ワイルドウルフ
何故人は人をペイをするのか?そこに人が居るからだ。
―おうよっ!!
何する訳でなく昼だ。
生活サイクル逆転で、太陽の眩しさに目がシパシパしてます。
ヒルツさんは、仕事とか研究会との打ち合わせに出掛けまして
キットさんは、わからない。
とりあえず、外の予定が明確になるまで、屋敷で待機してほしいとお願いされた。
ウサギ小屋でも良かったんだけどね。
出掛ける時は、誰かに声を掛けてくれれば、不慣れな街を案内してくれるとの話し。
激しく要らないので、中庭に水挿しとかだけ置いてもらって放置してもらっている。
こんな、高貴な敷地内で暮らす方々に、オレみたいのが何を頼めると思うてか。
こちとら、山野の丸太の隙間の人間様だぜ?
フカフカのベッドより、その下の隙間にでも押し込んどいてくれといても、全然気にせず熟睡してますよ?
うん、あんな皺もない綺麗な服来た人らに、用事を頼むとか無理だよ。
お手を煩わすなど、頭が高いやら申し訳ないやら、とりあえず土下座はセットでいいすか?
村民ですから、マジ放置してくれる方がよほど楽なんですよ。
根本的に、格が違うのよ格が。
ウサギと人より、貴族と野人の棲み分けのが大事です。
とは言うものの何も出来ず。
とりあえず、ヒルツさん戻り次第山…じゃなくて、草原に戻ろうかと思います。
それまで、大人しく…。
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夕方になるまでに、マーサさんがメイドの後ろを澄まし顔で歩いてるのを何度も目撃。
あの人の立ち位置も、よくわからないが暇なのだろうか?
メイドさんお疲れ様です。
とりあえず。“ぼーっ”としてた間に思ったんだけど、街のアチコチから犬の鳴き声しています。
猟犬ではないでしょうから、ペットですかね。
生活が豊かじゃないと街中で変えないですから、街全体が豊かなんでしょうか。
柵の中なら気にもしませんが、放し飼いの犬と鉢合わせしないでしょうね。反射的に弓を取りたくなるので、犬類はなるべく会いたくないですよ。
森だと、野犬か狼しかいませんし、そんなの害悪以外の何物でもありません。
見敵必殺って奴です。
単純に犬が嫌いなので躊躇いはしません。
寄るな舐めるな擦り付けるな。と言った感じの、ちょっとしたトラウマがあるのは否定しませんが今は割と大丈夫です。
―近寄る前にやればいいんですからね。
冗談はさて置き。
夕方です。
日が落ちます。
結局1日外居ただけだし、ヒルツさん帰って来なかった。
また一晩、豪華な部屋に篭もらないとならいと考えたら気が重くなります。
マジックバックから、私物の毛皮でも出して、部屋の隅で丸くなってた方がいくらかましでしょうね。
軽く軟禁生活みたいな…。
どうしましょう。明るい内に草原に行ってた方が良かったかも知れません。
明日になったら、朝のうちに外に出てしまいましょう。
夕暮れ前にマーサさんが迎えに来たので部屋に向かいながら、これからの予定を伝えました。
「エルド様、出て行かれてしまうのですか?」
「どっちにしても、ウサギ肉放置したままじゃどうしようもないので、明日は戻ります」
「ここなら、女性を襲うような男もいませんし、そこより安全なはずですよ?」
いやまぁ、確かに警備員みたいのもいて、他より安全ではあるのでしょうけどね。
「昼間は、お兄様と普通に話していらっしゃったから、男性が嫌いと言う訳ではないのでしょう?」
「まぁ、夜でなければ普通に平気です」
「でしたら、移動しなくても宜しいのでは?」
「…もっと、男としての根本的な問題があるんですよ」
年単位で山に潜んでる理由はまだあるんですよ。
「…さっぱりわかりませんわ」
「まぁ、マーサさんが男装して“よく似合って男らしい”と言われたらわかるんじゃ内科と…」
要はプライドといいますか。男に姿を見られたくないではなく、女である自分の姿を人に見せたくないと言う願望?
「ああ、それで普段からあのコートなのですか?」
「いや、それは単に虫さされとか嫌と言うだけです」
森は虫だらけですからね。肌を全部隠せて、夜寒くないからあのコートは重宝してます。
「動きにくいんじゃありませんの?」
「所謂、人様の言う冒険者と違って、狩人はほとんど移動はしないもんで」
「…でも、足跡追いかけて何キロも移動して仕留めると聞いた事あるのですが」
「邪魔になるような移動したりする訳じゃないですからね」
むしろ、足跡見つけたら物陰に潜んで、何日も待ち伏せとかしてます。
獣に存在を悟られたら終わりです。足跡を追跡すると、自分の足跡も残して歩くようなもんですから、オレみたいな獲物の種類に拘らなくていい狩人は、あえて止まり、近くに来た物だけを狩る方法になる訳です。
逆に、討伐依頼を受けた冒険者が、ターゲットの足跡をひたすら追いかける事はあります。
特定の害獣なんかでは、時として追跡を必要とすることもあるんで、マーサさんの言うのはそちらでしょう。
あまり奥に入ると、帰りのが大変ですから、狩りはだいたい決まった場所近くでしかやらないようにしてるんですよ。
「そう言いながら、中に着てるのは生地の薄い長ズボンに上に限ってはタンクトップのみとか、ほとんど肌着同然ではありませんか」
「それは、持ち歩く衣類を軽くした結果ですから仕方ないんですよ」
田舎じゃ、肌着で村の中歩く爺様も珍しくないですよ?
「それに、地元ならコート着てれば男の時なら気にする人もいませんよ」
まあ、地顔が母よりなんで、遠目にみただけじゃ、コートの厚みが邪魔で逆に解らなくなるみたいで、近くに来た時に開いた胸元確認しようとしてくる輩はおりますけど、タンクトップだけだと一目で男と解ります。そうすると、だいたい興味無くします。
街の中に居るときは前閉めないようにしたり、コート腰に縛って歩て上半身を主張する訳です。
ガリのヤセだけど男だから近ずくなとなっ!!
コートの前開いて一言。
「ワイルドだろ?」
「お巡りさんコイツです」
なんか締まらない。
変だ。