43. エルフの里へ
オリバーは今、正面入り口から出て、人質だったエルフを外へと連れ出していた。
どうやって、重い巨大な岩がのしかかった扉から出たかと言えば、簡単だ。
「無限魔法袋って、結構大きいのも入るんだね」
そう、元魔王のディブロスから譲り受けた無限魔法袋に、大岩を入れたのだ。
箸を持つより簡単だ、そう思ったかもしれないが、本当にその通りだ。
この魔法袋にも、今相当数のものが入っている。
特にガラクタ類が、一部屋を埋めるぐらい、山ほど入っていた。
ガラクタ、つまり、オリバーが魔法を埋め込んだ道具達だ。本人は、別段すごくもないと思っているが、国宝級のガラクタもかなり含まれていた。
のちに、そのことが国王にバレて、叱られまくったが、それはそれでまた語るとしよう…。
「のう…この姿、お父上にどう説明したらようかの…」
うーん、どうしよう…。図書室で見た資料には確か、ダークエルフは同胞に忌嫌われる、って書いてあったっけ。
ダークエルフの姿になってしまった、エルフの姫について、考えを巡らせてみたけど、やっぱり結果は明白だよなぁ。
「姫様どうされたのですか!」と怪訝そうな顔で、他の人質だったエルフ達が、近づいてきたが、決して触れようとしない姿を見て、やはり忌み嫌われる存在なのだなぁと実感した。
「本当にダメなのは、わかっているのですが、謝罪もしたくて…。エルフの里へ、俺を連れていってはくれませんか?」
やはりそうきたか、と考えている様子の姫を、俺はただ見つめていた。
「よかろう…。ただし、特例なのは分かっておるな?」
「はい。決して里の中で見たことを、口外しないことを、誓います。」
「うむ。妾も一人でお父上に説明するのは、辛いものがある。」
彼女の親をも、悲しませてしまう状況になってしまい、心が痛い。
まだまだ、自分の実力不足というものを実感してしまった。魔法の世界も人間生活も、初めてで新鮮味があり、楽しく魔法を勉強してきたが、もっと知識が必要だ。
知識や経験があれば、今回のような場合もうまく対処できていたはずなのだ。
「のう、妾をこのような姿にしたのは、あの青い巨大な宝石が原因で、間違いないのじゃな?」
「…はい。間違いないと思います。」
「それは、お主のスキルで分かった事なのじゃな?」
「俺のスキルの『解析』というスキルは、物の名前や性質、他人の能力や状態を知ることができるスキルです。
それでまず、あの青い巨大な宝石を『解析』してみたらこんな情報がわかりました。」
そういって、地面にその辺に転がっていた、木の棒を使ってそれの情報を記していった。
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名前:ルーン=クリスタル
効果:打撃・魔力吸収、闇属性付与、使役
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それの情報を見た彼女の顔は、やけに納得した様子だった。
「この『闇属性付与』という効果が、姫様に影響しているみたいですね」
「そのようじゃな。で、この『使役』の効果も、妾に掛かっておるのか?」
「いえ、どうやら『闇属性付与』のみだと思います。一応、姫様の状態も書いておきますね」
「ダメじゃ、皆が見ておる。里に着いてから、話を聞こう。」
「それもそうですね。わかりました。」
もしかしたら、解明されていないとされている、"エルフの闇落ち"に関しても、研究の手助けになることができるかもしれない。
オリバーは崖を登る時のような険しい顔で、エルフの里へと向かうのであった。
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人質だったエルフ達の、歓喜の声が増え始めた。
その声に応えるように、木の葉の間から光芒が、煌びやかに見え隠れする。
歩き始めて小一時間したぐらいだろうか、あたり一面の雰囲気は別物のように明るい。
"刻聖樹"の姿もだいぶ近づいて見える。
「んふっ、すごかろ?」
「ええ…。本当に魁偉さや壮大さに、度肝を抜かれますね」
「妾の種族、エルフは生涯を通して、この樹を守る役目を心に刻んでおる。この樹は我々には、神と同格なのじゃ」
「神…ですか」
「うむ。ところで、お主には信じる神はおるのか?」
「いえ、ここの神は気ままで適当な奴ばかりですからね。笑
信じている神というか、信用しているのはいますよ」
「…何やら、友達みたいな口振りじゃな。笑」
「ああ、いえそんなことないですよ」
今のは失言だった。気をつけないと、まずいことになるな。
俺が元神であることは、この星の創造神であるポスカトリでさえ、警戒するほどだから、慎重に行かないと身の危険に関わる。
「着いたのじゃ」
「おおお…」
"刻聖樹"を半分、囲むように里は存在していた。
自然とうまく掛け合わさっていて、例えるなら、山との一体感を実現したマチュピチュのように、『花の都』と呼ばれるほど、人工物でさえ風景を乱さない、パリの街並みのように、それはそれは幻想的だ。
そして、凱旋門のような玄関口で、鬼のような表情を浮かべたエルフ達が立ち並び、俺の方を睨みを切らしていた。
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