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トレース・ファンタジー  作者: 青の剣士
第1章 俺は異世界にはお呼びじゃ無いらしいです
7/40

パーティー結成!

ティアのステータスは、それはそれはもう熟練の冒険者の様に強化されたものだった……いや、確かに獣人族は人族よりも身体能力が優れているらしいからステータスは高いんだろうなとは思ってたけど、幾ら何でも高すぎだろ!?え、もしかしてこれが普通なのか?だとしたら俺のステータスって一体……


「え、ええっと……」


なんかティアまで気まずい雰囲気を察して何も言えなくなってるし。


「なぁ、ティアはどこかで修行でもしてたのか?」


「い、いえ!そんなことはしてません。ですが、村にはよく魔物が襲ってきてそれを撃退していたからかと。村の若い男性は兵として、王宮の人間に連れて行かれてしまいましたから」


「……1人で?」


「はい」


道理で強いわけだ。下手な鍛錬よりもやはり、実戦の方が得られる経験は多い。魔物達と1人で戦い続けた結果がこのステータスか。


「ティアは凄いな」


「いえ!私なんてまだまだです」


ティアがまだまだなら俺はなんなんだって話だが……これ以上は俺が悲しくなるから追求するのは止めよう。

ティアと自分の力の差を痛感していると、俺が最初に受付をしてもらったセラさんが話しかけてきた。


「こんにちは、ユウトさん。ティアさんはユウトさんのお連れの方なんですか?」


「セラさん。ええ、ティアとは一緒に依頼などを受ける予定ですが」


「でしたらパーティー登録をしてみては如何でしょうか」


「そんなものがあるんですか?」


セラさんの説明によると、ギルドにパーティー登録をする事で、正式にパーティーとしてクエストを受ける事が可能になるそうだ。パーティーとして達成したクエストの報酬は山分けになるそうだが、パーティー登録を行う冒険者は多いらしい。なぜかというと––––


「パッシブスキルの共有?」


「えぇ。パーティー登録を行うと、パーティーメンバーが持っているパッシブスキルを共有する事ができます。ティアさんはパッシブスキルを持っていますから、お二人の戦力を底上げする事が出来るかと思いまして」


「教えてくれてありがとうございます!セラさん。それならパーティー登録をお願いしてもいいですか?」


「分かりました。それでは窓口までお越しください」


そう言うと、セラさんは俺たちを窓口まで連れてきて、パーティー登録の説明を開始した。


「パーティー登録ですが、これは冒険者登録以上に簡単です。お二人の冒険者カードを提出して頂くだけで結構です」


説明というほどでもなかった。


「それだけでいいんですか?」


「はい。では冒険者カードを提出して下さい」


ティアが簡単な登録方法に疑問を抱いたが、セラさんは短く答え、俺たちにカードの提出を促す。とりあえず俺たちはカードを提出した。

カードを受け取ったセラさんは、受付の中に入っていくと、中で何かしらの手続きを行っている様だ。

2〜3分程でセラさんが戻ってきた。


「これでパーティー登録は終了です。続けてパーティーの説明をしたいと思うのですが、よろしいですか?」


「分かりました」 「はい」


俺とティアは同時に了承し、パーティーの説明を聞いた。


まず、パーティーを登録するとステータス画面にパーティーメンバーの名前が記入される。それにパーティーメンバーの居場所もなんとなく分かるようになるらしい。これは、特殊な魔法(企業秘密らしい)によって冒険者カード同士に特殊なパスが繋がっている状態になっているらしく、カードを通して居場所が分かるんだとか。同時に、パッシブスキルの共有もこのカードのパスを通して共有しているらしい。


「そして、パーティーでクエストを受けメンバーの誰かが戻られない場合、報酬はその人を除いた全員での山分けになります。この規則を悪用して、不当に報酬を得ようとする冒険者もいる様なので、くれぐれも注意して下さい」


「分かりました」


まぁ、ティア以外にパーティーを組む予定は今の所無いから問題無いだろ。


「では、お二人とも頑張って下さい」


「ありがとうございます」 「はい」


こうして俺たちはパーティーを結成した。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


ギルドでパーティー登録を行った後、俺たちは簡単なFランクのクエストを幾つか受けていた。魔物討伐のクエストが1つと、採集クエストが2つ。まずは俺も受けたこともあるという事で、魔物討伐クエストからやる事にした。やはりというか、ティアの強さは尋常じゃなかった。俺も少しステータスが上がって、ここら辺の魔物なら1撃で屠る事は出来る様になったが、ティアの動きは洗練されていた。通常スキルの【加速】と【天翔てんしょう】を駆使して瞬く間に魔物を倒していく。俺が1匹倒す間にティアは3匹を倒してしまった。討伐対象であるフラフラビットを10体倒し一息つく。


