毒舌美女
久しぶりの投稿です。
なんとブックマークが80件突破し、ユニークアクセス数も5000を突破してました!
これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
「なぁ、本当に何も感じないのか?」
「だからそう言っておろう!何なんじゃまったく」
「些細な事で良いんだ。嫌な感じがするとか、少し肌寒いなとか、そう言った事がこの森を突破するのには必要なんだ」
「そ、そうなのか。まぁ強いて言うなら、どこか懐かしい感じはしておるな」
「懐かしい?」
ティアが尋ねる。
「うむ。なんかこう、前にも一度こんな所に来たような気がするのじゃ」
「確かシグレは、この森でコガラシさんに拾われたんだったな。懐かしいと言うのも納得だ」
「何でそんな所に居たのかは思い出せないのじゃがな」
今でこそこうして元気に振舞ってはいるが、当時は不安だったはずだ。
目を覚ましたら見知らぬ土地。自分の名前しか思い出せず、周りには誰かも分からない人々。間違いなく俺だったら逃げ出したくなるな……
今のシグレがあるのは、やはり本人の前向きな姿勢があるからだろう。俺も彼女のその姿勢を見習わなきゃな。
暫く森を散策していると、シグレが急に立ち止まった。
「ん?シグレ、どうした?」
「誰かが妾を呼んでおる……?いや、周りには誰もおらんし……じゃがだとしたらこの声は一体?」
何かブツブツと呟き始めたシグレは、何かに導かれるようにいきなり走り始めた。
「ちょっ!どうした!?待って––––って早っ!?足早っ!!」
俺が声を荒げても彼女は見向きもしない。どうやら俺の声が届いていないようだ。しかも彼女は、いつもでは考えられない程の速さで、謎の光を纏いながらどんどん離れていく。
「くそっ!追いかけるぞティア!!」
「うんっ!!」
ティアは返事をした瞬間、物凄い速さでシグレを追いかけ始める。一般人では到底出す事のできない速さ。恐らく【加速】のスキルを使ったのだろう。
俺も【模倣】を使って【加速】をコピーする。すると、体が羽のように軽くなった。これなら彼女達に追いつける!
彼女達が走り去った方向へ、俺は一気に駆け出した。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
どのくらい時間が経っただろう。シグレは一切速度を緩めることなく走り続けている。
俺もティアもそろそろ体力の限界が近づいてきた。
「はぁ…はぁ……あいつ、どこまで……行くんだ?」
「さぁ、でも何か目的を持って行動してる気がする」
失礼、ティアは全然余裕でした。くそぅ高いステータスが羨ましい!俺にも少し分けてくれよ!!
「ユウト、大丈夫?」
「あぁ……この位……全然、余裕だ……」
やばい、酸素が足りない。頭痛くなってきた。吐きそう。胸が苦しい。
だがティアは普通にしている。なら、俺がここで根を上げるわけにはいかない。
「よし!スピード上げ–––––」
「あ、シグレ止まったみたい」
な、なんですと!!?
ティアに教えられてから動作をキャンセルしようと試みるがもう遅い。加速を始めた体はいうことを聞かず、一瞬にしてシグレの横を通り過ぎその先にある木へと一直線に向かう。
「ちょっ!?誰か止めてくれ〜!!!」
「ユウト!?」
ティアが慌てて俺を掴もうとするが、加速している俺には手が届かない。
あ……終わった……こんな速度でぶつかったりしたら間違いなく俺の体は木っ端微塵になる。天国にいるお母さん、お父さん、俺17年の生涯を終えるかもしれません。そっちに行ったら––––––
「ブヘッ!!」
急に体が失速したと思ったら柔らかな感触(一部は)に包まれる。な、何だ?この触れているだけで心が幸せになる様な触り心地は。は!?まさか、ここが天国!!
