タイムリミットは一時間
俺の名前は難波寛太。
普通ならここで童貞高校生の彼女なしというところだが、俺はなんと──
「彼女持ちなんです!」
彼女の名は加納若菜。
今、俺は独りで二階の自分の部屋ではしゃいでいる。
これだけ浮かれているのにはもちろん理由がある。
それは、
「今日、初デートなんです!」
集合時間の少し前に行き、彼女が来た時に『俺も今来たとこ』っていう為に早く行こう。
一時間の余裕があるように家を後にした。
人通りの少ない一本道に俺が一人で歩いていると、目の前にはお婆さんが倒れていた。
俺が上体を起こし、軽く揺すりながら。
「お婆さん、大丈夫ですか!? 救急車呼びますか??」
誰かが倒れているといった状況に遭遇するのが初だった俺は、慌てながら携帯を取り出す。
するとお婆さんが突然俺の尻を触ってニヤニヤしながら。
「若返った若返った。ほほほほほ」
笑いながら去っていくお婆さんを見て俺は小さく呟く。
「一体なんだったんだ……」
呆然としながら状況把握をし、デートの為にと急ぐことにした。
お婆さんと関わったことで後五十分しか……って、意外と時間あるな。
そんなトラブルもありながら、デート場である駅へ向かう為交差点で信号待ちをしていると。
「私……もうダメです……」
見知らぬ美少女が小さくそう言うと、誰にも気付かれずに俺の肩へと倒れた。
「えぇ!? ちょっ、大丈夫ですか!?」
「一旦休ませてもらえませんか? あ、そこに路地裏があります。そこの日陰で休憩を……」
「わ、分かりました! 今すぐ連れていきます!」
俺は目立たないように彼女をちゃんと歩いている風にしながら路地裏へと入った。
人気のない路地裏、彼女を段差に座らせて俺は。
「じゃ、俺用事あるから。お大事……」
「ちょっと待ちなさい。私……もう耐えられないんです! 発情期なんです! メチャクチャにしてください……」
唐突になんだよ……ってなんか若菜に顔が似ている。
頬を火照らせながら薄いピンクのワンピースを靡かせながら頼んでくる。
可愛らしい表情に惑わすかのような服装、男子には刺激が強すぎ──
「後五分しかない!? ちょっ、悪いけど俺もう行くわ! 俺にとって若菜が今一番大切だからっ!」
彼女に手を振り、急いで駅へ向かった。
駅に着くと、彼女は俺の頭に手を置きながら子供をあやす様な言い方で。
「よく来れました」
その言葉の意味が分からないまま息を整える俺に、若菜はクスクスと笑う。
俺がどういう意味か訊くと、
「お婆さんと女の子いたでしょ。あれ、私の婆ちゃんと姉なんだあ」
俺はその言葉に対し驚くことはなく、納得をした。
お姉さんであろう方の顔が若菜に似ていたのが気になっていたからだ。
気を取り直した俺は若葉に向かってこう言った。
「楽しいデートしようぜ!」
「うんっ!」