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詐欺みたいな手でいつの間にか結婚させられそうになっていることを俺は知らない

とりあえず、月詠さんの伏線を回収しときます。

 




「あの」


 廊下を歩いていると、誰かが話しかけてきた。

 振り返ると、この前の救世主、月詠さんがいた。


「こ、この前、なんでもしてくれるみたいなこと言ってましたよね」


「確かにそんなこと言いましたね」


 月詠さんは、指で自分の黒髪をくるくるしだした。


「えっと、ですねー」


 月詠さんは俺と目を合わせようとしない。


「あの、月詠さん?」


「ひゃっ」


 覗きこもうとすると、顔をそらされた。

 なに?俺のメンタルを折ろうとしてるのか?


「あの、ここに指を置いてもらえますか?」


「??……はい」


 俺は差し出された朱肉に指を置いた。


「ふふ」


「ん?」


 何か不穏な笑い声が聞こえたので顔を上げたが、素知らぬ顔をしている月詠さん以外、誰もいなかった。


「では次はここに指を置いてください」


「はい」


 俺は差し出された紙に指を置く。


「あの、この紙は?」


「大したものではありません。では失礼」


 月詠さんは素知らぬ顔で去っていった。

 この前助けてもらったんだから、こんな謎の行動じゃなくて、もっと大変なことでもしたのに。

 月詠さん、謙虚だな。



 ★☆★☆




「お前の師匠って、なんて名前なの?」


「なんだっけなー。確か、梅干しレモンだったと思う」


「はぐらかすな。ちゃんと教えろ」


「いや、ちゃんと――」


「桜緋 維月を知っているか?」


 ジョンと話しながら下校していると、突然見知らぬ黒服の男に話しかけられた。

 なんで俺の名前を知ってんの。

 めっちゃ怖いんだけど。


「ああ、こいつです」


「いえ、こいつです」


「は?何言ってんだよ桜緋」


「ははは、お前こそ何言ってるんだよジョ……桜緋」


「どっちが桜緋なんだ?」


 黒服の男がイライラした口調で言ってきた。


「だからこいつが桜緋です!」


「いやいや何を言っているんだ桜緋」


「ええい!面倒くさい!どっちも連れていく!」


「えー!?なんで俺もー!?」


「えーなんで俺もー」


 俺とジョンは黒い車に入れられた。




 ★☆★☆




「進め」


 連れてこられたのは、どこかの高層ビルだった。

 大理石の床を無言で歩き、エレベーターに乗る。

 男が最上階のボタンを押し、エレベーターが上り始める。


「………」


「………」


「………」


 もう何これ!?

 俺なんかした!?


 ポーン


「着いたぞ。進め」


 最上階に着き、俺達は背中を押されてエレベーターから出される。


「どっちが桜緋だ?」


 大きな椅子に座っている、強面の男の低い声が響く。


「こ、こいつが桜緋です!俺はジョンです!」


「そのようだな。右の者は解放してやれ」


「はい。爆力様」


 えー!なんで分かった!?

 俺まだ何も言ってないけど!?


「はは。よくも道連れにしてくれたな!ざまぁ見ろ!」


 ジョンは嬉しそうに黒服に連れられて閉まっていくエレベーターの扉の向こうへ消えていく。


「あの者はどうみても美形ではないだろうが。馬鹿が」


 男は溜め息をついた。


「お父様ー」


 横のドアが開き、黒髪の少女が顔を出した。

 中学生くらいかな。


「お姉様の婚約……ズキューーン♡!」


 少女は俺の存在に気づいた。

 少女は髪をくるくるしだした。


「………」


 すすす、と、無言で近寄ってくる。

 なんか怖い。


「おとうちゃまー!」


 次は幼女が出てきた。


「おねえちゃまがけっこん……ずきゅーーん♡!」


 幼女が俺の存在に気づいた。

 幼女も髪をくるくるしだした。

 そして、すすす、と近寄ってくる。

 何これ遺伝?




 ★☆★☆




 ははは!桜緋め!俺を道連れにしようとした報いだ!地獄を味わえ!


「ジョンとか言ったか?」


 黒服の男が話しかけてきた。

 だが、もう怖くない。

 なぜなら、誤解は解けたから。


「はい!俺はジョンです!」


 こんな晴れやかな気分を味わったのは、久しぶりだ。

 だが、なぜか急に、寒気がしてきた。

 何故だ。

 誤解は解けたというのに。


「ほーう」


 黒服の男は目を細める。


「良い尻してるな」


「………え」




 ★☆★☆




「お、お父様。別に他意はないのですけど、この男性の名前を教えて欲しいのですが」


「おとうちゃまー!わらし、このひとしゅきー!おなまえおしえてー!」


「この者が、桜緋 維月だ」


「………そ、そんな」


「……いやー!」


 俺に引っ付いている二人が愕然としている。

 全く状況が分からないのだが。


「お兄さーん」


 少女がすごい猫なで声を出してきた。


「そろそろ乗り換えちゃわなーい?」


 少女がそのまましなだれかかってくる。

 乗り換え?なんの話?俺、ここには車で連れてこられただけなんだけど。バスも電車も使ってないけど。


「いやー!このひとわらしのー!だれにもあげなーい!」


 幼女が前から抱きついてきた。

 ちょっそこはっ……股間に頭擦り付けちゃらめぇぇぇ!