頭を上げると、そこには冷たい視線を向ける女性がいた。腰の辺りまで伸びるサラサラの金髪にぱっちりと開いたエメラルド色の瞳、モデルの様なすらっとした体型は異性を惹きつける色香を放っている。
中でも特徴的なのが長い耳だ。それは俺が元の世界で知られていたエルフと同じ特徴。長い耳にすらっとした体型、容姿端麗と来ればそれはもう愛でるしかないだろ!!まずは彼女の名前をお聞きして、好きな男性のタイプを聞いて自分を売り込むとこから––––
やばいやばい、思考がトリップしかけたぜ。
「不快な視線を向けるな」
…………
「不快な視線を向けるなと言っている。さっさとその二つの眼球をくりぬいて差し出し、私の視界から消え失せろ」
………えぇ分かってました。エルフは他種族を嫌う傾向にある事。それは元の世界でも常識とされていた。でもこんなに危ない種族だなんて聞いてなかった!
なんだよ眼球くりぬけって!初対面の人に向かって言う台詞じゃねえよ!!
「おっと失礼、つい本音が。それよりさっさと離れてくれ」
失礼とか微塵も思ってないだろ……俺へのヘイトを隠す気が全く無い。ここまで嫌われたのは生まれて初めてだ。俺が何したってんだよ………
言われた通りに彼女から離れる。
もっと夢見せてくれたっていいじゃん!
大丈夫?怪我はない?とかって心配してくれたり、そこから淡い恋心を抱き初めて種族の掟とかに縛られて満足に恋愛が出来ずに苦しんだり、それでも結ばれてハッピーエンドとかあるだろ!?
「大丈夫?ユウト、今凄く気持ち悪い顔してるよ?」
「ティア、そういう事は本人に言っちゃいけない……」
俺に味方はいなかった……
「それより、貴女は?」
「私は国王の秘書をしている者だ。名前まで教える気はない」
いちいち突き放す様な物言いをする子だ。俺、こういう奴は嫌いだな。俺の中でのエルフ像は今完璧に崩れ去った。
「我らの次期国王を連れてきた事には感謝する。それに免じてエルフの国に入る事は許可してやるが、変な事でもしてみろ。切り落とすぞ?」
何を!?まさかナニを切り落とすの!?こいつ口悪いとかの問題じゃない。こんなんで国王の秘書なんか務まるのか?
「それより、シグレをどうするつもりだ?」
「シグレ?あぁターニャ様のことか。未来のエルフ族を背負って立つ方だぞ?丁寧にお運びするに決まっているだろ?馬鹿なのかお前?」
気を失っているシグレを運びながら(ちなみにお姫様だっこだ)彼女は言う。
くっそコイツに馬鹿とか言われると凄え腹立つ!!
「さっさと来い、獣人の少女にそこの歩く猥褻物」
「本当に容赦ないな!?」
「あ、あははは………」
謎の女性の後に続いて俺達は森の奥へと歩き始める。
しばらく歩いていると、突然前を歩いていた彼女が足を止めた。
「どうした?」
「うるさい黙れ」
「なっ!テメェ……」
「お、落ち着いて!」
「獣人のお前、名前は?」
「え?ティア、ですけど……」
「なるほど、いい名前だ。さぞ、それのお守りは大変な事だろう」
「まず人扱いをして欲しいんですが………」
「初対面の相手にゲスな視線を向ける程の危険な存在だ。人扱いする方が無理だろ」
「ぐっ………」
正論を言われてしまい言葉に詰まってしまう。
「エルフの国に行きたいなら、そのうるさい口を閉じてろ」
「そこまでいう事はないだろ!?」
もうヤダ………誰か俺と代わってくれ。
打ちひしがれてる俺を無視して、エルフの女性は何か呪文の様なものを唱え始めた。何を言ってるのかは分からない。おそらくエルフの言葉なんだろう。
彼女が呪文を唱え終わった瞬間、目の前に見た事がない光景が広がっていた。
そこは、木々に囲まれた大きな村だ。
しかし、実際にはその光景は人が一人通れるほどの大きさの丸い空間の中にしか広がっておらず、俺達がいるのは変わらず森の中。
「何をぼさっとしている。早く来い」
目の前の光景に目を奪われていると、いつの間にかエルフの女性はその丸い空間の中に飛び込んでいた。慌てて俺達もそこに入る。
「さぁ着いたぞ。ここがエルフ領の中心にして最大の国、"ハーネライム"だ」




