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俺の師匠がただの中二病なことを俺は知らない

 



「オウヒ・プリンス・マシュマーロよ!そこで念じるのだ!今こそ目覚めよ、我が右腕に宿りし竜よ!……とな!」


「分かりました師匠!!……今こそ目覚めよ、我が」


「言葉に出さなくてよい!念じるのだ!」


「分かりました師匠!!…………………………大変です師匠!!竜が目覚めません!!」


「なんだと!!最初からやり直しだ!!」


 なぜこんなことになったのかと言うと、それは一週間前の日曜日に遡る。



 ★☆★☆



「おいこら金だせや」


 いかつい不良グループに囲まれてしまった。

 なんと運の悪いことか。


「えー、今お金持ってなくて」


「ふざけんな!財布だせよ財布!」


「いや、財布持ってなくて」


「あーん?これはなんなのかなー?」


「ちっ」


 鞄のポケットから財布が抜き取られた。

 これはまずいぞ。

 今財布には三万円入っているのだ。

 せっかく節約して貯めたお金が……。


「おうおうこいつ金持ってんじゃんよー」


 三枚の福沢諭吉を抜き取っていく不良。


「へっ、じゃあ二枚俺な」


「いやいや俺だろ」


「はあ?どう考えても俺だろ」


「ふざけんな寄越せよ!」


 仲間割れか。

 今のうちに奪い返して逃げるとか無理だよな。


「そこの雑魚共!」


 突然、左目が赤くて右目が青い少女が現れた。

 右手にはなぜか黒い手袋をはめている。


「なんだあの女」


「へっ、なかなか可愛い顔してんじゃんか」


「どう考えてもただのいかれた女だろ」


「へっ、あいつ俺の彼女にしてやろうかぁ」


「いや俺が先に目ぇーつけたし」


「ふざけんな!譲れよ!」


「お前が譲れよ!」


「我は闇を支配する王になるべくして生まれた偉大なる存在、ダークプリンセス・レモン・ウメボシー・鈴音だ!」


 なんともすっぱそうな名前だ。


「やっぱこいついかれた女じゃねーか」


「頭おかしいけど顔さえかわいきゃいんだよ」


「へっ、俺はレモンと梅干しだけ分かったぜ」


「そこの下賤な人間共!奪った紙幣を返してやるのだ!」


 よくこのいかつい連中相手にあんな態度できるな。……かっこいい。


「は、なに言ってんのこいつ」


「従わぬというのなら、力ずくでも従ってもらう!」


「はっ!やってみろよ!」


「あちょちょちょちょちょー!!」


「ぐえぇぇ!!」


「あがべぼぉぉ!」


 つ、つよ!!

 少女は回し蹴りなどの派手な技であっという間に不良達を全滅させた。

 俺は感動した。


「ほら、取り返してやったぞ人の子よ。我はダークプリンセス・レモン・ウメボシー・鈴音。いずれ闇の世界を支配する者」


 後半なに言ってるか分からなかったけれど、俺の為にお金を取り戻してくれたことは分かった。

 こんな華奢な女の子に助けられてしまうとは、我ながら情けない。

 俺も、ダークなんとかさんのように強くなりたい。


「ダークレモン梅干しさん」


「違う!違うぞ人の子よ!我は」


「俺を弟子にしてください!!」


「………弟子?」



 ★☆★☆



 と、こんな感じだ。


「よし、少し休憩だ」


「はい師匠!!」


 俺は近くの自販機でコーラを二本買い、師匠と並んでくびぐびと飲む。


「ごくごく……師匠はどうやってそんなに強くなったのですか?」


「うむ。漫画で見たのを見よう見まね………とは言えぬ」


「すいません師匠。聞こえませんでした」


「うむ!産まれた時から体が覚えておった!」


「なるほど!流石は師匠!!」


 すごい。

 遺伝子レベルだったのかその強さは!


「師匠!俺にも師匠の右腕に封印されている竜を見せてください!」


「……そ、それは出来ぬ。この封印を解いてしまったら、この世界が滅んでしまう」


「な、なんという恐ろしい竜……!!」


 迂闊に師匠の右腕に触れてはいけない。

 世界が滅んでしまう!


「師匠は超能力とか使えるんですか?」


「もちろんである。数多の能力を持っている」


「す、凄い……。師匠のその目はなんで左右で色が違うんですか?」


「これは闇の世界の王になる資格。この瞳をもつ者のみが闇の世界に君臨出来るのだ」


「凄い!流石は師匠!!……カラーコンタクトとかではなかったのですね!」


「………う、うむ。さて!そろそろ修行を始めよう!」


「はい師匠!」


 俺は気合いを入れる為、上半身の服を脱ぐ。


「んな!!……ば、馬鹿者!!……あわわわわわ」


「ん?どうしたんですか師匠?顔が真っ赤ですよ?」


「なななななんでもないぞオウヒ・プリンス・マシュマーロよ。さっさと始めよ」


「はい!」


 俺は一本の木の前に立つ。


「いきます師匠!!」


 俺は重心を前にして跳び、右腕だけで着地し、脚を回して遠心力をつけ始める。

 脚の回転にあわせて両腕で体を回転させる。

 十分に回転が速くなってきたところで、木を蹴る。


 ドガアアアアアアン!!!!


