驚愕の事実
僕は母さんと一緒に玄関から校舎の中に逃げ込んだ。外はまだ騒がしいがそろそろ落ち着くだろう。
校舎の中は綺麗だった。隅々まで掃除されているようでホコリなどは落ちていなかった。
すると突然母さんが思い出したように言った。
「そうだ!校長先生に校長室まで来てくださいって言われてたわ!美月、校長室に行きましょう!」
母さんは僕の腕をとりずんずんと歩いている。心なしか不機嫌なように見えた。後でちゃんと謝ろう。入ってきた場所から少し歩くと保健室と校長室と事務室と職員室が連なって見えてきた。職員室を見ると少し緊張してしまうのは僕だけだろうか?
校長室の前まで来た。母さんがノックを三回して音程を少し上げて言った。
「失礼します。中野美月の母と本人です。校長先生、入ってもよろしいでしょうか?」
「どうぞ〜」
中から若い女性の声が聞こえてくる。
「失礼します」
母さんが入室したので慌てて少し母さんの影に隠れながら僕も入室した。
「し、失礼します」
「中野美月くんとお母様ですね。私は金橋 美那乃と申します。どうぞお座り下さい」
校長先生はスーツを着た若々しい女性だった。校長先生は席の方に手を向けて座るように促した。
「ありがとうございます。失礼します」
「あ、ありがとうございます…」
□□□
「それで校長先生。お話とは?」
母さんが少し世間話をした後に本題に入るように促した。校長先生は母さんの話を聞くと深刻な顔をした。何か不備があったのだろうか?そして校長先生はおもむろに口を開いた。
「まず、お母様と美月くんに謝罪させていただきます。大変申し訳ありませんでした」
校長先生は立って頭を下げた。突然謝られても理由がわからないのでどうすればいいのかわからない。
僕がオロオロしていると母さんが真剣な顔をして口を開いた。
「顔を上げてください校長先生。まず、何があったのかを教えてください」
校長先生は顔を上げると何かを耐えるようにして言った。
「実は…
男子トイレがまだ完成していないのです…」
「え…?」
思わず声を出してしまう。な、なんという事だ…!絶望してしまう。その事実上の死刑宣告は僕を体調不良にするには十分すぎる言霊だった。目眩がして思わず身体がふらついてしまう。
「美月大丈夫?」
「美月くん大丈夫ですか?」
母さんと校長先生が心配そうに聞いてくる。母さんが僕の額に手を当てた。少しビクッとしてしまう。やっぱりまだこの世界の母さんに慣れていない。
「うーん…熱があるかもしれませんね。ただ正確な体温を知りたいですし、体調が悪そうなので保健室に連れて行っていいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。保健室の場所は分かりますか?」
「大丈夫です。美月を保健室に預けてから大丈夫そうでしたら、また来ます。あの…警備の方に保健室に来て頂けますか?」
「あぁわかりました。私が信頼している警備員をすぐに保健室に配置します」
「ありがとうございます。では失礼します」
母さんは僕に肩を貸しながら校長室をでた。校長先生はこちらを見て頷き、どこかに電話をかけていた。
□□□
保健室は校長室から見ての右隣だった。ちなみに左隣は事務室だ。
『コンコン』
「失礼します。あの…」
「はいはい?どうされまし…た」
流暢に日本語を話すハーフ顔のロング金髪美女が白い白衣を着ていた。そのとても綺麗な青い目を見開きこちらを見ている。
どうしたのだろうか?ただでさえ体調不良なのにさらに悪くなりそうだ。早く一人になりたいな…
ハーフ顔の美女は頬を染めながら言った。
「好き…」
「え?」
今なんて言った?勘違いじゃなければ好きって言ってなかったか?ただ、今は立っている事すら辛いので近くのイスに座らせてもらう。
ハーフ顔の美女はそっぽを向きながら応えた。
「 い、いや、なんでもないです。それでどうされました?」
「息子が体調を悪くしちゃったみたいで…それで出来たら寝かせる事はできないでしょうか?…それと息子はグイグイ来られるのが苦手なので、もし狙うなら注意した方がいいですよ?」
母さんは最後なにを言っていたのだろうか?ハーフ顔の美女の耳に寄せて言っていたので聞こえなかった。
「は、ハイ!ガンバリマス!あ、すみません。どうぞ布団はこちらです。あと寝ながらでいいですから体温計で体温を計ってください」
布団に案内されて体温を計りながら寝る。ここで母さんが口を開いた。
「すみません。校長先生とお話しなければならないので、この子を任せてもいいですか?一応そろそろ警備の方が来ると思うのですが…」
「あ、わかりました。警備の方も来られるなら大丈夫ですよ。任されました!」
「お願いします…くれぐれも変な事はしないように…」
母さんが多分保健医の先生に睨みを効かせながら出ていく。今日イチで怖かった。
「「ヒッ!」」
保健医の先生と一緒に悲鳴が出てしまった。前の世界の母さんもあんなに怖かったのだろうか?見た事ないけどたまに父さんの悲鳴が聞こえたのはそのせいなのか?
母さんの恐ろしさに戦慄しながら保健医の先生と少し世間話をする。
ちょっと今回は微妙かも…
読んで下さりありがとうございます。




