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第十章・ヤマタノオロチ大作戦 -2

「続きは家に入ってゆっくりしたらどうですか? 立ち話もなんですし」

 俺らのやりとりを黙って見ていたアシナヅチが、やっと割り込む隙ができた、という感じで声をかけてきた。あ、ごめんごめん。いるの忘れてたよ。


 屋敷に戻りつつ、俺のオロチの民退治計画を話した。名付けてヤマタノオロチ大作戦。

 ジヌミは剣が使えるってんで、作戦中、力部門担当。もし簡単にふんじばれないヤツがいたら、ちょいと剣で脅してもらう。ちょっとくらい怪我させてもしかたなし。

 屋敷に戻ると、テナヅチがニコニコと出迎えた。なんかすっかりジヌミをホントの娘みたいに思ってるみたいだ。まあ、こんな娘がいたら自慢だよなー。男だけど。

「テナヅチー、俺の剣どこにあるー?」

「着替えと一緒に奥の部屋に置いてありますよ。ジヌミちゃんがおととい寝た部屋ですよ」

 口調も、すっかりお母さんモード。

「んじゃ、着替えてくるー」

 走っていこうとするジヌミの肩を、やんわりとテナヅチが押さえた。

「もう着替えちゃうの? こんなによく似合っているのに。残念だわー」

 そうだよなー。この美少女バージョンは捨てがたい……お? そうだ!

「なー、ジヌミ、おまえってそのカッコのままで、剣どっかに隠し持っていられる?」

「いられるよ。この上着ゆったりめだし、俺の剣そんなにでかくないし」

「んじゃさー。そのカッコでオロチの民のやろーどもにお酌とかしない? クシナダヒメのふりして。『あたくし、お酒をたくさん飲める殿方が好きですのー』とか言ってさー。効果抜群だと思うんだけど」

 どうでしょう?

「あー、いいよ。おもしれーなそれ。でももしなんかあったとき、このまま戦うのはちょっとなー……じゃあさじゃあさ。中はこの動きにくい袴じゃなくて俺の元の服にして、この上着だけ羽織ってさ、髪の毛女の子にすりゃいいんじゃね?」

 いい、いい。ばっちおっけー。

 なんか、楽しい。こいつとは馬が合う。兄弟だから?


 んじゃ着替えてくらあ、とジヌミが廊下を走っていくのを見送って、ふと横を見ると、見事にふくれっつらのサギリさんがそこにいた。そのほっぺたを突っついたら破裂するんじゃないでしょうか。おもしれー。

 しばらくなにも言わないで、じーっと見ていたら、やっとサギリが口を開いた。

「なんだよー。ふたりして楽しそうにしちゃってさー。あたしは仲間はずれかよー」

 うわ、なんかかわいいぞ、こいつ。思わず頭をぐりぐりしてしまった。

「なにすんだよっ!」

 やっぱり怒ったか。

「いや、すねてるとこがかわいいなーって思ってさ」

「かわいくなんかないよっ。どーせかわいいのはジヌミの方だよ。あたしは役立たずのただのおしゃべりだよっ」

 わかってるじゃん、じゃなくて。あー、ごめんごめん。仲間はずれにするつもりはなかったんだけどさ。つい男子との会話に夢中になっちゃって。だって最近話の合う男友達がいないんだもの。

「いや、力仕事は男担当だと思ってさ。ヤマタノオロチ作戦の最初の方は、力仕事ばっかだから。んでさ、その後のことで、強力なカムナギ様であるサギリにちょっと聞きたいことがあんだけど、よろしいでしょうかー?」

「なによ?」

 声が尖ってますよ。


「その、オロチの民とか、サギリのサトの中の龍神を祀っている人たちとかって、その龍神がいなくなったら、どうなるんかな?」

 これは、一種の宗教戦争でもあるんだよね。違う神様を信仰してる民族どうしの争い。この場合、一神教の人たちの方が、よりやっかいな気がする。八百万の神とか自然神とかを信仰してる民族って、宗教戦争はやんないよな。俺の世界での話だけど。

「どうだろうねえ……。あたしたちとおんなじように、いろんな神様をそん時そん時で信じたりするようになるんじゃないの? わかんないけど」

「龍神をさ、その、いろんな神様のうちのひとつにするってのはできないのかな?」

 あっちの神様も認めて、こっちの神様も一緒に仲良くね、だ。どうして、そういうことができないんでしょうかね?

「あたしのサトでは、かなりそんな風だよ。まあ、もう何百年もそんな感じでやってるからってのもあるんだろうけど……。最初のころはいろいろあったんじゃないのかなー。やっぱ」

 はあ、時間が必要ってことですか。あんまり悠長なことは言ってられないみたいなんですけどね、今回の場合。

「あのさ、龍神て、カムナギのバケモノ退治のハライゴトでどうにかすることって、できないのかな? どうなの? その辺」

「やったことないからわかんないけど、うーん、もしかしたら、でもうーん……どうかなあ。一応、あれも神様だからなあ」

「ワカサヒコとかシナツヒコとかと龍神様って、同じなものなん?」

「んー、ちょっと違うと思う。う──ん、簡単に言っちゃうと、あたしたちの身のまわりにあるたくさんの神様たちやバケモノたちを、ぎゅーっとひとつにしちゃったのが龍神様なんじゃないかなーって思うんだよね。あたしたちが、ばらばらのごちゃごちゃのままにしてる、いろんな気配やらバケモノやら神様やらなんやらを異端の人たちはひとつにまとめちゃってるっていうか。あの人たちはいやなこともいいこともひっくるめて龍神様一筋だし。だから、龍神様自体を倒すことはできないと思うけど、龍神様の中のバケモノ的な部分ていうか、そんなのを浄化してやることはできると思うよ」

「それ、浄化したら、龍神様はどうなっちゃうんだよ」

「さーね。やったことないからわかんないよ。そこらの神様とおんなじようになっちゃうんじゃないの?」

 うーん……。んじゃ、最悪それで、龍神様も八百万の神様たちのひとつになってもらって、こっちの信仰に取り込むって感じ?


 でもなー。思想、信仰は個人の自由だからなー。あんまし、その辺に介入したくはないよなー。個人の自由を尊重しつつ、みんな仲良くが、現代日本に育った俺の、普通の感覚なんですけどね。

 できれば、そんな龍神様を浄化するなんてややこしいこと、しないですむといいけど。でもなんか、ただじゃすまないような気がしてならない。俺の直感。

「あとさ、人間に結界って効くの? 昨日、アシナヅチが言ってたじゃねーか。五年前にえらいカムナギ様が来て結界張ったら、その後一年はオロチの民が来なくなったって」

「人間にバケモノ用の結界が効くわけないじゃん。それ結界じゃなくってさ、なんか脅しとかかけたんじゃないの?」

 ありえます。なんせ、あの親父のやることですから。でも、一年間も有効な脅しってなんだろう? それを応用すれば、オロチの民をおっぱらうことができるんじゃないの?

 うーん、わからない。今考えてもわからないことなんだろうか。情報が少なすぎ。

 ま、今できることをするしかないですかね。がんばります。

 サギリには、念のため屋敷のまわりに強力な結界を張ってもらって、すぐに出られるように、庭の近くの部屋に待機しててもらうことにする。


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