 木が折れた。


「出来ました師匠!!どうですか!?」


「……嘘やん」


「これで少しは師匠に近づけましたか!?」


「ま、まだまだだ!我ほどともなれば、触れずともそんな木はへし折ることが出来る!」


「す、凄い。流石は師匠!!どうやればそんなことが!……俺にも教えてください!」


「……よ、よかろう!もうどうとでもなれ!」


 三十分後。


「分かったな。右腕に気をこめ、それを放つことで、この木を触れずともへし折ることが出来るのだ」


「分かりました師匠!!やってみます!!」


 俺は師匠に言われた通り、右腕に気をこめるイメージをし、一気に撃ち出す!


 ドゴッ!


 木に大きな窪みが出来た。


「出来ました師匠!!」


「…………なんでやねん」


「どうですか師匠!!」


「……ま、まずまずだ。だが、それをへし折る程度は出来ぬと我には及ばぬ」


「やはり師匠は凄い!……師匠!お手本を見せてください!」


「へ?お手本!?……駄目だ。それをすると、我の右腕の封印が解けてしまうかもしれぬのだ」


「そ、それは大変だ!すみません俺、何も知らずに……」


「よいのだ人の子よ」


 こんな感じでもう一週間が過ぎた。



 ★☆★☆



 俺は竜を出せるようになっていた。

 これで師匠にも少しは近づいたと思う。しかし師匠の竜は封印を解くと世界が滅ぶほどの力があるので、俺の竜は師匠の竜に遠く及ばない。

 師匠は途中から現実逃避ぎみの笑いをしていたので、俺にはやはり才能がなくてそれを師匠は嘆いていらっしゃったのだと思うが、努力に努力を重ねた結果、こうして師匠に少しは近づくことが出来た。


「ようよう。この前はずいぶん殴ってくれたなぁ」


「まさか逃げねえよなぁ?」


 あ、師匠が不良グループに絡まれている。

 今回は人数がずいぶんと増えて50人位いるが、師匠ならばあんな不良共はあっという間に蹴散らしてしまうだろう。

 心配なのは不良達だ。

 未だその実力を見せてはくれないが、師匠はその気になれば世界を滅ぼせるのだ。

 最初、俺を助けてくれた時に垣間見た師匠の実力は恐らくわずか1%にも満たないのだろう。


「ダークレモンさんよー」


「だ、ダークレモンではない。我が名は」


「うっせんだよ!!」


「ぴぃ!!」


「あはは!怯えてやがるぜ!!」


 ああ、師匠……。

 わざわざ怯えた演技までして戦闘を避けようとしている。

 この前は十分に手加減出来たが、今回は人数が多いので手加減が出来ないということか。下手したら世界滅びちゃうし。

 はあ、世界の為にも、ここは俺が出ていってやるか。


「おい、お前ら」


「お、オウヒ・プリンス・マシュマーロ………」


「ん?誰だお前?」


「あはは!お前この前のびびり野郎じゃねーか!!」


 俺はこの前とは違う、少しは成長したのだ。


「俺の師匠に手を出すな!!死にたいのか!!」


 こいつら分かってるのか?師匠の逆鱗に触れたらどうなるのか。

 師匠が出るまでもない。

 ここは俺だけでも十分だ。


「そ、そんな……。俺の女に手を出すな、なんて……」


 師匠が俺の後ろで何かを呟いている。

 右腕の封印を強化しているのかもしれない。


「お前、バカなの?俺ら56人いるんだけど?」


「だからどうした!相手が誰であろうと、俺は師匠を守る!」


 死人を出さない為にもな。


「キュン♡」


 後ろからまた何か聞こえた。


「言ってろ雑魚が!いくぜ!」


「「「「うおぉぉぉ!!」」」」


 大人数が迫ってくるが、全く怖くない。

 俺は拳をつき出す。


「「「ぐはぁぁ!!」」」


 右腕の延長上にいた何人かが風に舞う落ち葉のように吹き飛ぶ。

 他の不良達はぎょっと目を見開く。


「な、なんだこいつ!やべえ!」


「な、なにしやがった!」


 俺はもう一度拳をつき出す。


「「「ぐぼぉぉぉ!!」」」


 また何人か吹き飛ぶ。


「ひぃ!こいつやべえ!逃げるぞ!」


「に、人間じゃねえ!」


 もう不良達は逃げ出した。

 竜を出すまでもない。

 はっ、そんな雑魚共が師匠に挑むなど、百年早いわ!



 ★☆★☆



 師匠は真っ赤な顔で俯いている。


「お、オウヒ・プリンス・マシュマーロよ」


「なんですか師匠」


「な、汝は我のことが好きなのか?」


「はい!もちろんです師匠!」


「……な、なるほど。先程、汝の溢れる程の愛を感じたので確信はしていたが、やはり口で伝えられると照れるな」


「そんな、今さらですよ師匠!師匠と俺の仲じゃないですか!」


「なっ!……既に我らはそんな仲だったのか?」


「当たり前じゃないですか師匠!」


「そ、そうか。あの、その、不束者ですが、よろしくお願いします」


「こちらこそ末長くよろしくお願いします!」


 こうして、俺と師匠の師弟愛は一段と強まった。

 俺はいつか師匠に追い付けるだろうか。






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