2日目の朝
なかなか内容を考える時間が取れない……
それでもなんとか更新していく今日この頃……
外が青みがかり、日がまだ登る前の早朝、俺は新しく買った片手剣を両手に握り、素振りをしていた。こっちの世界に来てまだ2日目で、まだこっちの生活に慣れてはいないが、1日の日課だけは辞めるわけにはいかない。いつもは愛用の木刀を使っていたのだが、こっちには無いため昨日と同じ武器屋で買った同じ片手剣を使い、型を確かめる様に100回ほど素振りを繰り返す。本当はこの後鳴神と手合わせを毎回行うのだが、あいにく鳴神は此処にはいない。そのため脳内で鳴神の動きをイメージしながら、それと対峙する様に動いている自分をイメージしながら瞑想を開始する。
俺の右を狙う様に繰り出された横薙ぎを剣を返す様にして跳ね上げ、返す手でガラ空きになっている相手の右腹に一撃を叩き込む––––はずだったが、跳ね上げる前に俺の剣は避けられまるで同時に動いていたかの様に俺の左腹に相手の木刀が迫る。慌ててその攻撃を迎撃するが、それで態勢が崩れた隙を相手が見逃すはずもなく、次々と木刀の攻撃が打ち込まれる。
このままじゃやられると思い、無理やり相手の木刀を跳ね上げると、態勢を立て直す様に距離をとる。
顔を上げると、相手は木刀を収める様に左側に持ってきて右手を添えながら腰を落としていた。
鳴神流抜刀術、刀を納めた状態から抜き放つ様に放たれる鳴神が得意な型だ。距離をとると俺は毎回この技と対峙するが、今まで一度も防げた試しがない。その中でも彼女が得意なのは、抜刀術最速の技、『神速』。目で捉えるのも困難な程速いその刀は、彼女の才能もあって手から木刀が消える様に見えるのだ。
故に俺は防御を捨て、相手と同じ構えをとる。『神速』の動きは何度も見てきた。爺ちゃんや、他の門下生。それに鳴神との手合わせの中で。彼らの動きを全て照合し、俺に合った最適な『神速』をイメージする。いつもなら後一歩の所で体が縛られる様な感覚に陥り、それまで出来ていた『神速』のイメージが頭から霧散するのだが、今回はそれがない。イメージした『神速』を再現し相手に放つ。結果は力負け。相手の『神速』の威力は相殺できたが、俺は後方に吹き飛ばされ、鳴神には傷一つ無い。
「やっぱあいつに勝つイメージが出来ない…」
だが今回はかなりいいところまで行った。『神速』のイメージも完成したし、相手の『神速』を相殺できるところまで来た。後はひたすら鍛錬してより威力を上げるだけだ。
「そうと決まったら、ひたすら鍛錬あるのみだな」
そうして俺は技の習得と強化に没頭していった。
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朝日が登り辺りが明るくなった頃、俺は宿に戻ってティアと朝食を食べていた。今後の予定をティアに伝える為だ。今朝のティアは、昨夜風呂に入ったからか鮮やかな亜麻色の髪が朝日に照らされ、可憐さを際立たせていた。服が茶色い布の物っていうのが残念だが、昨日まで奴隷だったんだ、仕方ない。今度ちゃんとした服を買ってやろう。でも、こうして見るとティアって美人だな––––ってそうじゃ無いな。とりあえず予定を伝えないと。
「今日はとりあえず、ギルドに行ってクエストを受けるか。その時にティアの冒険者登録を済ませよう」
「分かりました」
「それとギルドに行く前にティアの装備を買いに行こう。さすがにその格好じゃ魔物と戦うのは厳しいだろ」
「すみません…何から何まで」
「いや、謝んなくていいよ。これは俺がしたくてやってる事だから。でも、クエストではティアの力を貸してもらうぞ?」
「はい!お役に立てるように頑張ります!」
そうして朝食を取り終えた俺たちは、宿を出発した。
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町にやってきた。日が昇ってまだ時間が経ってないのに、町は既に賑わいを見せている。
「こんな朝早くからよくテンション上げられるな……」
「どこのお店も必死ですからね」
そう言いながら俺の隣を歩くティア。
「そういや、ティアはアルトニカには来た事があるのか?」
「いえ、来たことはありません。私はあまり村から出た事が無いので。村を出たのも……」
「あぁ!済まない、嫌なこと思い出させたな…」
初の遠出が奴隷でっていうのは悲しいな。
「ってことは、俺とあまり変わらないのか」
「ユウトさんも来た事が無いんですか?」
あー。俺が異世界人って事、ティアに言うか?まぁもし駄目だったんなら、その時はあの皇女様が何も言わなかったのが悪いって事で。それにステータスも見せる予定だし、その時にどうせバレるか。
「あぁ。俺もここに来たのは昨日が初めてだ。なんせこの世界に召喚されたのが昨日だからな」
「召喚!?って事は、ユウトさんは勇者様なんですか?」
