初クエストなのじゃ
更新ペースが絶賛下降中の青の剣士です。
いやぁ、最近寒くなってきましたね。なんだかんだ言ってもう10月も終わり、11月がやってきます。
そんな寒さにも負けずに更新を頑張っていきたいと思っております。
今後ともよろしくお願いします。
シグレ誘拐事件で俺が知っている事を大体教えた後、俺達は簡単なクエストを受ける事にした。
内容は例の如く魔物討伐。『ゴブリンを3体討伐する』というものだ。
先日の誘拐事件の際に現れた森のヌシの影響で、森から逃げた魔物が多数存在するらしい。
その中でも、ゴブリンの群れによる被害は広がる一方で、手が付けられなくなっているみたいだ。
何故この様なクエストを受けたのかというと、シグレも俺と一緒に行動する以上、どの位動けるのかは把握しておきたいからだ。
ゴブリンはリザードマンの様に相手の動きを学習したりする事はなくあまり強くない為単独でも十分対応できるし、もし何かあっても俺が助ける事が出来るから実力を見るにはうってつけらしい。
魔物討伐クエストは報酬も美味いし。
実力を測れる+報酬が美味いの一石二鳥だと、ギルドの受付嬢であるセラさんからのお墨付きだったので、そのアドバイスに従ったという訳だ。
と言う事で、俺達はゴブリンが逃げ込んだという洞窟にいるわけだが––––––
「このっ!大人しくやられんか!」
かれこれ30分以上シグレと一緒に1匹のゴブリンと戦い続けている。
今は俺がゴブリンの注意を引きながら隙を見てシグレに斬りかかってもらう作戦なんだが、これが中々難しい。
何とかゴブリンの棍棒による攻撃を剣で跳ね上げ隙を作るのだが、シグレはその隙をついて攻撃する事が出来ないでいた。
最初は俺が一人で戦い、後ろで見て戦い方を学んでから実戦に挑んでもらう予定だったんだが、駄々をこねられ仕方なく今の形に落ち着いたのだ。
そこまでは良い。だが、まともに剣も振れないのに良く戦いたいと言えたな……
剣を持ってる腕がめっちゃ震えてるじゃん……
洞窟に来る前、俺達は事前にシグレの為の武器を買う為に、武器屋に寄っていた。
俺は最初、力の無い少女でも使えるナイフを進めたんだが、あろう事かシグレは––––
「そんな小さい武器は嫌じゃ。妾はお主の様な剣にするのじゃ。絶対じゃぞ!!」
––––と、ここでも駄々をこね、自分の身長よりもやや短めの長剣を買ってしまった。
いや、こんだけ強く言われたら使えるのかなとか思うじゃん?なんか異世界補正で小さい子にとんでもない力が宿ってたりとか、そんな感じの事があるんだろうなと思ったんだよ。
結果は先程の様子を見れば明らかだろう。
そう、一回もまともに剣を振る事が出来なかったのだ。
「こんな筈じゃなかったのじゃ………」
「いや、よくあれで倒せると思ったな……」
これ以上長引かせるのは個人的に面倒なので、サクッとゴブリンを倒し、シグレの元に駆け寄る。
相当落ち込んでるな……と言うか、俺もまさか片手剣すら振れないとは思ってなかった。
「だからナイフにすればよかったのに……」
「うぅぅ……!」
あー、これは拗ねたか?なんか頬を膨らまして明後日の方向を向いてしまった。こうなると面倒だな……
「なぁ、シグレのステータス見せてくれないか?」
「妾の?何故じゃ」
「シグレの今の実力を知るためだよ。確かシグレの【閲覧】は、【情報閲覧】の上位版だったよな?なら、自分や他人のステータスを表示して他人に見せる事が出来るんじゃ無いか?」
今まで忘れてたが、異世界に来て間もない頃、皇女が俺に俺自身のステータスを見せた事があった。あれはおそらく【情報閲覧】のスキルによるものだったはずだから、シグレにも出来ると踏んだわけだ。
最初からこうしてればよかったな……
「確かに、それは可能じゃが………」
シグレは何かを考える様に俯いてしまった。そんなに躊躇う事か?ただ人のステータスを表示させて見せるだけだと思うんだが。
10秒程考えた後、シグレはパッと顔を上げると
「……特別じゃぞ?」
そう言って、何か呪文の様なものを唱えた。すると、一枚の板が出てくる。シグレはその板を俺へと差し出した。
「ありがとな、シグレ」
「妾のステータスを見せたのじゃ。お主のも見せて貰うぞ?」
「良いけど……お前は前にも俺のステータスは見てるだろ?」
「そ、それとこれとは話が別なのじゃ!」
「???」
よくわかんないけど、シグレの様子を見るに、人にステータスを見せるって事には何か重要な意味合いがあるのか?
