いざ、エルフ領へ!
更新が遅れてしまい、大変申し訳ございません。書いてたデータが消える事件があり、書き直しのために時間を取られてしまいました……
もうこれで2度目ですよ……もうヤダ、お家帰る〜!
なんてふざけるのは無しにして、この話から第2章に突入します。みなさん、今後も『トレース・ファンタジー』をよろしくお願いします。
拝啓
おだやかな小春日和が続いております。日本にお住まいの皆様はいかがお過ごしでしょうか。
私は今、森の中をかれこれ2時間程歩いています。目的地は森を抜けた先にあるエルフ領にある『アプト』と呼ばれる小さな村。実はこの村は––––––––
「おーい、何を惚けておるのじゃ?」
頭の中で手紙の内容を反芻していると(手紙を書く予定はない。というか手紙を日本へ届ける手段がない)、横から声をかけられる。
「ん?俺達のどうしようもない現状を第三者に伝える為の手紙の内容を考えてた」
「考えるも何も、迷ったの一言で解決じゃろ?」
そう、俺達は今、迷っていた。
森の入り口と出口は見る限り1つずつ。しかしギルドマスター曰く、目に見える出口は"獣人領"に出る場所だそうで、エルフ領に行くためには、別の出口を探さなくてはいけないらしい。
確かに、以前ティアを乗せた荷車が来たのが森の奥からだったから、森を抜けた先が獣人族の領になる事は分かっていた。だから、森を抜けた先がエルフ領というのには少し引っかかっていたんだ。
だけど、まさか見えない出口を探す事になるなんて思っていなかった。
到底解決出来そうにない案件を嘆きながら、俺は町を出発する前のギルドマスターとの会話を思い返していた。
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ギルドマスターであるコガラシさんから伝えられた内容はとても信じがたいものだった。
「村が、壊滅………?」
「はい。魔物達が何かの意思を持って村を襲い壊滅させたと、冒険者の方から報告を受けました」
村が壊滅するだけでもやばいのに、それを魔物が意図的に行ったのなら確かに危険だ。
つまりそれは、魔物達を指揮する存在がいるという事。
洞窟で対峙したバティンやそれに相当する魔族が、本格的に動き出したという事に他ならない。
「それで、村の人達は………?」
「残念ながら、生存は確認されていません。ですが、死体も確認されていないのです」
「どういう事ですか?」
「村には人の気配が無かったという事です。エルフは魔法を生み出した種族。何かしらの方法で魔物の手から逃れたと思われます」
そうなのか。最悪の事態は起こっていないようで安心した。
「何か嫌な予感がします。ユウトさん、エルフ領に行って貰えませんか?」
「それは分かりましたが、どうして俺に頼むんですか?俺よりもランクの高い冒険者はたくさんいますし、何より俺はまだ冒険者になったばかりです。そんな人間を危険な場所に送るというのは、ギルドマスターとしては許容出来ないはずでは?」
「確かにそうです。低ランクの冒険者をわざわざ危険地帯に送り込むなんて上に立つ者がしていい選択じゃない。ですが私は、貴方ならどうにか出来ると考えています。魔族を退け、森のヌシを単独で倒す事の出来る貴方なら」
ギルドで仕事をしている一部の人は、冒険者カードを通してその人の本当の力を見る事ができる。おそらく、この人も俺の冒険者カードを通して洞窟や森での戦闘を見たのだろう。
確かにあの戦いを見ていたら、俺が自分のランクよりも高い能力を持ち、それを隠していると勘違いしてもおかしくない。だがそれらは全て偶然の産物であり、俺自身が意図的に発した力じゃない。
本来、俺にはあんな力は備わっていない。
ただ、この件を断るつもりは無かった。
「分かりました。俺でよければ引き受けます」
「有難うございます!」
コガラシさんは満面の笑みを浮かべた。
ま、眩しすぎる!なんて可憐な笑みだ!流石ギルドマスター。この笑顔を見られただけで魔王なんか一刀両断出来そうなくらい力が溢れて–––––––
ギュッ!!!!
「痛ってぇ!!!!」
尻を思いっきりつねられた。慌てて後ろを振り返るが、そこには膨れっ面のティアと不思議そうに俺を見るシグレしかいない。これは明らかにティアがやったな。
「何すんだよティア!」
「知らないっ!!」
そのままティアは黙ってしまった。俺何かしたか?思い返してみるが、何かをやらかしたような記憶はない。
よくわからないが機嫌を損ねてしまった様だし、後で謝っておこう。
「ええっと……続きをお話ししてもよろしいでしょうか?」
律儀に俺達のやり取りが終わるのを待っていたコガラシさんが俺に訪ねてきた。
「あ、あぁ、お願いします」
「では。今回貴方達には、エルフ領を統治している『フィーリカ』と呼ばれる国に行き、その国王へこの手紙を届けて貰いたいのです」
そう言ったコガラシさんは、俺に一つの封筒を手渡した。
「エルフ領に出現する魔物は、この辺りに出る魔物よりも強いと聞きます。それに、付近では魔族らしき存在もいると思われます。道中は十分気をつけて下さい」
「分かりました」
「そして、肝心のエルフ領への行き方なのですが……私には分かっていないのです」
………は?