ティアの戦い方から、【加速】はその名の通り自身の移動速度を一時的に加速させ、【天翔】は空中を蹴って移動できるスキルだと推測した。俺もあれ欲しいな。模倣でコピー出来ないかな?そう思い、ティアの動きを頭の中でイメージする。求めるのは一時的な加速。魔物の元へ瞬時に移動し、勢いのままに魔物を両断する姿だ。

しかし、何度試してみてもティアのスキルをコピーする事は出来なかった。自分のステータス画面を確認してみても––––


叢雨 勇人 男 17歳

『異世界に召喚されし者』


【HP】214/214

【MP】37/37


【STR】123 → 158

【VIT】116 → 134

【INT】46 → 47

【MIN】39 → 50

【AGI】118 → 142

【DEX】84 → 91


固有スキル

【模倣】→[ーーー]

パッシブスキル

【限界突破】【向上心】【女神の加護】


「やっぱダメか」


「あの、今のは?」


俺が突然沈黙したことを不思議に思ったのか、ティアが俺に聞いてきた。


「あぁ。【模倣】を使ってティアのスキルをコピーしてみようと思ったんだけど、上手くいかなかったんだ」


「ユウトさんのスキルは他者のスキルをコピーする事が出来るんですね」


「これが俺の唯一のスキルだから。だと言うのにこのスキルには条件が設定されてるんだよ…」


そう言いながら、ティアに【模倣】スキルを説明していく。


「なるほど。でもどうしてコピー出来ないんでしょう?」


「どう考えてもティアの方が俺よりも強いからだろ。ステータスからして違いすぎる」


圧倒的なステータスの差。さらに使い勝手の良いスキルの数々。神様は理不尽だ。でも文句は言えない。あの神様はこんな俺に『加護』までくれたんだ。このステータスで頑張って行くしかない。


「すぐに追いついてやるから覚悟しろよ?」


「ユウトさんは既に強いですってば!」


そんなやり取りを繰り返し休憩を終えた後、俺たちは採集クエストに取り掛かった。今回のクエストは『マズダケ』と呼ばれる食材と『ヒン草』と呼ばれる植物を5つずつ取ってくるというものだ。いかにも不味そうな食材といかにも貧乏そうな植物だが、『マズダケ』の方は結構美味しく、『ヒン草』は回復薬の材料にも使われ、重宝されている(セラさん情報)。

初の採集クエストに若干不安があったのだが–––


「ユウトさん、こっちです」


「え?」


迷いのないティアの動きに戸惑いながらついていくと、そこには大量の松茸があった。


「これが?」


「はい、マズダケです」


松茸だった。見た目は完全に松茸だった。


「というかよくわかったな、ここに松た–––マズダケがあるって」


「匂いがこちらの方からしましたから」


匂い?俺は匂いらしきものは何も感じないが。やっぱ獣人族は嗅覚も優れてるのか。


「ティア、どんだけ凄いんだよ」


「いえ、これは私というよりは狼人種が凄いんだと思います。狼人種は他の獣人と比べてもかなり身体能力が高いですから」


「そうなのか。それにしてもお陰で採集クエストは早く終わりそうだ。ありがとう、ティア」


「ユウトさんのお役に立てたのなら光栄です!ヒン草の場所も大体分かるので、そちらにも案内しますね」


「あぁ、頼むよ」


その後、ヒン草の採集も順調に行い、ギルドにクエストの終了報告を行った。この日の稼ぎは

フラフラビット討伐クエストで2000アル、マズダケ採集で1000アル、ヒン草採集で1000アルの合計4000アルだった。これで俺たちの所持金は5100アルとなった。中々の貧乏生活だ……


ギルドで報酬を貰った後、俺たちは宿屋の食堂で緊急会議を開いていた。


「正直この所持金はヤバい……」


「どうしましょうか……」


この宿屋は1泊500アルとはいえ、2人分となると1泊1000アル。無駄に金を消費しなかったとしても、5日で宿に泊まれなくなってしまう……


「明日は、今日より多くのクエストを受けよう。ティアは採集クエストをメインで頼む。俺は討伐クエストをメインでやるから」


「分かりました……!」


こうして俺たちの"仕事漬け"ならぬ"クエスト漬け"の毎日が幕を開けた。

それから一週間の間、俺たちはそれはもう死に物狂いでクエストを受けまくった。俺たちの暮らしが楽になる様に。

その結果、一週間で貯まったお金はなんと35000アル!皇女様から貰ったお金の2倍以上だ!

こうしてギリギリの生活からなんとか脱出した俺たちがクエストを受けにギルドに行くと––––


『緊急クエスト発生!冒険者求む!』


と書かれていた。


何か嫌な予感がする……

次回、物語が動き出します

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