prologue2
20XX、7月14日。全国のゲーマーにとって最も重要な日でしょう。『グランヘイムの秘宝』プレイヤーが決定する日なのです。結果は公式ホームページで後30秒後に張り出されるとのことですが、今頃応募した500万人は今頃血まなこになってパソコンの画面をみつめていることでしょう。
「・・・・・・・・」
かくいう、私もその一人なのですが・・・。なんとも落ち着きませんね、30秒という時間をこれほどまでに長く感じたことなどいままでにそうないでしょう。そうこうしている間に残り10秒前・・・。
9・・8・・7・・6・・5・・。カウントが進むたびに額に汗がにじんでくる。本当にあと少しで結果がでると思うと緊張が止まりません。4・・・3・・・2・・・
1・・・・・・・・・・・・・・・0!
ホームページに一気にプレイヤー名が五十音順に羅列されていく。私の名前は『ユリ』だからあるとすれば下の方でしょう。応募した当初はあまり期待していなかったのに、いざこうなると期待に胸膨らませてしまうのは人間の性でしょう。仕方ありません。
狂ったようにマウスのホイールを回す。倍率五倍なら私の名前があってもおかしくはないはずです。次のテストのヤマが外れてもいいのでどうかお願いします!
「・・・・・・・・・・・・あった」
ホームページの文字の中に爛々と輝く『ユリ』の2文字!神様!ありがとうございます!
「お姉ちゃん!」
「わわ!どうしたの!?」
突然後ろから声をかけられる。・・・いつの間に入ってきたんです・・・?もしかして私のテンションが上がりすぎて気づいてなかったとか・・・。だとしたら恥ずかしすぎるのでやめてほしいのですが。
「どうしたの?じゃあないでしょ!プレイヤーの名前だよ!あった!?」
「相変わらず騒がしいわね、梓は」
私の一つ下で中三の妹、山吹梓。比較的おとなしめの私や姉さん、両親の誰に似たのかと思うほどに明るくてにぎやかな娘。私が敬語以外でしゃべる数少ない人。身長は・・・あまり高くない。で、でもそのお陰でツインテールがよく似合っていると言え・・・ますね。あと私は梓の八重歯が個人的にいいと思うのですが、本人はそこまで気にしていないようです。
「いいから!名前!あったの!?」
「・・・あったよ。その様子じゃ、梓もあったんでしょ?おめでとう」
「わーい!!やったぁ!これで三人でできるね!これって奇跡じゃない!」
「え・・・姉さんもあったの?」
というか、姉さんがこういう企画に応募することなんてなかったから、応募したとさえ思ってなかったんですけど・・・そのことはだまっておきましょう。
私の一つ上で高二の姉、山吹楓。正直、あの人はおとなしいというより無口の部類に入ると思います。姉妹共通のブロンドの髪を腰まで伸ばしていて、年齢以上に大人っぽく見えます。無口と言いましたが、喋り始めると意外に饒舌です。背はかなり高いです。
え?私?私のことなんてわざわざ語るほどのものも持ってませんよ。
「どうしようお姉ちゃん!私プレイ開始日まで眠れないよ!だから一緒に寝て良い?」
「だからの意味が分からないわ、プレイが楽しみならなおさらよく寝ないとだめでしょ?」
「・・・はーい」
こんなことを言ってますが、実は私も目が冴えて夜も眠れそうにありません。どうしましょうか。
プレイ開始は7月17日。途中現実に帰る時間も含めて夏休みに合わせたのでしょう。それにしても本当に当たってしまうとは・・・今更ながら力が抜けてきました。
「じゃ、おやすみなさい」
「おやすみー!」
ま、気長に3日待つとしましょう。
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7月17日。『グランヘイムの秘宝』開発本社
人の密集を避けるため、人ごとに細かく日にちと時間わけをされるらしいですが、それでも100万人という人数はごまかしきれず、本社のエントランスは人であふれかえっていた。覚悟の上とはいえ、人込みというのはどうも慣れませんね。
「これから地下にある巨大サーバー室にて皆さんはコールドスリープ状態となり、そこからゲームへ意識を飛ばします。いいですね?契約内容にも書いてあったので異議はないと思いますが、嫌だとうい方は今すぐお帰り下さい」
当然、そんな人はいません。皆この時を心待ちにしていたのですから。
「・・・それでは、ついてきてください」
それから私たちはエレベーターで下った後、一人一人別々にカプセルのようなものの中へ通されました。なんでもここでコールドスリープ状態となるとなるようです。
「・・・・・・それではみなさん。ご武運を!」
社員の方がそういうと、だんだんと意識が遠のいていきます。恐怖はありませんでした。あるのは未知なる世界への楽しみだけでした。
『ようこそ!グランヘイムの秘宝の世界へ!!』
詳しいキャラ紹介はいつかやろうと思います。