37.アジト@1
『ギィイイ…。』
音が極力ならないように、鉄でできた重厚な扉をゆっくりと開いた。
初めは暗くてよく見えなかったが、視界をこらすとだんだんと見えてくる。
種族によって異なるが、人族は暗いところから明るいところへの目の慣れ、明順応は約40秒〜1分かかるのに対し、明るいところから暗いところ、暗順応は約30分〜1時間ほどかかると言われている。
今回の場合は、外の明るさ自体あまり明るくなかった為、大体20分程度で目が慣れた。
そして、鉄の地下扉を開けたそこには、斜め下に降りた、螺旋階段が見えた。
(...螺旋階段かぁ...。)
少し悩んだ表情をオリバーは浮かべた。
螺旋階段ということは、この扉は裏口である可能性が高い。
なぜなら、螺旋階段で上り下りする時、次の階段への視界が狭くなってしまう。
つまり、敵が降りてくる際は、こちらの情報をあまり与えずに、階段途中にトラップでも仕込んでいれば、時間稼ぎできるし、回りながら降りてくる為、目が回って方向感覚を損なわせられる可能性だってある。
逆に、敵から逃げる際、螺旋階段を上るとなると、同じく視界が狭いので、敵からの魔法や飛び攻撃も当たらないに等い。
なので、最も逃げるのに適している階段は、螺旋階段なのである。
(裏口だと思うから、ここを降りたら敵の懐にすぐ入り込むことが出来るな...。)
(...どうしようかな...。でも、もう一つの出入り口から逃げられる可能性だってあるわけだし...。)
2択で迷うオリバーは、一旦整理して決断を済ませた。
(...ここは、逃げられないように閉じておくか...。)
そう言いながら、土属性魔法によって作られた、何十トンもする大岩で、重厚な作りの頑丈な鉄の扉に蓋をした。
あまりに大きいその岩が、森の中にあることに違和感を感じるほどである。
それなのに、この大岩を作った当の本人、オリバーは鈍感なのである。
隠蔽もせずにそのまま、少なくとももう一つある、アジトの入り口を探しにいったのであった。
お得意の鼻歌を歌いながら…。
数十分後。
結局、アジトの入り口は、先ほど落ち葉の中に見つけたものを含めて2つだけだった。
二つ目の入り口、こっちの方は正面玄関っぽい、地下へと続く扉が堂々とあった。
罠が周りに2、30個ほど設置されていたが、こそっと全て解除して回収してある。
罠はどす黒い魔石に、魔法陣が書き込まれてあり、侵入者を拘束したのち衰弱させるというものだった。
それがポンッと地面に乱雑に置かれていた。
罠に影響されてだろうか、周りの木々も衰弱して萎れているものが多い。
だが、拘束系の魔法陣を自作してしまったオリバーにとっては、解除などお手の物だった。
最初の一つ目を見たときは、少し時間がかかったが、二つ目以降はほんの10秒ぐらいで解除してしまった。
鼻歌を歌いながら…。
(周りには誰もいないようだから、早速、アジトに侵入しようか。)
堂々と置いてある扉の割には、見張りが見当たらない。
少々不思議には思いながら、扉の前へと歩いていった。
(まあでも、あれだけ罠を置いてあったんだから、見張りなんていらないと思ったのかな?)
『ガガ…キィィン…ガタン。』
所々錆びた鉄の擦れた音が聞こえる。
気配消去によって気配を消して、姿を見られなくなったオリバーはやっとの事で、敵のアジトへと重い足を進めるのであった。
〜=〜=〜=〜=〜=〜
『ポチャ……ポチャン…』
『ウウゥ…ヒュー…ヒュッ…』
暗い暗い、光の全く入らない場所で、水滴が滴る音に混じって、呻き声やら、息が漏れる音がひしめき合っている。
ここが洞窟なのか、はたまた牢屋なのか、真っ暗な森の中なのか、全くわからない状態で、不安や恐怖だけが共存している。
暗闇の中に一人、土汚れや擦り傷だけでなく、切り傷や鞭で打たれた痕がある者が横たわっていた。
首にも締められた痕跡が、腕には鉄の手錠の擦過傷が認められる。
(ん…。どなたか………妾を…。)
誰かが助けにくることなど、到底あり得ないのにそう考えた。
ハクハクと口を静かに動かしているが、声が聞こえない。
まさに憔悴しきっているあり様だ。
いつからこの地獄にいるだろうか。気が付いた時には、もうこの実景を目の当たりにしていた。
いまだに慣れない全身を覆う激痛とあさましい情景を前に、希望という二文字は消えてしまいそうだった。
呻き声、泣き喚く声、空声。生きた心地など、とうに誰もが捨てていた。
そんな時、不運が再来してしまった。
『カチャカチャ……コツン…コツン…』
あの男だ。あの男の足音が近づいてくる。
足音の大きさと共に、憔悴しきっているはずの人たちの体が小刻みに震えだした。
バサッと何かが倒れてきた。恐る恐る見てみると、隣で震えていた者がブクブクと泡を吹き気絶していた。
そうだ、あの男だ、私たちを捕まえ、この異様な洞窟へ連れてきたのは。
あの男だ、周りの手下を従え、私たちに暴力を押し付けたのは。
あの男こそが私たちの恐怖、そのものだ。
『おい…立て。』
遂に、私の前へと足を進めたそいつはこう言い放った。
私は怯えて彼の顔も見れない。もとより、少しも体を動かせる自信も無いのだが。
腕を乱暴に掴まれ「行くぞ」と無慈悲に引きずられながら体を持っていかれる。
(イヤじゃ!…イヤじゃ、イヤじゃ、イヤじゃ!)
(こやつに連れていかれる……)
(連れていかれたらどうなる…戻ってきた者は見ておらぬ。きっと殺されるだけじゃ。)
恐怖で涙が溢れだしてきた。
泣いても何も変わらない、殺されると知りながらも、体から勝手に込み上げてきた。
ただ、この時洞窟の先から漏れ入る光に、わずかに希望を感じてしまった私がいた。
「どなたか…妾を……」
登場人物が多くなってしまいすみません!ただ後々、登場する人なので、少しずつでも覚えていただけたら幸いです!
この章が終わり次第、登場人物をまとめたいと思います!
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