表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トレース・ファンタジー  作者: 青の剣士
第1章 俺は異世界にはお呼びじゃ無いらしいです
3/40

俺、異世界へ行く

書いていた内容が突然消えてしまい、更新が長引いてしまいました…

「……………ん」


目が覚めると、俺は辺り一面が真っ暗な空間にいた。どうやら俺はうつ伏せの状態のまま気を失っていたらしい。だんだん目が覚めてくると、ついさっきの光景が思い浮かぶ。目の前から迫ってくる銀色の物体。慌てて鳴神を強引に引っ張り、トラックから遠ざけたのは良かったが………。

あの時に俺はトラックに轢かれたはず。なのに–––––––


「痛くない?」


うつ伏せの状態から起き上がり自分の体を確認すると、体一つ動かせない程の怪我を負い満身創痍だったはずの体からまるであの事故がなかったかのように傷が消えていた。それどころか、事故の衝撃で飛ばされた時に所々破れてしまった服も元通りになっている。


「どういう事だ?それにここどこだよ?謎すぎる……」


とりあえず謎の超常現象の解明は諦め、辺りを散策する事にする。

真っ暗な空間を真っ直ぐ進んでいくと、急に目の前が発光し辺り一面を光が覆う。


「な、なんだ!?」


本能的に目を閉じ光が収まるのを待つ。

徐々にさっきの光が収まってきたのを感じ目を開けると、そこには広大な空間と中央に向かい合うようにして並べられた木製の椅子が2つ。そしてその片方に座るブロンド美女がいた。

腰の辺りまで伸びた金色の髪は、どこから吹いているのかわからない風に揺られどこか神秘的な雰囲気を醸し出している。さらに出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデルのようなプロポーションもあって、千人に聞いたら千人が美人だと答えると確信できる容姿をしている。


「あまり驚かないんですね………」


「まぁボロボロの体が起きた瞬間に完治していたり、起きた瞬間真っ暗な空間にいたなんていう信じられない体験をしてなかったらもう少し驚いたかもな」


「そうですか………」


そう言うと、ブロンド美女は「私落ち込んでますよ」と言いたげに肩を落とした。こちらをチラチラと伺いながら…。俺が何をしたっていうんだ…。


「コホン。それでは気を取り直して、ようこそ選定の間へ。叢雨勇人さん」


「選定の間?それに俺の名前を知ってるのか?」


「これでもこの世界の管理者の仕事も行っている者ですから。一応この世界に存在する生物の名前位は知っているつもりです」


「はぁ、凄い人なんだな?こりゃ驚いた」


「その割には全然驚いた様子が見られないのですが…。では改めて、私はこの世界の管理者を任されている者です。名前はありませんが、この世界では"神"と崇められています」


そう言うとブロンド美女、もとい神は優雅に一礼した。動作の一つ一つが本当に綺麗だなこの人。っと、それよりも気になった事があったんだった。


「神様に会えるなんて光栄です。それはそれとして、とりあえずここに来てからわかんない事だらけなんで、質問しても良いですか?」


「えぇ。構いませんよ」


「それでは失礼して。まず、ここはどこなのか。それにここに俺を呼んで何をさせたいのか、なぜ俺なのか、この3つに答えてほしいのですが」


「分かりました。それでは少し長くなると思いますので、こちらにお掛け下さい」


そう言うと、神様は自らの向かいにある木製の椅子に座るよう促す。ありがたく座らせてもらおう。そうして俺が椅子に腰掛けると、神様は説明を始めた。


簡単に言うとこういう事だ。

まず1つ目の疑問"ここはどこか"だが、これは死者の魂が集まる"黄泉よみの空間"と呼ばれる所らしい。じゃあ俺は死んだのかとも思ったのだがそうではないらしい。神様曰く、自分の頼みを聞いてくれる人材を探していた所、偶々事故に遭っていた俺を発見し、ここに転移させたのだとか。意識を失う直前の青い光はこの転移に関係していたようだ。


次に2つ目の疑問"俺をつれてきて何をさせたいのか"だが、これは先程の質問と少し関係があるらしい。なんでもこことは別の世界、つまり"異世界"に行ってもらいたいのだとか。何故異世界への転移が必要なのか。それは単純に"魔族"と呼ばれる種族との争いによって人口が減ってしまい、戦力が足りなくなってしまったかららしい。


異世界には、"人族"、"獣人族"、"エルフ族"、'ドワーフ族"、"龍人族"、"魔族"の6つの種族が存在している。これらの種族がそれぞれ自分たちの領土を持ち、それなりに平和な生活を送っていたらしいのだが、数十年前に魔族の中で"魔王"と呼ばれる魔族の王のような存在が現れた事で魔族の力が増大。その圧倒的なまでの力を振るい、他の種族の領土に攻め込んでいる状況で、今は魔族以外の4種族が協力して魔族と争っているらしい(龍人族はこの争いには参加していないそうだ)。

しかし、未だ魔族の勢いは止められていない。1種族が強力な力を持ってしまうと、世界のバランスを維持する事が出来なくなるらしく、そのため現在の魔族が圧倒的な強さを持ってしまっている現状は神様も許容で出来ないので、こうして別の世界で死んでしまった、もしくは死ぬ直前の人間に力を与え戦力として送り届けているらしい。

まぁようはテンプレの異世界転生ってやつか。あ、俺はまだ死んでないそうだから異世界転移か。


そして最後の質問"なぜ俺なのか"だが、これは本当に偶々だったらしい。それに俺だけではなく、こうして異世界に送られている人間は結構いるそうだ。少しだけ特別だと思ってしまった自分が恥ずかしい!


