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7/13

俺のウインクの殺傷能力を俺は知らない

 



「聞いてくれよ時雨!俺、昨日また姫川さんと目が合ったんだよ!まじで心臓爆発するかと思った!ああ幸せ~」


「……ちっ死ね」


 うーん。

 朝から時雨の機嫌が悪い。

 どうしたら機嫌を直してくれるだろう。

 よし、姫川さんの美談でも聞かせてやるか。


「そんなに怒るなよ時雨。取り敢えず姫川さんの心温まるエピソードでも聞いて、機嫌を直してくれ」


「うるさい!黙れ!死ね!……はいこれ今日の弁当!卵焼き結構自信あるから、残さず食べてね!」


「お、おう。ありがとう」


 俺が弁当箱を受けとると、周りの人達がヒューヒュー!と言ってきた。

 ………なんだ?

 時雨は少し頬を染めてそっぽを向く。


 ……機嫌、少し直ったっぽいな。

 よし、最後に姫川さんの美談で機嫌を完全に直してもらおう。


「ところで、姫川さんが」


「んもう!ほんっっと死ね!もう!もう!」


 くそっ、また機嫌が悪くなった。

 俺の幼馴染みは少し扱いが難しすぎる。


「よう!桜緋!」


 後ろから友達のジョンが肩を叩いてきた。

 因みにジョンは生粋の日本人である。

 松平 ジョン。

 うん。親は何を考えているのか。


「昨日貸したエロ本なんだけどさー」


「ちょっ!おま!ばっか!」


 こんのバカ!

 時雨さんの目が細められていく。


「ほーう?」


「ち、違うんだ……」


 あー、やっべ。

 細められた時雨の目からハイライトが消えていく。


「……いつも通りベッドの下かな?まさかまた巨乳ものじゃないよね?」


 まずい。

 今まで時雨に見つかった、幼馴染みもの以外のエロ本が無事だった試しがない。


「ほら、いい子だから。ね?早く言いなさい?」


 時雨が微笑んだ。

 これは本格的にやべぇ。すまん、エロ本。君の寿命は長くないようだ。


 と、そこへ。


「Hey!イヅキ!ジョン!遅刻しちゃうよ!Hurry up!」


 政宗が横を通っていく。

 彼は住職の息子の坊主である。

 ジョンと中身交換しといた方が良くないかな。


 そんなことより。


「そ、そうだな!行くぞジョン!遅刻してしまう!」


「そうだな!ちゃんと後でお前の彼女の機嫌、直しておけよ!」


「か、彼女……」


 よし、なぜか知らんが時雨が止まった。

 今のうちだ!


「ま、待てー政宗ー」


「HAHAHA!追い付いてごらん!」


「おい桜緋!彼女放っておいていいのか!」


「いいんだよ!あと彼女じゃねー!」


 時雨の姿が小さくなっていく。

 よし、この場は凌いだか。


 あ、横から女子の集団が出てきた。


「おいジョン!止まれ!ぶつかるぞ!」


「え、きゃっ!」


「うわ!」


 ぶつかった。

 因みに「え、きゃっ!」の方がジョンで、「うわ!」の方が女子である。


 ……ま、まずいぞ。

 この女子集団、不良なギャルの集団だ。


「ねえ、うちのありさが痛がってるんだけど?なんか言えよおら!」


「す、すいません!」


「HAHAHA!そんな怒りなさんな。Calm down.折角の美人さんが台無しだZE!……今度、食事でもどうかな」


 おい住職の息子。


「あーあ。化粧崩れちゃったんですけどー」


「言っとくけどうちのくみこは、拳ひとつでライオンに勝ったことがあるんだからね」


 どわぁ……!

 一人の女子から凄まじいオーラが吹き出す。


「な、なんだこれ……」


「HAHAHA!See you!」


 ま、政宗が逃げた……!


「おいそこのイケメン」


 ……?

 誰のことだ?


「お前はこれから私達の奴隷だ。こき使ってやるから、メアドさっさと教えろ」


「ほらジョン、さっさとメアド教えてやれ」


「そうだな」


「お前じゃねーよ!そっちの髪の長い方だよ!」


 ……え、俺?

 えでもさっきイケメンって言ってたよな。

 …………え、俺、イケメンなの!?