シグレは俺の目の前までくると、突然手を上に掲げ背伸びをし始めた。
「ふぬぬぬ……!!」
「……何してんだ?」
「さっさと屈まんか!記録が出来んじゃろ!」
よくわかんないが、言われた通りにシグレの目線まで屈む。
すると、俺の顔の前にかざされたシグレの手から青色の光が溢れた。
光が収まると、何やらぶつぶつ呟きながら離れていくシグレ。
「……大丈夫、大丈夫じゃ……妾か自分の可能性を信じなくてどうするのじゃ……妾だっていずれは大きくなる、決してチビじゃないチビじゃないチビじゃないチビじゃないチビ–––––」
…………怖ぇよ。どんだけチビが嫌なんだ……
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
シグレがある程度落ち着いた後、俺達はそれぞれ相手のステータスを眺めていた。
シグレのステータスは–––––
シグレ 女 ???歳
『???』
【HP】25/25
【MP】490/500
【STR】 9
【VIT】 13
【INT】 59
【MIN】 48
【AGI】 19
【DEX】 16
固有スキル
【ーーー】【閲覧】
通常スキル
【隠蔽】【???】【???】
パッシブスキル
【王の威厳】
まぁ大体予想していた通りだ。初期の俺並みのステータスをしている。
筋力に至っては一桁だ。これなら剣を触れないのも頷ける。
【隠蔽】のスキルの影響なのか、判明していない部分が結構あり、珍しいパッシブスキルがある。それに固有スキルがしれっと2つある事が驚きだ。
それらを除けば至って普通のステータスだな、うん。
………なに?普通じゃないだろって?心配すんなって。ちゃんと分かってるから。ちょっと信じられないものを見て気が動転してるだけだから。
なんか一つだけ桁が違うなぁとは思ってたんだ。
でもおかしいだろ!?何で初期ステータス丸出しの奴のMPが500もあるんだよ!こんな魔力持ってて剣を使おうとしてたんだから、とんだ宝の持ち腐れだよな……
ただ一つ分かったのは、シグレは典型的な魔法使いタイプって事だ。
「そういやシグレ、ステータス見せるの大分躊躇ってた見たいだけどそんなに見せたく無かったのか?」
「お主、知らずにステータスを見せろと言っておったのか?」
「……どういう事?」
「ステータスと言うのはじゃな、自分がどういった存在なのかをより詳しく記したものじゃ。それを見せろという事は、相手の存在自体を要求する事に等しい。要は"お前が欲しい"と言っている様なものなのじゃぞ?」
「マジか!?」
そんな意味があるなんて知らなかった。俺どんだけキザなんだよ……
「まぁ嘘じゃが」
「さらっと嘘吐くんじゃねぇ!!」
こいつ、こっちがこの世界に関する知識に疎いからってからかいやがって。
「まぁ誰彼構わずステータスの開示を要求するのは良く無いという事じゃ。覚えておくと良いぞ?」
「……分かった」
「所でお主のステータスじゃが、少々気になる所があってな?」
そう言ってシグレに一枚の板を見せられる。そこには–––––
叢雨 勇人 男 17歳
『異世界に召喚されし者』
【HP】345/345
【MP】91/91
【STR】 203 → 312
【VIT】 184 → 286
【INT】 94 → 149
【MIN】 124 → 173
【AGI】 216 →291
【DEX】 142 →181
固有スキル
【模倣】→[ーーー][ーーー]
パッシブスキル
【限界突破】【向上心】【女神の加護】
久々に見たからか、結構ステータスの上昇が激しいな。筋力に至っては100以上も上昇してるし。
少しの間そのステータスを眺めてると、横からシグレが話し始めた。
「ここじゃ。このパッシブスキルとやら、前にギルドで見たときにはこんなスキル無かったはずなのじゃが……」
「あぁ、これはな––––」
簡単に【女神の加護】の効果である事を伝える。
「ほぉ、【女神の加護】か。お主には本当に驚かされるのじゃ」
シグレは納得した様で、それ以上ステータスに関して聞いてくる事は無かった。
「そういやお前のステータス、MPがやたら多かったんだけど、魔法とか使えないのか?」
「妾は魔法は使えんぞ?ああいう頭を使うのはどうにも苦手なのじゃ………」
おい、マジで宝の持ち腐れじゃねぇか。使わないんだったら俺にくれよそのMP。
俺だってそんなにたくさんあったらもしかしたら魔法とか使えるかもしれないじゃん。
「とにかくステータスが分かれば、このクエストを続けてる意味は無いな。サクッと終わらせよう」
「……え?」
その後、視界に入ったゴブリンを次々と一撃で葬り、目標の3匹をあっさり倒すと、洞窟の出口へと二人で向かった。
余談だが、人生初のクエストが一瞬で終わってしまったシグレの機嫌は一瞬で悪くなり、機嫌を直してもらうのに大分苦労した。
スランプ気味なんで、更新はゆっくりになってしまうかと思いますが、許してください……
初公開となったシグレのステータス。色々と謎に包まれてますねぇ。