と、まぁこんな感じの説明を聞かされたわけだが……


「あの質問なんですけど、その異世界転生、もしくは異世界転移を繰り返すと、今度は人族がやたら強くなってしまうと思うんですが」


神様から力を与えられた人を何人もほいほい届けたら、今度はやたら人族が強くなってしまう。そのため、それだと同じ事の繰り返しになってしまうと思ったんだが。


「いえ、その心配はありません。魔王を倒す事が出来るのは"勇者"だけですが、魔王を倒した直後、勇者は私が回収し元の世界に送り届ける事になっています。しかも勇者に選ばれるのは限られた人間だけです」


回収って言っちまったよこのひと。まぁそれなら人族が他の全種族の敵になる心配はないか。


「それに、正確には私は力を与えてはいません。ただ貴方達が本来持っている力の一部を"解放"しているだけです」


「解放?」


「ええ。だって私には力を与える事なんて出来ませんから。出来るのは精々その人が元から持っている力の一部を解放する事くらいです」


それだけでも十分凄い事なんだけどな…。それにしても力の解放か。


「それってつまり、俺の力も解放したりしてくれるってことですか?」


「申し訳ありません。元々事故に遭う予定だった鳴神光里さんの転移に使用するはずだった魔力を無駄に消費してしまったため、私の魔力が残り少なくなってしまい、貴方には力の解放を施す事が難しくなってしまいました…」


マジか!?転移ってそんなに魔力?を使うんだな…。まぁでも–––––––


「鳴神が無事だったならそれでいいか。まぁ力の解放だかにも少し興味があったが–––」


「待ってください!難しいだけで力の解放自体が出来ないわけではありません。貴方の中に眠る力は凄まじいものですが、それを制限している力が働いているため、本来の力を発揮出来ずにいるのです。

例えば、"どんなに練習をしてもそれが上手くならなかった"とか、"物覚えが悪かった"などの経験はありませんでしたか?」


「まぁありましたけど」


それは単純に練習不足とか、勉強不足とかだと思ってたからそこまで気にしてなかったな。


「解放を施す事が出来なかったお詫びの印としてその枷を外してあげましょう」


「はぁ、ありがとうございます?」


「あぁ〜!絶対信じてませんね!?いいです。これを見たら信じると思いますから!」


そう言うと神様は目を閉じて祈りを捧げ始めた。その瞬間俺の周りに青い光が集まり、俺の中に吸収されるように入ってくる。すると––––


『スキル【能力縛り】、【現状維持】、【戒めの鎖】が失われました』


『スキル【限界突破】【向上心】を獲得しました』


『固有スキル【模倣トレース】を獲得しました』


「これらのスキルは、貴方の潜在能力を制限していた力です。

【能力縛り】は、その名の通り貴方自身の能力を制限するもの。筋力や知力、瞬発力などのありとあらゆる能力を制限します。蓄えた経験や知力が失われることはありませんが、それらを上手く発揮する事が出来なくなります。努力があまり実らなかったのはこのスキルが原因ですね。

次に【現状維持】ですが、これは自身の力の成長を著しく遅くするものです。身体的な成長は遅くならないのが嫌らしい所ですね。

最後に【戒めの鎖】ですが、過去に何かトラウマになるような出来事を経験したものが持っている事が多いスキルです。先程説明したような"バッドステータス"と呼ばれるスキルを強化するスキルのようです。それと、バッドステータスを取り除いた事で抑制されてたスキルが解放されたみたいですね。

というかこんなにバッドステータスを持ってるなんて、どんな経験してきたんですか貴方は……」


と、長々と説明されてしまった……。何が何だかさっぱりだ。まぁとりあえずお礼は言っておこう。


「ありがと–––––––」


「大体ですね、【戒めの鎖】なんてレア中のレアスキルですよ!?あ、悪い意味でですけど。こんなスキル持ってたら、強くなるものも強くならないし、賢くなるものも賢くなりませんよ!」


