45. トール=デストリウス
「かつては、王族だったのだ」
生前、父上にはこう言い聞かされて育った。この洞窟の中で。
元々私は、父上と二人で必死に生活をしていた。街に行く事さえ、禁じられた生活だ。
幼いながらも、父上に少しでも喜んで欲しくて、狩をしたり、武術を鍛えたり、日常生活のありとあらゆる事をしたりした。
しかし、言っても子供。時折、とても惨めに感じたり、母上に会いたくて、遠出を試したりすることもあった。
「父上、何故なのですか?」
何故惨めな思いをしないといけないのか、何故母上とは会えないのか。そう尋ねたこともある。
その時、父は何度となく口を噤んだ。
結局、その謎だけは父上の口から、話されることはなかった。
ヒントはあったのだと思う。未だ、真実にはたどり着けてはいないが、確かにそれはあったのだと、確信を覚えている。
「ディト。昔話をしようか、おとぎの世界の話だ。」
父上から愛称として、「ディト」と呼ばれていた事を思い出す。
どのように、この愛称が生まれたかは定かではないが、私は妙にその呼び名に、愛着を覚えていた。
寝るときは父上が隣に座って、昔話を毎晩聞かされてたものだ。話はどうだったか、曖昧ではっきりとは記憶にないが、二人のエルフの話だったような気もする。
曖昧なのは、半分あたりで、毎回寝てしまっていたからだ。
「妹のエルフは、逃げるように森から居なくなりました。彼女の行方を知ることになったのは…」
だいたいこの辺りだろう。話を覚えているのは…。
父上はとても優しい人だった。少なくとも、私からはそう見えた。
ただ、時折見え隠れする。黒い部分。怒りや憎しみの部分。そのときは、私も身震いするほどだった。
私が15の時。
「父上…。何故なのですか?」
何故怒りや憎しみを現されるのですか?
そう聞いたことがある。父上は、再び口を噤んだ。
きっと、父上が王族だったことに関係している。子供ながらに、そう直感した。
きっと、寝る前に聞かされた、物語に関係している。妙に現実的だった、あの物語が。
私が17の時。
父上は死んだ。
私は、父上の手をぎゅっと握りしめ、泣くまい。泣くまいと堪えていた。
「ディト、すまない」
そうはっきりと、父上は口にした。
父上がしてきたことは、風の噂で耳に入っていた。だが、
だが、父上はそんな事をするような男ではない。あり得ない、きっと何かがあったのだ。
衝撃的な事実や、裏切り、理不尽な仕打ちが。きっと、何かがあったのだ。
父上の死に逝く顔を見ていると、ふらりふらりと黒い妖気が立ち昇るのが見えた。
その妖気が、気づいたら狒々のような姿を、形作っていた。
『童、理由を知りたいか?』
「お前は誰だ…」
『俺か、俺はお前だ』
「…幻覚か」
『すこし違う、俺は悪魔であり妖怪でもある、邪神とも呼ばれる存在だ』
「悪魔…、お前が父上を殺したのか?」
『それも違う、お前の親父が俺を呼んだのだ』
「父上が…」
黒く漂う狒々は、ニヤリ...と嫌な笑みを浮かべた。
まるで、良い餌が喰いついたと言わんばかりのにやけ顔、そしてジュルリと聞こえんばかりの口をしている。
『童、答えに俺が導いてやろう』
「…」
『お前の謎は、必ず解き明かされるだろう』
「悪魔を信用するなど、私にはできない」
『親父は俺のことを信用していたぞ』
「…」
『親父の無念を、お前は晴らさなくてよいのか?』
「わかった、だが裏切ったら承知しないぞ」
此奴は、私の怒りから生まれた幻術なのか。それとも、私の悲しみからか。
『キキキッ』と甲高い、猿の笑い声を鳴いている、此奴は信用に足るのか。
いや、父上も居なくなった私には、此奴に頼る他無い。
謎は私が見つけるのだ。何故、父上が口を噤んだのか。
必ず、必ず見つけなければならない。
亡骸と、狒々と、私…。
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