突然どうしたんだろう?
「その男性は一人の女性に恋したんだって」
「うん?」
何の話?
「それでその男性と女性は付き合ったんだけど一週間くらいで別れちゃったんだって」
「どうして?」
「『私が想像してる男性像と違うから』だって」
「……」
想像と違う男性像だからって……そんな理不尽な。
「それからその男性は女性に恐怖を覚えるようになったの」
「は、はあ……」
そりゃそうだ。そんな理不尽な理由で振られたら多分誰だって女性に恐怖心を抱く。
「ねぇ美月」
「な、何?」
音夢がグイッと目の前まで顔を近づけてきた。クロワッサンの匂いがする。
「美月の周りには沢山の女性が群がってくると思う。けど勘違いしないで?」
「それは男性に対して興味と物珍しさ、それと勝手に自分の理想の男性像と当て嵌めてるだけだから」
「それが例えあーちゃんとか、くーちゃんでも」
あーちゃんって誰だ?……あぁ、片岡さんの事か。
「う、うんわかった。ありがとう」
「……気をつけてね?」
「うん」
「よかった」
それから音夢は元のポジションに戻った。あ……もうクロワッサンが殆どない。
「あの……クロワッサンが……」
「あ、ごめん。……もう殆どないけど食べる?」
「え、それって……」
間接キス!
またもや短いです……すみません。
あの、感想とか頂けたら嬉しいです…
読んで下さりありがとうございます…




