41. アジト@5
オリバーは今、中にいた憔悴しきった人質のエルフたちを、倉庫の方に連れていっていた。
そんな時。
「あ…あの…」
先ほど、倉庫に隠れてもらっていたエルフが、体力が少し回復したのか、ヨチヨチとこちらへ歩いてきて、話しかけてきた。
「ん?どうしました?」
「あ…あの。姫さまが…見当たらないのですが…」
「ん…姫さま…?」
「はい…、私より先に奥へと連れて行かれたのですが…」
「えっ!?」
なんだと!エルフの姫をも連れ去っていたのか!これはもう、向こう側が知らないで済むという線は無くなったな…。
そんなことよりも、一刻も早く助けに行かないと!
どんどん露わになってくるハプニングに、オリバーの頭は悩みの種だらけになってしまった。
これ以上のハプニングが起こっても、慣れてしまっているため驚きはしないだろう。
オリバーはそれから、例の隠された通路の先へと急いだ。
**********
全速力で助けに向かっているオリバーは、現在、壁に偽装された場所を見つめている。
再び足元には、微量の魔力を含んだ、霧が漂っている。
その霧を使って、この壁はできている。技術に関しては、いつ見ても関心に値すると思う。
「ここから先に、エルフのお姫様がいるはすだ…」
助け出したエルフの言葉を信じると、他にも人質がいるようだ。
しかも、未だトール=デストリウスという名の敵と出会っていない。
敵を土の檻へ入れている際、一人ずつ"解析"のスキルで調べていったが、このアジト『髑髏の蛆』の頭である、トール=デストリウスの名前は見つからなかった。
情報によると、彼はとても頭が良いらしい。彼が何を考えているのか、そして今から何が待ち受けているのか。
おそらく、この先で待ち構えていることであろう。少し慎重に行く必要があるみたいだ。
「フォン…」と音を立てながら、オリバーはゆっくりと先へ進んだ。
しばらく暗く長い廊下を進んだ。その際だんだんと異様な雰囲気に飲まれていく。
何が異様なのかと問われるならば、先へ先へ進むにつれて、二日酔いのような頭痛と、前が強く歪んで見えてくる。
浮遊感もあるだろうか、兎に角、本能的に「ヤバイ」と感じるのだ。
「この先へ行った敵が言っていた、"ルーンクリスタル"とやらが関係しているのかな…」
軽く冷や汗を垂らしながら、オリバーは頭痛によるものか、しかめっ面でそう呟いた。
そんな事ををボヤきながら、またしばらく頭痛やめまいと共に、早足で進む。
すると、黒い巨大な鋼鉄でできた、両開きの扉の前へとたどり着いた。
「この扉もきっと重いだろうなあ…」
そう思いながら、この先へ進む前に、心身共に整え、軽く押してみたら…。
「ギィイイ…」とすんなりと動いた。確かに、重そうな荷物を持っていたら、重厚な扉なんて開けることは困難だろう。
この場所へ、倉庫から重そうな荷物を運んでいた事を思い出した。
そして…。扉を開けた先…。
そこには…。
そこには、黒く染まった…エルフがいた…。
〜=〜=〜=〜=〜=〜
「こ…ここは…どこじゃ…?」
目を開けると、白と黒が反転しているかのような錯覚に陥った。
「ウッ」と激しい頭痛に襲われて、頭を抱えようとするが、手足が壁に縛られており身動きが取れない。
自慢だった髪はくしゃくしゃにされ、着ぐるみはズタズタである。
それから数分間の時間が流れ、だんだんと頭痛が止み、やっとの事で冷静に考えることができるようになった。
まず初めに違和感を感じた。白かったはずの肌や髪が黒く染められており、体がやけに軽く感じた。
それから、前は体が小さかったのだが、今はやけに大きく感じ不思議に思った。
これは、子供の頃お父上に読んでもらった絵本の内容に似ている、と思った。
「…あの子も、こんな気持ちじゃったか…」
故郷では有名な、あの物語。子供ながらに聞かされたその話は、ハッピーエンドだとばかり思っていたが…。
悪役が今ならあんなことをしでかしたのも、理解することができた。
ただの物語でも、二つの側面から見ると、違ったストーリーになり得る。
そんな事を考えていた時…。
「ギィイイ…。ギギギィイイイ!!」
大きな鋼鉄の扉から、小さな子供がひょっこりと顔を出したのだ。
彼は、キョロキョロと辺りを確認し、私を見つけた。
すると、目の色が白くなったかのように、驚いた表情を浮かべ、あんぐりと大きな口を開け、唖然としたのだった。
(父上も、ひいお爺様も、彼とおんなじ顔をするのであろうな…)
そう思うと、さらに心にくるものがあった。誰よりも可愛がってくれた、そんな人達を悲しませる。それがどんなに悲しい事だろうか。
「…やはりお前か」
ハッと声がした方を向いた。この場には縛られ残された、私しかいないとばかり思っていた。が、違った。
身の毛もよだつ、あの声が聞こえた。目の前にあった、中で何かが渦巻いている、大きな青黒いクリスタルの影から姿を確認した瞬間、無意識にブルブルと小刻みに震えだす。
「君が頭、トール=デストリウスかい?」
「ああそうだ。ファンデルの息子、オリバー=アウグス、お前の言う通りだ。」
「…」
「イヒヒッ」と不気味な笑い声が聞こえる。奴の後ろにいた、ひょろ長い男が笑い出したのだった。
少年は、名前を言われた瞬間、体がキュッとしまったように感じた。想定外だったのだろうか。
「オリバーくん。君のことはよーく見させてもらったよ。君の試合もね?…イヒッ」
「…っ!」
「おっとー。ダメだよオリバーくん。君が少しでも動いたら、彼女死んじゃうよ?」
ひょろ長い男は、私の方を指差しそう言い放った。
「おい、時間がないんだ。その実験体はどうせもいい、早くゆくぞ」
「はい…。お頭…イヒッ」
「簡単に行かせると思うの?…逃げ場はないよ?」
自信満々に少年はそう言った。
「イヒヒッ…おバカさんだねぇ。裏口に細工をしたのだろうけど、誰が地上をノコノコ逃げる奴がいるんだい?」
「おい、遊ぶのも大概にしろ。時間がないと言っている。」
「すみません、お頭…ついつい、イヒヒッ」
「…」
そう言われ、ひょろ長い男が、呪文を唱え始めた。
「#$%&…。闇属性魔法『ダークワープ』」
呪文を唱え終わり、彼の前に全身鏡ほどの闇が生まれた。魔法には詳しいと自負していた私だったが、そんな魔法など、聞いたことがない。
奴は何も言わず、ただ通り抜けていった。私の方や少年に見向きもせずに。
「じゃあオリバーくん、そのうち会うことになるだろうね。イヒヒッ」
「…させるか!!」
少年が走り出した。目では追えない速度で。
…だが、もう少し。手の届きそうな、もう少しのところで、「スゥ…」と言う風に、二人は闇と共に消えていった。
少年は喪失感とも、倦怠感とも取れるような表情で、膝をついた。
その時の私の方は、奴がいなくなった安堵感と、身に起こったことに対する、悲愁に襲われた表情を浮かべていたことであろう。
面白いと思った方はブックマークや評価、感想などもお待ちしております!
それがわたくし、G/I/Nの楽しみであり、投稿スピードも上がりますので、どうかよろしくお願いいたします!!
https://twitter.com/GIN31989175
↑↑↑
ツイッターページです!
アカウントは『@GIN31989175』ですので検索の方でもよろしくお願いします!
『創造神の異世界転生』と検索していただいても大丈夫です!




