外02. 紺青眼
ここは、神々が存する世界。
ウプシロンは考えていた。アルファをこのままにして良いものかと。
ウプシロンは思っていた。ここにプサイがきたら、必ず殺されるだろうと。
ウプシロンは迷っていた。ゼータから奪ったものを使うかどうかを。
そして腹を決めた。
計画がうまくいかなかったことは、配下が怯えた目をして助けを乞うた時に知った。
未だ、プサイは完璧だと思っている。やはり彼は無能だ。
ここまでの事をしたのだ、シータは私達の事を許さないだろう事は、容易に考えられた。
彼女は他の神を殺したことがなかった。殺すまいと考えていた。それだけは、彼女の根源だった。
アルファを彼が殺したら、もはやシータを止められない。
ウプシロンは元は無欲の神だった。何も欲さず、何も期待しない。そして、何より優しい神だった。
そんな彼女が、初めて好いたお方がいた。彼の名前は、オミクロン。彼は水の神だった。
ある時、天界に邪神が現れた。異界の神だ。
奴はこの世界の悪を欲するように、数万年に一度天界に現れる。そして、災いをもたらす。
オミクロンと天界の散策に出た日。
オミクロンが森の中で洞窟を見つけた。そこへ入って一休みしようと言った。
そこで二人は愛を確かめ合い、夜がきた。静寂の夜だ。
静かな森の中で、二人は心が満たされた。幸せだった。欲するならばこの時間が続けばいいと、そう思った。
ザッ。ザッ。と誰かが来る音がした。
オミクロンが外を確かめて来ると言って、辺りを見回りに行った。
それから幾許かの時が経った。
結局彼は戻ってはこなかった。
再び、ザッ。ザッ。と誰かが来る音が聞こえた。
目の前に、歪んだ顔が現れた。
いい女がここにいた。犯して犯して俺の玩具にする、と言って迫って来た。
そのまま殴られ蹴られ、いいようにされた。
彼はどうしたのと問うと、あの男は死んだ。俺が殺してやった。といい高笑いしていた。
時が長く、鮮明に感じた。頭の中が少しずつ少しずつ研ぎ澄まされる。
時が経つにつれ、怒りも哀しみも、喜びも、唯一の欲望も少しずつ少しずつ、剃られていく。削り取られていく。
ようやく解放され、そこに残ったのは、感情を失った女がいた。
再び高笑いが聞こえた。心が泣いて、運命が泣いた。
しかし、彼女は何も感じない。たとえ体が悲鳴をあげていようとも。
それからどれくらい時間が経ったのか、彼女は知らない。
気づくと、頬に涙が伝っていた。
その瞬間、怒りが溢れ出した。奪ってやる。私から奪った全てを。
この世界にある全てを。奪ってやる、呪ってやる、生きながら地獄をみるといい。
そうして、今の彼女ができた。
だが、不幸中の幸いで芽生えたものがあった。
それは、魅了の力だ。本来の力が露わになった。
アルファは今、かつて私が奪われた洞窟にいる。
昔の感情が蘇り、憎しみの心が溢れていくのを感じた。
・・・助けてやろう。
ゼータから奪った、『双子人形』を使い、アルファの人形を作った。
洞窟の中で、縮こまり、恐怖の面持ちでこちらを見て来たアルファに、そっとこう言った。
・・・助けてあげるよ。
と、彼女は純粋なのか、疑うそぶりを見せず、ましてや希望の目で見て来た。
懐かしい気持ちになった。
気づいたら、頬に伝うものを感じた。
気づかぬふりをして彼女を逃がした。
そのまま、彼女を地上の入り口まで連れて来た。
二つのことをアルファに告げた。
まず一つ目、天界には戻れないこと。ここを通れば、二度と戻れない。
シータには、アルファは地上へ逃がしたと伝えると。
そして二つ目、私みたいになって欲しくない。私の力を与えるということ。
彼女に、魅力の瞳を与えた。
その後、アルファに感謝をされ、彼女を見送った後、例の洞窟へ向かった。
洞窟に着いたら、プサイが泣いていた。アルファが死んだ。アルファが死んだ。と喚きながら。
やはり、殺してしまったかと思った。『双子人形』は本物そっくりに対象を作る。まず勘付かれることはない。
したがい、殺してしまったのは彼の本質からだ。
少し外で頭を冷やして来なさいと、感情を整理して来なさいとプサイに言った。
泣きながらプサイが出て行った後、真っ黒に染まった男が入ってきた。
こいつがシータかとすぐに理解した。動かなくなったアルファの人形を見て、すぐさま抱いて泣き始めたからだ。
彼に近づき、こう言った。
彼女は生きている。そいつは人形だ。地上へ逃がしたからそこへいけ。
と、しかし彼の耳には届いていない。それほど黒く染まってしまったようだ。
悲しい。悔しい。自分のことではないけれど、そう感じた。
腹を刀で何度も何度も貫かれた。
意識が、意識が遠のきながら、最後の力を振り絞り、こう言った。
アルファは生きている・・・。
ーーーーーーーーー
アルファは地上で何年も待った。
どれだけ時が経とうとも、彼は現れることはなかった。
そんな時、一人の青年が現れた。
彼は斧を持って木を切りに来ているようだった。そんな彼の姿がシータにそっくりだった。
心躍った。彼が迎えに来てくれたと。彼の名は、ゲイボルト。
後刻、彼との間に子を授かった。
子の瞳は、青かった。オミクロンの瞳のように。
その子の瞳に力が注がれた。アルファの本来の力。ウプシロンの力。二人の力が。
ゲイボルトとアルファは、子の瞳をこう呼んだ。
青き瞳。『紺青眼』と。
再び悲しいストーリーです。書いてて辛いです。
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