「いや、俺は勇者じゃないよ。それに、召喚される人間は大抵の奴がかなり強いと思うけど、俺は全然強くないから」
「そうなんですか」
「でも、ティアの足は引っ張らないようにするから」
「そんな!足を引っ張るだなんてとんでもない!私だって強いというほどのものでもないです」
「そうなのか。それなら、2人で頑張るってことでよろしく」
「はい!」
そんなことを話してると、防具屋に着いた。さて俺の財布様(7900アル)はここでの出費に耐えられるのだろうか……
結果、耐えました。なんか案外防具って安いんだな。一応、女性冒険者用の装備一式を揃えてもらってみたんだが、3900アルだった。後は武器だが……
「この短剣が良さそうですね」
武器屋の武器を眺めながら、ティアはその店で1番安い短剣(1400アル)を指差した。この子なんでええ子や。
「それでいいのか?」
「はい。耐久性、切れ味、どれも中々です」
「ん?ティアは武器の性能が分かるのか?」
「はい、私には武器の性能や、食材の質、毒の有無などが何となく分かるみたいなんです」
何かのスキルの影響なんだろうか。何それ羨ましい……
「出来ればこの短剣を2振りほど欲しいんですが、良いですか?」
なんと、2振りとな?それは聞いてないな……ってことはやっぱ片手剣並みにお値段張るんじゃないですか……
「わ、わかった。2振り買うか」
「ありがとうございます」
こうしてティアの装備を整えた後、俺たちはギルドに向かった。
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「では、冒険者登録代として100アル貰います」
「どうぞ」
冒険者登録を終えたティアは、俺があらかじめ渡しておいた銀貨1枚を受付に渡す。
「確かに頂きました。これから貴女はFランク冒険者です。Sランク目指して頑張ってくださいね!」
受付の人に応援されたティアは、俺の元に戻ってきた。
「ユウトさん、冒険者登録終わりました」
「ああ。じゃあとりあえず、お互いのステータスを確認するか。まずは俺からな」
「はい」
そう言った俺は自分の冒険者カードを出し、軽く念じる。すると俺のステータスが出てきた。
叢雨 勇人 男 17歳
『異世界に召喚されし者』
【HP】189/189
【MP】24/24
【STR】74 → 123
【VIT】82 → 116
【INT】 33 → 46
【MIN】34 → 39
【AGI】84 → 118
【DEX】68 → 84
固有スキル
【模倣】→[ーーー]
パッシブスキル
【限界突破】【向上心】【女神の加護】※①
※① : 女神の加護によって–––以下略
お?やっぱステータス上がってるな。鍛錬の成果が目で確認できるってなんか良いな。あ、【隷属術】のスキルは消しました。だってこれから先使いそうに無いし…一通りステータスが伸びているのを確認していると、ティアが俺に言ってきた。
「あ、本当に『異世界に召喚されし者』ってなってますね」
「ティア…信じてなかったのか?」
「いえ!信じてはいましたが、こうやって目の当たりにすると、本当に異世界って有るんだなと実感出来て」
「あぁ、確かにな、俺もこっちに来るまでは、異世界なんて信じてなかったし」
「それに、スキルは1つだけしか無いと言ってましたが、他にもあるじゃないですか」
ん?もしかしてティアにはパッシブスキルが見えてるのか?まぁ俺から見せたわけだしな。見えてて当然か。
「このパッシブスキルはあまり人に見られると良く無いらしいから、ティアも気をつけろよ?」
「え!?そうなんですか?で、でも私ユウトさんの見てしまいましたが……」
「あぁ、ティアには仲間なんだから、隠し事は良く無いだろ?」
「仲間……!!」
なんかティアがめっちゃ目を輝かしているんだが……
「では私も仲間であるユウトさんにステータスを見せます!」
「あぁ、よろしく」
そうしてティアが念じると、彼女のステータスが出てきた、のは良いんだが––––
ティア 女 16歳
『獣人族の少女』
【HP】384/384
【MP】121/121
【STR】 341
【VIT】 215
【INT】 168
【MIN】 194
【AGI】 372
【DEX】 179
固有スキル
【ーーー】
通常スキル
【加速Lv.3】【天翔Lv.1】【気配探知Lv.5】
【気配遮断Lv.3】【自己回復 Lv.7】
パッシブスキル
【鑑定】【回復の誓い】
……………お前それ、元奴隷のステータスじゃねーよ……
刀を『おさめる』って、漢字で書くと『収める』と『納める』の両方を書く場合があるらしい。
『収める』は、刀を鞘にしまう動作のこと、『納める』は、刀が鞘にしまわれている状態を表すのだとか。
変換ミスと思った方、紛らわしくてすみません……もしかしたら俺の勘違いかもしれませんが