『ダブル・ブラック』
3日間休んだのでまたがんばります。
夏休みを有意義に・・・
翌朝、時計を確認
5時30分、家を出る時間まであと2時間と30分
そう確認すると、着替えて道場に向かった。
5時45分、俺は地下の道場で1人木刀を握り素振りをしていた。
素振りをしながら、俺は考える。
考えるのはもちろん昨日の放課後の俺たちの行動についてだ。
少し軽率すぎやしなかっただろうか?
そんな考えを脳内に居ると思われる俺がその考えを打ち消す。
昨日は、非常時だったからだ。
しかし、俺はハルが居なかったらそのような考えに移っただろうか?
否
ハルと出会わなかったら俺は目の前でどんなに卑劣で凶悪なことをしていても見てみぬふりをしていただろう。
ハルという人間が俺を変えつつあるのかもしれないな。
それが例え1マイクロメートル位だとしても・・・
ふと、扉の前に誰かが立っている気がした。
俺は、木刀を構え扉を開けた。
開けてみるとなんと龍之介さんだった。
「おはよう、イズミ君」
「おはようございます。」
俺も挨拶を返した。
「よくわかったね。僕が来たの」
「いえ、そんな気がしましたから」
確かに普通の人なら分かるのに、龍之介さんの場合は微かにしか分からなかった。
気のせいかと思うくらいだ。
「朝から稽古?もしよかったら僕と少しやらないかい?」
そりゃ願ってもない。
「お願いします。相手が居なくて暇でしたので」
そういいながら獲物を竹刀に変え渡した。
それから、しばらく俺と龍之介さんは打ち合っていた。
龍之介さんの、腕を一言で言うと・・・絶対に敵に回してはいけない人、が一番近いだろう。
俺が、ほぼ本気で打ち込んでるのに龍之介さんは涼しい顔で受け流す。
参った。勝てる気がしないね。
俺が持ち込んだ時計のアラームが、試合終了のホイッスルのごとく道場に響いた。
「終わりだね。じゃ僕はこれで失礼するよ」
そういって道場を出て行った。何しに来たんだあの人
時刻は7時
俺も風呂に入るべく道場をあとにした。
風呂から出た俺は朝食を取るべく食堂に向かった。
現時刻7:30
そこにはすでにハルが制服姿でトーストをぱくついていた。
俺に気づくと
「おふぁほふ、ふぃふぅふぃ」
何語だ?それは
「口の物飲み込んでから話せ」
そういって俺もトーストを持って、ハルの隣に座った。
「どうするよ、昨日あんなに暴れた後の学校」
「どうするって?」
何にも分かってないのか?この変わった女子中学生はよ。
「気まずいだろ。一見弱そうなのといきなり転校してきた女子があんなに強かったら」
「別に〜」
そうかい、うらやましいぞ。その性格
それからトーストを食べ終わり学校の準備もバッチリと言う時に俺は気づいた。
そういや、俺等先生たちの竹刀と木刀壊したよな
そう思い、倉庫から竹刀3本、木刀3本も用意した。
只今の時刻は8:00です。
俺とハルは竹刀と木刀を持ち合って学校へと歩いた。
校門に着いたとき俺は気づいた。
朝からこんな物持って登校したら殴りこみかけてると思われないか?
やべぇー
それって引かれるとか以上にまずくないか?
けーさつ来るぞ。
とか思ってるうちに、玄関へ
ゲッ、防犯対策のつもりか男性教師がずら〜り
なんて思ってるとハルが
「センセッおはようございます。これこの前壊しちゃった竹刀と木刀です。」
そういって俺の手から竹刀を取った。
「おおっ黒崎、黒沢」
ん?
何だこの反応?
怒られるどころか、逆に歓迎されてないか?
「怒る?なぜ?君たちは我が校の誇りだよ」
何だ?いつからこの学校の教師の頭に何かが生まれたのかと思ってしまうくらいの笑顔だった
教室にも伝染してしまってるみたいだ。
教室に入るなり友人2人が
「イズミ、お前最高だぜ」
とか言われてしまった。
うわぁ、この学校何かが伝染しちゃってるみたいだ。
とか思ってたら先生が、
「今日の1時間目は集会に変更だ」
とか言ってきた。
おいおい、大体急な集会ってろくなことないんだよな。
まさか、皆変なのも何か問題がおきているのか?
と思い体育館へ行ってみたら・・・驚いたね。
制服警官が4人と一般人とは思えない眼光を放っている渋いおっさんがいた。
何?この寂れた学校の生徒の誰かが麻薬か何かをやらかしたのか?
杖を使ってようやく体育館のステージに上がることのできた校長の口から出てきた言葉が分からなかった。
しかし、そのおかげでなぜかこの集会に場違いな人がいる理由も分かった。
「え〜この学校の生徒黒崎 イズミ君と黒沢 ハルカさんが、この学校を守ってくれたばかりか指名手配されていた犯罪者を捕まえてくれました。」
はぁ〜
これを聞いた時正直校長が、ついにぼけたのか位にしか思わなかったがけーさつの方たちがステージに上がった時
えっこれマジでいってんのか?
先生の一言が俺の妄想をマジに変えた。
「黒崎と黒沢、感謝状があるそうだからステージに上がりなさい」
俺はなんかを表彰されたなんて事はなかったから、ステージに上がる際の決まりなんかを知らなかったが何とかステージに上がって渋いおっさんから表彰状を受け取った時には夢かと思ったね。
ここで渋いおっさんから一言
「君たちのおかげで長年追いかけてきた暴力団を摘発することができた。ありがとう」
だが俺はそんな渋いおっさん(沢口と言うそうだ)の言葉をまともに聞いてはおらず俺は、ハルに会わなかったらこんなこともなかったんだよな、と思っていた。
こうしてその集会は終わった。
それからの俺たちは、休み時間ごとに皆から囲まれていた。
昼休み、スッカリ定番となりつつある屋上に俺とハルと友人2人はいた。
「黒崎、お前が倒したヤクザ、相当前科あったらしいぜ」
とどこから手に入れた情報か知らないが得意げにしゃべっているところは一人前だ。
なるほどだからアレほど強かったのだ。
「お前すげぇ強かったんだな」
しみじみとそういわれたので
「まぁ人並みにな」
「黒沢さんもすごく強かったよね」
「へっへーまぁ〜ね」
「そうそう、お前ら2人あわせてなんて呼ばれてるか知ってか?」
どーせろくでもないんだろ
「なんて呼ばれてんだ?」
『ダブル・ブラック』
なるほど、黒崎の黒と黒沢の黒
あわせて『ダブル・ブラック』ね。そのまんまのネーミングだな。
「誰が言ってるんだ?そんなしょーもないこと」
「皆だぜ。考案したのは俺だけどな」
お前かよ!
その無駄な思考をもっと役に立つことに活用しようとは思わなかったのかね。
まぁ俺が危惧していた事が起こらなくてよかった。
俺は空を見ながら寝転んで
「平和だね」とつぶやいた。