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創造神の異世界転生  作者: G/I/N
番外編 第1弾
31/56

外02. 紺青眼

 

 ここは、神々が(そん)する世界。


 ウプシロンは考えていた。アルファをこのままにして良いものかと。


 ウプシロンは思っていた。ここにプサイがきたら、必ず殺されるだろうと。


 ウプシロンは迷っていた。ゼータから奪ったものを使うかどうかを。


 そして腹を決めた。




 計画がうまくいかなかったことは、配下が怯えた目をして助けを乞うた時に知った。


 未だ、プサイは完璧だと思っている。やはり彼は()()だ。


 ここまでの事をしたのだ、シータは私達の事を許さないだろう事は、容易に考えられた。


 彼女は他の神を殺したことがなかった。殺すまいと考えていた。それだけは、彼女の根源だった。


 アルファを彼が殺したら、もはやシータを止められない。




 ウプシロンは元は無欲の神だった。何も欲さず、何も期待しない。そして、何より優しい神だった。


 そんな彼女が、初めて好いたお方がいた。彼の名前は、オミクロン。彼は水の神だった。


 ある時、天界に邪神が現れた。異界の神だ。


 奴はこの世界の悪を欲するように、数万年に一度天界に現れる。そして、災いをもたらす。



 オミクロンと天界の散策に出た日。


 オミクロンが森の中で洞窟を見つけた。そこへ入って一休みしようと言った。


 そこで二人は愛を確かめ合い、夜がきた。静寂の夜だ。


 静かな森の中で、二人は心が満たされた。幸せだった。欲するならばこの時間が続けばいいと、そう思った。



 ザッ。ザッ。と誰かが来る音がした。


 オミクロンが外を確かめて来ると言って、辺りを見回りに行った。



 それから幾許(いくばく)かの時が経った。



 結局彼は戻ってはこなかった。



 再び、ザッ。ザッ。と誰かが来る音が聞こえた。


 目の前に、歪んだ顔が現れた。


 いい女がここにいた。犯して犯して俺の玩具にする、と言って迫って来た。


 そのまま殴られ蹴られ、いいようにされた。


 彼はどうしたのと問うと、あの男は死んだ。俺が殺してやった。といい高笑いしていた。


 時が長く、鮮明に感じた。頭の中が少しずつ少しずつ研ぎ澄まされる。


 時が経つにつれ、怒りも哀しみも、喜びも、唯一の欲望も少しずつ少しずつ、剃られていく。削り取られていく。



 ようやく解放され、そこに残ったのは、感情を失った女がいた。



 再び高笑いが聞こえた。心が泣いて、運命が泣いた。


 しかし、彼女は何も感じない。たとえ体が悲鳴をあげていようとも。




 それからどれくらい時間が経ったのか、彼女は知らない。



 気づくと、頬に涙が伝っていた。



 その瞬間、怒りが溢れ出した。奪ってやる。私から奪った全てを。


 この世界にある全てを。奪ってやる、呪ってやる、生きながら地獄をみるといい。



 そうして、今の彼女ができた。


 だが、不幸中の幸いで芽生えたものがあった。


 それは、魅了の力だ。本来の力が露わになった。




 アルファは今、かつて私が奪われた洞窟にいる。


 昔の感情が蘇り、憎しみの心が溢れていくのを感じた。



 ・・・助けてやろう。



 ゼータから奪った、『双子人形』を使い、アルファの人形を作った。


 洞窟の中で、縮こまり、恐怖の面持ちでこちらを見て来たアルファに、そっとこう言った。



 ・・・助けてあげるよ。



 と、彼女は純粋なのか、疑うそぶりを見せず、ましてや希望の目で見て来た。


 懐かしい気持ちになった。



 気づいたら、頬に伝うものを感じた。



 気づかぬふりをして彼女を逃がした。


 そのまま、彼女を地上の入り口まで連れて来た。



 二つのことをアルファに告げた。


 まず一つ目、天界には戻れないこと。ここを通れば、二度と戻れない。


 シータには、アルファは地上へ逃がしたと伝えると。



 そして二つ目、私みたいになって欲しくない。私の力を与えるということ。


 彼女に、魅力の瞳を与えた。



 その後、アルファに感謝をされ、彼女を見送った後、例の洞窟へ向かった。



 洞窟に着いたら、プサイが泣いていた。アルファが死んだ。アルファが死んだ。と喚きながら。


 やはり、殺してしまったかと思った。『双子人形』は本物そっくりに対象を作る。まず勘付かれることはない。


 したがい、殺してしまったのは彼の本質からだ。



 少し外で頭を冷やして来なさいと、感情を整理して来なさいとプサイに言った。



 泣きながらプサイが出て行った後、真っ黒に染まった男が入ってきた。


 こいつがシータかとすぐに理解した。動かなくなったアルファの人形を見て、すぐさま抱いて泣き始めたからだ。


 彼に近づき、こう言った。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



 と、しかし彼の耳には届いていない。それほど黒く染まってしまったようだ。


 悲しい。悔しい。自分のことではないけれど、そう感じた。


 腹を刀で何度も何度も貫かれた。



 意識が、意識が遠のきながら、最後の力を振り絞り、こう言った。




 ()()()()()()()()()()・・・。



 ーーーーーーーーー



 アルファは地上で何年も待った。


 どれだけ時が経とうとも、彼は現れることはなかった。



 そんな時、一人の青年が現れた。


 彼は斧を持って木を切りに来ているようだった。そんな彼の姿がシータにそっくりだった。


 心躍った。彼が迎えに来てくれたと。彼の名は、ゲイボルト。



 後刻(ごこく)、彼との間に子を授かった。


 子の瞳は、青かった。オミクロンの瞳のように。



 その子の瞳に力が注がれた。アルファの本来の力。ウプシロンの力。二人の力が。



 ゲイボルトとアルファは、子の瞳をこう呼んだ。




 青き瞳。『紺青眼(こんじょうがん)』と。


再び悲しいストーリーです。書いてて辛いです。


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