「すみません、多分聞き間違えたかもしれないのでもう一度言って貰えませんか?」
「私には、エルフ領への行き方が分からないんです……」
マジか。じゃあ何か?行き方が分からない場所、それも多くの危険を孕んでいる場所へ冒険者に成り立ての俺を派遣するのか……先行きが不安になってきたんだが……
「でも、貴方達になら何とか出来ると私は信じています!頑張って下さい!」
「は、はぁ……」
まったく、無茶な信頼もあったもんだな……まぁやってはみるが。となると、まずはこの町で情報収集から始める事になるか?
「あ、ユウトさん」
「はい?」
部屋を退出する前に俺だけ呼び止められた。
「突破口が無いわけでは無いんです。彼女がいれば」
「あぁ、なるほど。分かりました」
そうして俺は部屋を出た。
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という事があって今に至ると言う訳だ。コガラシさんのアドバイスもあって何とか突破する方法は思いついたが、それがさっぱり機能していない。結果迷子になっているという事だ。
「なぁシグレ、この辺りで何か感じるものとか無いか?」
「さっきからお主は何を言っておるのじゃ?そんな物あるはず無いじゃろ?」
さっきからこの調子なのだ。そう、俺が考えた作戦はシグレの感覚に頼るというものだ。
本人は気づいていないが、実は彼女は–––––
「ユウト、魔物が」
っと、歩いていると魔物の群れがこっちに向かってきていた。俺が最初に倒したフラフラビットや、初めて見る魔物もいる。あれは確か––––
「マンイーターだね」
「そうそれ!」
ギルドで話を聞いた時は驚いたが、こいつは『マンイーター』と言って、容赦無く人を喰らうミミズの様な魔物だ。全長は俺の腰辺りまでしか無く小さいが、驚く事に捕食する際には人を丸々飲み込めるほどの大きさまで口を広げる事が出来るらしい。
マンイーターは、人だけで無くあらゆる動植物を喰らい尽くす。強さはそれほどでも無いらしいが、その存在は環境破壊まで引き起こす、ある意味では災害に近い存在だ。
見つけたからには倒すのがベストだが–––––
「数が多くないか?」
「うん、あれらを全て倒すのは骨が折れると思う」
「なら、ここは妾の出番じゃな?」
「いや、お前火の玉しか出せないだろ……」
よくそんなんで自信満々に言えたもんだな。ここはしょうがないか。
ルナさん、力を貸してくれませんか?
"まぁそうくると思ったわ。良いわよ、彼女も近くにいる事だし、前の様にはならないでしょう"
「ティア、お前の力借りるぞ?」
「分かった」
すると、俺の体に力が流れ込んでくるのを感じる。今行ってるのは、ティアの持っている固有スキルを、俺の固有スキルとルナさんの記憶を頼りに再現するというものだ。
しかしシグレの一件以来、この力を使うと俺とルナさんの意識が入れ替わってしまう様になった。まぁ力は問題無く使えるため気にしてないが………
「さて今度は随分と大勢いるのね?貴女達は下がってなさい」
「は、はい」
「何じゃ?ユウトの奴、喋り方が……」
「そこは気にしてはいけません」
「あれ位の敵なら、これで十分ね」
そう言ってルナは右手を前にかざした。
ただそれだけ、それだけで目の前から迫ってきていた魔物達は全て凍ってしまった。
「すごい……」
「おお〜!流石ユウトなのじゃ!」
「ふぅ、やっぱこの程度でも魔力の消費が激しいわね」
そう言うと、ユウトの体が突然力の抜けた様に倒れる。
"貴方、こんな使い方してたらいつか死ぬわよ?"
「今後は……気をつけます………」
やっぱこれを使った後は体がしんどいな……もっと鍛えないと駄目か。
「ユウト、大丈夫?」「凄かったのう!ユウト」
「あぁ、大丈夫。シグレもありがとな。じゃあ行くか。引き続きシグレ、頼んだぞ?」
「じゃからなぜ妾頼みなのじゃ〜!!」
話がぽんぽん進んでしまっているので読みづらいかもしれません……でも自分にはどうする事も出来ない……今後ともその辺りを直せるように努力は続けていきたいです。
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