「いや、知らんし。それと、過去の話については触れないでくれるとありがたい」


とりあえず、落ち着いてほしい。さっきまでの清楚なキャラ設定どこ行ったんだよ……


「コホン。すみません、取り乱しました。まぁとりあえずバッドステータスの方を取り除かせて貰いました。あと、これはオマケです」


そう言って神様が俺に手をかざすと、


『スキル【女神の加護】を獲得しました』


なんか新しいスキルを獲得したみたいだ。


「というか、さっきから別の誰かの声が聞こえるんだが……獲得しましたとか、失いましたとか」


「あぁ、それは"世界の声"と呼ばれるものです。厳密に言うと私よりも高位の神様の御声なのですが、大した違いはありませんので。スキルを獲得した時や、スキルを失った時に聞こえるはずです」


「なるほど。というか、こんなに強化してもらって良いのか?」


「新しく獲得したスキルのうち、殆どは貴方が元々持っていたスキルですから。それに【女神の加護】は貴方の強化とはあまり関係がありませんので」


「というと?」


「【女神の加護】というスキルは、持ってるだけで少し幸運になれるというだけのスキルですから。貴方が爆発的に強くなるわけでは無いのです」


なるほど。ようは"お守り"みたいなものか。しかもこんな美人の神様の加護なんて凄いご利益がありそうだな。


「そうなんですか。それではありがたく受け取っておきます」


「そうしてください。最後にお聞きしますが、私の頼みで異世界へ行くことを了承してくれますか?」


「わかりました。俺でよければ力になります」


ここまでしてもらって「やっぱ無理」とか言ったら後が怖いからな……。

というか、絶対断られないように先に事情を話して強化まで施すとか中々の策士だな。この方法で何人異世界に送られたのやら。


「ありがとうございます。それでは今から異世界に送らせていただきます。ご武運を」


その直後、俺の周りに例の青い光が集まってきた。


「短い間でしたが、貴方と話す事ができて楽しかったです」


その時の満面の笑みを俺は忘れないだろう。

神様の笑顔を見た事に満足しながら青い光に包まれ、俺は気を失った。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


目が醒めると、俺はどこかの大広間にいた。下には赤いカーペットが敷かれており、目の前には短い階段とその上にデッカい椅子が一つ。というか、俺って毎回こんなのばっかだな。転移する度に意識失うとかどれだけ耐性が無いんだよ……

まぁそれは置いとくとして、状況の把握が先だ。あの神様の言っていた事が本当なら、俺は今異世界にいる。しかも人族の戦力として送られているはずだから人族の領土の中のはずだ。今俺が持っている情報を総動員して考えてみると、俺の今いる場所は–––––


「王様のいる城って所か?」


「正解です。今回召喚された者は中々頭の回転が早いのですね」


俺の考えを肯定しながら一人の女の子が階段の上から話しかけてくる。女神様を彷彿とさせる金髪が肩の辺りまで伸びており、階段を降りるたびに髪が優雅に揺れている。スラッとした体型はまるでモデルのようだった。背は俺よりも少し小さいくらいか?その子の一つ一つの仕草にはどこか気品のようなものが感じられる。


「そりゃどうも。それでなんで俺はここに召喚されたんだ?」


「それをお話しする前にまずは自己紹介を、私は"アルトニカ王国"第二皇女ルデア=フェイル=アルトニカと申します。」


「あぁ、皇女様でしたか。俺は叢雨 勇人と言います。どうぞお見知りおきを」


目上の人への挨拶ってこんな感じで良かったっけ?なんか空回りしてる気がするが……


「ではムラサメさん。まず、なぜここに召喚されたかでしたか?それは召喚したのが私だからです」


「貴方が俺を召喚したんですか?」


「正確には異世界の勇者様を、ですが。女神様の神託を受け、それに合わせて私が召喚の儀を行い、勇者様を召喚します。殆どが勇者ではないのですが、召喚される人は皆強いステータスを持っているので、この国の兵士として雇っているのです」


「なるほど」


まぁここに召喚される(転移させられる)ってことは女神様から力を解放してもらってる訳だから、並の兵士よりは強いのかもな。

俺は枷を外してもらっただけで力を解放して貰ってはいないから例外だが。


「なので、申し訳ありませんが、貴方のステータスを確認させて貰えないでしょうか?」


「それはいいですけど、ステータスってそんな簡単に分かるものなのか?」


「ええ、【情報閲覧】というスキルを持っていると、相手のステータスを見る事が出来るんです。兵士や冒険者など魔物と戦闘をする人なら殆どの人が持っているスキルなので、貴方は持っているものと思ってましたが、見えませんか?」


「えぇ。そのような物は見えませんね」


マジか!?そんなの俺習得した記憶無いぞ!?


「そうですか。で、ですが【情報閲覧】のスキルを持っていない人もいますから、なんの問題もありませんよ?」


あの、皇女様?動揺が隠せていないようですが、【情報閲覧】スキルが無いのってそんなにまずいことなのでしょうか?触れてはいけない気がするのであえて突っ込まないが……


「では、ムラサメさん。ステータスを拝見させてもらいます」


そう言うと、ルデア=フェイル=アルトニカと名乗った皇女様は俺に向けて手をかざした。

それを見た皇女様は–––––


「ムラサメさん。ふざけてるんですか?」


………は?

次回、ヒロイン登場

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