 いや、それはないはずだ。

 だって俺、学校の女子から嫌われてるし。

 女子と話しててもすぐに他の女子達に引きずられていくし、体育のドッジボールとか、みんな俺ばっかり狙うし。


「おい聞いてんのかイケメン」


 うーん。

 ここには俺とジョンの二人しかいないし、ジョンは短髪で、俺はやや長めだから、髪の長い方っていったら俺だし、でも俺イケメンじゃないし。うーん。


「聞いてんのかって言っ」


「待て下々の者よ!」


「し、師匠!!」


 師匠が威風堂々と立っていた。

 黒いヒラヒラしたドレスが風に揺れる。


「おい桜緋、誰だよあの子。めっちゃ可愛いんだけどっ」


「俺の師匠だ」


 師匠だぜー!!やっふーい!!


「誰だあんた。おいくみこ、やれ」


「言われなくても!……なんでそんなふざけた格好してんのに可愛いのよ。……ムカつく」


「師匠には指一本触れさせない!」


「キュンッ」


 知らないのか!師匠が本気だしたら世界が滅ぶんだぞ!


「おいおい、まじかよ。こいつらできてんのか」


「む。……そ、その、照れるからそういうことを言うな」


「そのふざけた格好でこんなイケメンの彼氏を……。絶対に叩き潰す」


 さっきから凄まじいオーラを放っている女子が、戦闘態勢に入った。

 俺も構える。


「我が半身よ、ウインクだ!」


「はい師匠!」


 相手の目をしっかりと見て、パチリとウインク。

 少し長めのウインク、微笑み仕立て~~季節のハートマークを添えて~~


「キュン♡……がくり」


「く、くみこー!!」


 どういうことだ。なぜ俺のウインクで相手が倒れるんだ。

 まさか俺の右目には、師匠の右腕の竜のように、恐るべき力が眠っていたというのか。


「やったぞ我が半身よ!」


「はい師匠!!」


 残るは敵ではない。


「ウインクだ!」


「はい師匠!!」


「キュン♡……ばたり」


「さ、さちこー!!」


「もう一回ウインクだ!」


「はい師匠!!」


「キュン♡……ころり」


「あ、ありさー!……くそっ!おのれぇ、よくもみんなを!……同じ手が私に通用すると思うなよ!」


 最後に残った、金髪のリーダー格の女子は、闘志をむき出しにしてぐるると唸る。


「我が半身よ、壁ドンして『お前の全てを俺色に染めてやる』だ!」


「はい師匠!!」


 ドンッ!


「お前の全てを俺色に染めてやる」


「キュン♡♡!!!………ばたり」


 リーダー格の女子は倒れた。


「やりました師匠!!」


「うむ。……何故だか我はおもしろくない。何故だ?」


「す、すみません!なにか気に障ることでも?」


「……分からぬ。それより我が半身よ、よくやった」


「ありがとうございます師匠!!大好きです!!」


「ぐはっ!………がくり」


「師匠!!師匠ーー!!」


 俺が倒れ伏した師匠を抱いて咽び泣いていると、ジョンが慌てた様子で駆けつけてきた。


「お前、どうやって全員倒した!?全部見てたけど全く分からないんだが!?」


「俺の右目の力だ。それより師匠が!師匠がぁ!!」


「なんでこの子が倒れたんだ!?」


「分からない!分からないんだ!助けてくれ!ジョン!!」


「人工呼吸だ!俺がするからお前はさがってろ!」


「分かった!」


 ジョンが師匠に顔を近づけていく。

 頼むジョン。師匠を助けてくれ。

 

「寒気が!」


 師匠が目を覚ました。

 ジョンと目が合う。


「こんのうつけがああああ!!」


「ぐぼべぇぇぇ!!」


「ジョンーー!!」


 ジョンがぶっ飛んでくー!!


「うわあああん、我が半身よぉぉ!!」


 師匠が俺に抱きついてきた。

 甘い香りがする。


「良かった!良かった師匠ぉぉ!!」


 俺達が抱き合って泣き叫んでいると、不良の女子達が起き上がってきた。


「くそっ、見せつけやがって!覚えてろよ!」


「精々お前の彼氏が寝とられないように気を付けるんだな!」


 よく分からない捨て台詞をはいて去っていった。


 



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