「お父様。披露宴の予定は……はわわわわ!」


 あ、月詠さんだ!

 なんでこんな所に?

 それより助けてくれ!


「桜緋様は私のものよ!」


「ぐへぇ!」


 月詠さんが突っ込んできた。

 俺達は皆で床に倒れる。


「お兄さんは私に乗り換えるの!」


「わらしのー!」


「誰にも!誰にも渡さない!」


 床に倒れた俺の両腕と右足を凄い力で引っ張られる。

 いやー!もげるぅぅ!!

 なんだこの地獄ぅぅ!!




 ★☆★☆




「うむうむ。良い尻だ」


 黒服の男が俺の尻を擦ってくる。

 ひぃぃ!!


「どうだ、俺の筋肉」


 男が上半身の服を脱いで抱きしめてきた。

 ひぃぃ!!

 筋肉ぅぅ!!


 ポーン


 ついた!

 一階についたぞ!


「うおぉぉ!!」


 扉が開くと同時に、俺はダッシュでエレベーターから出る。


「「「ん?」」」


 そこにいたのは、ボディービルダーのような、上半身裸のムキムキ集団だった。




 ★☆★☆





「そ、その、夢奈に愛花。その者は月詠の婚約者で……ごにょごにょ」


「そんなことしたら、私お父様と一生口きかない!」


「おとうちゃまきらーい!」


「頑張ってくださいお父様!」


 何言ってるのか知らんけど、離してー!

 もげるぅぅ!!


「月詠ビーム!」


 月詠さんが、懐中電灯で二人の目を眩ませた。

 二人の手が離れる。


「こうなったら、既製事実を!いえ、ちょっと早い初夜です!」


 月詠さんが俺を抱き抱えて走る。

 また助けてくれたのか、月詠さん。

 ああなんとありがたい。


「まずはお風呂です!」


 月詠さんは俺を抱えてどたばたとどこかの部屋に入った。

 ここは、脱衣所?


「ええい!時間が惜しい!」


 月詠さんが制服を脱ぎ、下着姿になる。


「ぶふぅっ!」


 一体なに!?

 いかん!早まるな、俺の息子ぉぉ!!


「逃がしませんよ!」


「だれにもあげない!」


 少女と幼女が入ってきた。


「ええい!」


「あいや!」


 二人とも下着姿になる。(上半身は裸)


「ぶふぅっ!」


 まずい!落ち着け我が息子ぉぉぉ!!!




 ★☆★☆




「おおう。なかなかいい尻してるじゃんか」


 ムキムキの集団が近づいてくる。


「ジョンは俺のものだ!」


 黒服(上半身裸に黒服。前ははだけてある)の男が俺のケツを鷲掴みしてきた。


「ひいぃぃ!!」


 嫌だぁぁ!!

 誰か助けてぇぇ!!


「いいや、それは俺のものだぁぁ!」


「奪ってやるぅぅ!!」


「誰にも渡さぁぁん!」


 ムキムキの集団が飛びついてきた。

 嫌だぁぁぁ!!

 筋肉だらけぇぇ!!なんだこの地獄はぁぁぁ!!




 ★☆★☆




 3.1415926535


「もういちいち体を洗ってなどいられません!今ここで!」


「これ以上脱がせませんわよ!お姉様!」


「わらしがやるー!ふうふのいとなみー!」


「夢奈!いつの間にそっち方面の知識を!」


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「愛花!そ、それ以上脱いだら!桜緋様にそんなもの見せられません!」


「お姉様がそれを言いますか!ええい!手をどけてください!」


「むふふー」


「夢奈!真っ裸!いけません!手を使わないで桜緋様の視界をふさぐには……ええい!」


「お姉様!その貧相な胸をお兄さんに押しあてないでください!」


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「むふふー。んー?なんかしたのほうがかたい」


「夢奈!真っ裸で桜緋様の上にうつ伏で乗るなど、言語道断!」


 5028841971……くっ、いつまで続くんだこの地獄は!




 ★☆★☆




 その後、月詠さんが幼女の相手をしている間に、少女が父親の机にあったという紙を持ってきて、月詠さんの前でびりびりに引き裂いた。

 月詠さんは燃え尽きたように倒れた。


「そもそもこれはアルカポーレ式婚約届なので法的拘束力はごにょごにょ」


 今だ!

 俺はダッシュで逃げる。




 ★☆★☆




 途中でジョンと遭遇したので、一緒に逃げる。


「地獄だった」


 ジョンが震える声で呟いた。


「ああ、俺もだ」


 俺も震える声で返した。


「そうか。お前も地獄だったんだな」


 ジョンが同情してきた。


「お前もな」


 俺達は、熱く握手を交わした。

 こうして、俺達の友情は深まった。






書き直しました。

さらば、メリーちゃん。

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