僕の家を物色
「ふーむ…」
「なるほどね〜」
「…」
片岡さん、杙凪先生、音夢が僕の家を物色している。ちなみに薄い本と言われる物はない。だからベット下とかタンスの奥とか探さないでください杙凪先生、音夢。ニヤニヤしてるし…
「はぁ…」
自分の家に他人が存在している時点でキツイのに異性でしかも物色されている、そんなの思わずため息を吐いちゃうよ…
「あ、あの!もういいですよね?なんか家の構造を見るとかなんとか言ってましたけど、ベット下なんて関係ないですよね!」
「む、そんなことない」
「そうそう、そうですよ!もしかしたら盗聴器とかあるかもしれないじゃないですか!」
なんかそれっぽい事を音夢と杙凪先生が言っている。こんな時いつもは片岡さんが助けてくれるのだが…
「…」
残念ながら物色に集中しているようで助けてくれない。ブツブツ何か呟いている。
耳を傾けてみると
「ここから玄関までの距離は…」
「玄関のダンボールは急いで片付けた方がいいな…」
「ベランダも確認しなければ…」
とブツブツ呟いている。そんな人に助けを求める事は僕には厳しい。
頼みの綱を切られた僕は二人が関係ない所をニヤニヤしながら物色する行為を見逃す事しかできなかった。
□□□
「では私達は今日中に引越しの準備をして遅くても明後日までに近くの部屋に引越してきます。二人は両隣の部屋で残り一人はさらに隣の部屋に越してくる予定です。」
「管理人にも確認を取りましたが予定の部屋は全て空いているのでほぼ確定だと思います。」
「わかりました。でも大丈夫ですか?明後日は早すぎるような…」
片岡さんから予定を聞いたがいくら片岡さん達でも厳しいんじゃないだろうか?
「私はすぐに動けるように荷物はなるべくダンボールに入れるようにしているので大丈夫だと思います。」
なるほど…しっかりしているがビクッとした杙凪先生は大丈夫だろうか?
「私も最近今の所に引越してきたから殆どダンボールから出してないし大丈夫だと思う。」
音夢も大丈夫そうだが杙凪先生は顔が青くなっている。
「杙凪も大丈夫だよな?」
「…」
杙凪先生は何にも言わずにそっぽを向いた。
「…くーちゃん?」
くーちゃんと呼ぶのは音夢だ。斬新なあだ名で呼んでいる。
ちなみに杙凪先生は音夢の事を「むーちゃん」と呼んでいる。
音夢の『音』を使ったら「ねーちゃん」になるからだろう。
そんな''むーちゃん''の問いかけに対しまたもやそっぽを向く''くーちゃん''。
「おい?嘘だろ杙凪?」
片岡さんが威圧全開の問いかけをする。足が震える。
さすがに怖くなったのかようやく杙凪先生が口を開く。
「だ、だって!そんなにすぐ対象が現れるなんて思わないじゃない!」
「だってじゃない!すぐに動けるようにしとけって大学で習ったろ!?」
「うぅ…」
できれば外でやってくれないだろうか?片岡さんの杙凪先生に対する威圧でなぜか僕が足がガクブルしてるのだが。
「…すいません、美月さん。私ができるだけ準備をさっさと終わらせてこのバカの手伝いに行きます。ほら、もう行くぞ!お邪魔しました。」
「ぐすん…ごべんなさい…」
片岡さんに引き摺られて泣きながら杙凪先生は出て行った。
「…私が一番早くなりそう。よろしくね、美月。お邪魔しました。」
音夢が玄関を出て行った。あぁ、疲れた…急激に眠くなってきた。
千鳥足で寝室に向かいベットに倒れ込む。
おやすみなさい…
□□□
ピロリン
『もう終わった?電車のお姉さんです。』
ピロリン
『なんで既読がつかないの?連絡するって言ったよね?』
ピロリン
『ねぇ…なんで?おちょくってる?冗談だと思った?』
ピロリン
『もういい…明日行くから。』
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