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006 何にも無い、何か



「攻略法は無いじゃと? それは買いかぶりすぎじゃろう。どんな能力にも弱点は付きものじゃ」


「思い込みだよ、それは。現に君は、未だに動けずにいるわけだしね。納得がいかないのなら、僕ももっと頑張ってみようかな」


 二世神は、おもむろに懐から拳銃を取り出した。


「僕もできれば、華麗なアクションを決めながら戦いたいんだけどね。いかんせん、腕力とか諸々足りてないからさ。こういうのを使わせてもらうよ」


「む……足が動く。能力を解除したのかの? 武器を使用するのは別に構わん」


「ありがとう。じゃあ、撃つよ」


 二世神は、2発の弾丸を放った。


(なんじゃ? 鉄の弾みたいなものが飛び出してきよったぞ。随分速いが見切れぬほどではないな。掴み取ってやろう!)


 しかし、その銃弾はブランの肩へと命中した。


「!?」


「おや? どうかしたのかい、そんな顔して。まるで、掴みとれたはずの物を掴み損ねたって感じの顔だね?」


「なんじゃ!? 一体なにが起こっておるんじゃ!?」


「肩がジンジンと痛むところ申し訳ないけれど、僕の能力のことよりも銃弾を胸に受けてしまった彼女の心配をした方がいいんじゃないかな」


「なぬッ!?」


 ブランが振り向くと、そこには床に這いつくばって血を流している煉がいた。


「ガフッ」


「煉!!!」


 ブランは、すぐさま煉に駆け寄ったが、その目はすでに虚ろだった。


「ブ……ラン……わた、しは……大丈夫……だから……」


「なにを言っておるのじゃ!!! 早く治療せねば…………二世神とやら、おぬし卑怯じゃぞ!!!」


「うーん。さすが、脳筋お花畑なだけはあるね。ここにきて卑怯とは。僕はタイマンしようだなんて言った覚えはないのだけれど。いや、思い込みというのは怖いね。本当に」


「…………初めてじゃ……」


「え? なんだって?」


 ギリギリとブランの歯ぎしりが聞こえる。


「怒りの感情が先にきたのは!!! これが初めてじゃ!!!」


「ああ、やっぱり。君のようなタイプは、そうやってすぐ怒鳴り始める」


「キサマッ!!!!」


 怒りに身を任せたブランが、二世神に殴りかかる。が、その拳は空を切ってしまう。


「これに関しては、もう諦めてしまった方がいいよ。君の攻撃が僕に当たることはない」


 そして、煉の真上の天井が、ガタガタと揺れていく。


「ほら。君が怒ったから、天井が崩れる」


「ッ!!!」


 ブランは、咄嗟に煉の上に覆い被さり瓦礫から守った。2人は今、埋もれてしまっている。


「……まだ聞こえているかな? 僕には勝てないってことがよくわかっただろう? まぁ、それでもまだ挑むというなら、チャンスをあげるよ」


 二世神は、大きな声で話し出した。


「僕はこれからも、たくさん怪奇現象を創り出すし、たくさん野に放つ。天然のも引き寄せられるだろうし、僕の部下も何人か向かわせよう。だから止めてごらん。返り討ちにしてみてごらん。そうすれば、また僕に出会えるかもね」

 

 そうだ。と二世神は付け足す。


「今回は特別だよ。彼女は絶対に死なない。保証してあげよう。……じゃあね」


 こうして、二世神は廃墟を去った。





 煌神煉が目を覚ますと、そこは病室だった。


「煉よ!!!」


 ベッドから起き上がると突然、横からブランに抱きつかれた煉は驚いた。


「ぶ、ブラン!?」


「う、うぅっ……れ、煉ちゃぁぁぁぁぁん!!!」


 驚いたのも束の間、次は逆方向から雪乃に泣きつかれる。


「ゆ、雪乃!?」


 ブランと雪乃に挟まれて、慌てふためく煉であった。



 2人が落ち着くと、煉は廃墟でのことを説明してもらっていた。


「そっか。私昨日、あの人に撃たれちゃったんだ……」


「奴だけは絶対に許さん。必ず余の拳を顔にぶち込んでやるのじゃ!」


「私、びっくりしちゃったよ。ブランさんが煉ちゃんを抱えて来て、助けてくれって」


「ありがとうね。ブラン」


「礼はいらんぞ、煉よ。当然のことをしたまでじゃ」


 そのまま話題は、二世神が言っていたことへと移っていった。


「あの人は、雪乃の家で戦ったような存在をこれからも創り出すつもりなんだよね」


「うむ。たしかにそう言っておった。自分の部下をこちらに向かわせる、ともな」


「多分、その人達も魔法が使えると思うし、これからどうしようか。何人来るかわからないけど、ブランにばっかり負担をかけたくないよ。今回みたく足手まといになりたくない」


「わ、私も! 2人の役に立ちたい」


 そんな2人に、ブランは笑いかける。



「無理に焦らずとも大丈夫じゃ! 今はその気持ちがなによりも嬉しい。足手まといだとか、そんな寂しいことは言わんでくれ。それに、余は戦いを負担に感じることはないしの。しかもじゃな、そろそろ魔界から面倒な奴らが来る頃だと思うのじゃ」


 その言葉に、煉と雪乃は顔を見合わせた。


「ま、魔界から……?」


「面倒な……奴ら?」





 そこは、ブランと煉が出会った神社だった。魔界の住人らしき雰囲気を纏った3人が、なにやら騒いでいた。


「ブランの幼馴染であるアタシが、ブランのことが心配で、ブランに、この世話焼きめ!! って言われたくて、はるばる人間界にやってくるのは分かる。分かりまくる。物凄く幼馴染っぽいから。けれど、なんでアンタ達までついてくんのよ!!! このお荷物共!!!」


「フッ、たかだか幼馴染程度の分際で、この幼馴染兼嫁の私にそのような口を利くとはな。戯け者とは、お前のような奴のことをいうのだろうな」


「何ですって? 何度も何度もプロポーズを断られてるアンタが嫁? 寝言は寝てから言ったほうがいいわよ」


「なんだと……?」


「んなことはどうでもいい!! 肝心なのは、今ファムファタルのガキがどこにいるかだぜ! 俺は早くアイツにリベンジがしてぇんだからよぉ!」


「はぁ!? アンタまだそんなこと言ってんの? ブランに負けまくりの前魔王のくせに? 迷惑なんだけど」


「…………フッ」




「………………テメェら……覚悟はできてんだろうなぁぁぁぁぁッ!!!」



 なんかやかましいけど、関わらないでおこう。


 ジョギング中だった近所のおじさんは、そう思った。

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