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第七章・俺ってナニモノ? -3

「で、おまえの母ちゃんてナニモノ? その、長老たちも、掟破りだけど、でも母ちゃんをさがしてほしいって言ってるってことだろ?」

「うん。あたしんちはカムナギの家なんだ」

 あら? なんか誇らしげ? ちょっと胸張っちゃったりしてー。

「カムナギって、なに?」

「あ、カムナギ知らないのかー。スサノオの世界にはいないの? スサノオもバケモノとかシナツヒコたちが見えたりすんだから、カムナギなんじゃないの?」

 あ、がっかりさせちゃった。ごめんよ。

「いやー。俺はただの大学生だよ。カムナギって、どんな字ぃ書くんだよ」

「字? えー、知らなーい。カムナギはカムナギだよー。カムナギの家ってのがサトにひとつあってさ、その血筋ってのがあるわけよ。まー、あたしはアシワラノヤチから出たことなかったから、よそでもおんなじかどうかは知んないけどさ。カムナギの血筋の人間は、神様たちと話したり、バケモノ浄化したりとか、普通の人間にはできないことができるから、サトの中ではちょっと特別っていうかー。春と秋の祭のときは、その年の天気の予言して田んぼや畑のことであーしろこーしろ言ったりとかさ。そーゆーことって、いろんな神様たちと話してると、今年の雨はどんなかなーとか、暑いのか寒いのか、とかなんとなくわかるじゃん? それをもったいつけて言うだけなんだけどね」

 あー、カムナギって「巫」かな? 「かんなぎ」って読む。祭祀を司る人とか機関のことだな。なーるほどー。こっちでは、バケモノ見知能力のある人間は、そういう役割を与えられて、それなりにみんなに認められてるってことか。それって、ちょっといいかも。


「で、そのカムナギだったってこと? サギリの母ちゃん」

「そう、ヒルメはもうもう、すっごいカムナギだったんだって。毎年の天気のこととか、はずれたことなんかなくって、結界張る力もすごかったから、バケモノも全然悪さできなくって。ヒルメがいたころは、ほんっとにサトは平和だったよねー、ってみんな言うんだよ。あたしはあんま、はっきり覚えてないけどさ。なんせ四歳のときに死んだって言われてて、ずっといなかったからさ。サトのみんなも死んだって思ってたから、死んじゃったんならしょうがないなー、娘に、あ、あたしのことね、に期待~とか思ってたんだろうけど。生きてるって言われたら、やっぱヒルメの方が全然いいに決まってんじゃん? んで、さがしにいけーって」

「えー? それって、なんかおもしろくなくない? おまえ、すげー強ええじゃん。あんな大量のバケモノ相手に戦えるし、結界も強力だし」

「強くないよ全然。ネサクにはまだまだだって、ずっと言われてたよ。うちのサトでは、だいたい十五か十六歳くらいでみんな成人すんだけどさ。あたしも成人したらカムナギになるんだって言われてたんだけど、ほら、まだ全然ヒメミコ様らしくないしー。あ、女のカムナギはヒメミコ様って呼ばれるんだけどさ。こう~、きれいな衣装着たりして、結構みんなのあこがれだったりもするんだよね。ヒルメはすごい美人だったらしいしさー。それよりも、あたしよかスサノオの方が強いでしょ。山ん中でやった浄化のハライゴト、すごかったじゃんー。あたしの結界は消えちゃってたけど、スサノオの結界は小さいけど効いてたわけだし」

 うへー。なんかほめほめ合戦になっちゃったよー。かゆいなあ。

「いや、あれまぐれだから、俺もあんなすごいのできたの初めてだし」

「そうなん?」

「そう」

 がっかりさせてすいませんね。

 なんか、がっかりさせてばっかだな。


「それよりもさー、そのネサクって父ちゃんも、カムナギなん? 母ちゃんがカムナギで血筋ってことは、父ちゃんはお婿さんじゃねえの? それとも同族結婚、とか?」

「あー、ネサクは入り婿。カムナギの血筋じゃないんだよ。だから、ヒルメが死ん……いなくなってから、あたしが成人するまでってことで、カムナギの代わりをやってたんだ、この十年。ヒルメがいるころから考えてた、神様の声を聞かなくても天気が予言できる方法とかでさ。なんかいっぱい書き付けがあったよ。春の川の水が多いときは夏に虫がいっぱい出るから気を付けろとか、雲の形によって、雨が降るとか風がどっちから吹くとかさー」

 それって、普通の統計に基づいた天気予報じゃないですかね? 予言じゃなくて。ネサクさんてのは、勉強家だったってことですかね。

「だから、結界とか浄化とかのトナエゴトも、ネサクがヒルメから聞いてたのをあたしに教えてくれたんだ。自分ではちっともできないくせにさ。厳しーんだよ」

 あ、そのトナエゴトだよ。聞きたかったのは。その……。


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