先代 【白銀ノ狼】
最新話を投稿してからそこまで時間は経ってませんが、投稿させて貰います。
先程小説の情報を見たら、着実にブックマークが増えてる様で、皆さんに読んで貰えて嬉しく思います。
この調子で頑張って行きたいと思いますので今後ともよろしくお願いします。
目が醒めると、俺は真っ暗な空間にいた。
丁度俺が女神様とあった所に似ている。
確か俺は森の中にいたはず……それから俺はユサムの攻撃を喰らって、その後気を失って……
「全く……死にそうになってるってのに、呑気なものね?」
考え事をしてると、どこからともなく声をかけられた。
声のした方へ振り返ると、銀髪の長い髪を揺らした美女が立っていた。
銀髪の髪は腰の辺りまで伸び、妖艶な肉体が大人っぽさを演出している。
赤い瞳には、人を引き込む魅力が詰まっていた。
しかし、その場に立っているだけで分かる圧倒的な存在感、そして威圧。向かい合っている俺でさえ気圧されてしまいそうになる。
「……どちら様ですか?」
「そう言えば、初対面だったわね。私は"ルナ"。先代の【白銀ノ狼】保持者って言ったら分かりやすいかしら?」
先代の【白銀ノ狼】保持者!?どうしてそんな人が?
「なんでそんな凄そうな人がここにいるんですか?と言うかここはどこですか?」
「凄そうでは無くて、実際凄いのだけれど……とりあえず貴方の質問に答えましょうか。まずここがどこか、ですが、ここは貴方の精神が宿る場所。つまり貴方の身体の中。それで私がここにいるのは、貴方が【白銀ノ狼】を一時的に取得したからよ」
精神の宿る場所……そして彼女は先代の【白銀ノ狼】保持者で、一時的だが【白銀ノ狼】を取得した俺の身体に居座っていると。
「なるほど、さっぱり分かんない」
「どうしてよ!?」
「なんとなく、ここが俺の身体の中だという事は分かった。でも貴女がここに居座ってる理由が分からない。今【白銀ノ狼】を持ってるのはティアの筈でしょう?」
本来の保持者を差し置いて俺の所に居座る理由がさっぱり分からなかった。
「まぁそうなのだけれど、彼女はまだスキルを発現出来ず、不安定な状態なの。その分貴方は一度【白銀ノ狼】を発動しているから、私としても貴方の身体は居心地が良いのよ」
そっか。俺と同じ場所にいるって事は、この人も俺の身体の中にいるってことなのか。なんか奇妙な感覚だ……
「とにかく今の貴方はかなり危ない状態なの。このままでいると、死んでしまうレベルで」
「マジですか!?」
「えぇ、本当よ。貴方が死んでしまうのは私としても困るから、早急に対処をする必要があるわ」
確かにこのまま死ぬのは嫌だな……ティアを1人にしてしまう。
「それで、どうするんですか?」
「私の力があれば、今の状態から復活するのは可能よ。でも、それには大きなデメリットが伴うの」
「デメリット?」
「まず"時間"。現在の貴方のステータスでは【白銀ノ狼】を発動出来るのは、精々2分程度。その間に現在の状況を全て打破するのは、貴方には不可能だわ」
言い切りやがったこの人……2分あればなんとか出来そうだけどな。
「それから単純に"ステータス"の問題。強大過ぎる力に貴方の身体が耐えられないのよ」
そんなに負担が大きいのか、【白銀ノ狼】って。
「そして最後が一番重要なのだけれど、これを行えば貴方は"人間じゃなくなる"の」
……は?人間じゃなくなる?DI○か?
「あの、最後のデメリットがよく分からなかったんですが……」
「それを説明するには、まずは私が今から何をしようとしているか、という事から説明した方が良さそうね」
はぁ……?
「まず、これから私は貴方の身体を乗っ取る。それから–––––」
「待て待て待て!!」
「な、何よ?」
「いや、いきなり信じられない台詞が聞こえてきたんですが?え、俺の身体を乗っ取るの?」
「えぇ、そうよ?だって貴方よりも私の方がこの力を上手く使えるもの」
そりゃあそうなんだけど……そんなさらっと言うなよ……今のは。「どうぞ好きに身体を乗っ取ってください」なんてお試し感覚でやっていい事でも無いし。
「それに、今は緊急事態なの。悠長に力の使い方を説明してる様な時間は無いのよ」
「そ、そうなんですか……」
「じゃあ続けるわね?私が貴方の身体を乗っ取った後、私が【白銀ノ狼】の力をフルで使って貴方の傷を完全に回復させる。その後、【白銀ノ狼】の力をフルで使って敵を殲滅する。以上よ!!」
この人、自信満々に言い切っちゃったよ……要は【白銀ノ狼】を使った力押しだろ?説明する必要が無かっただろ……
「それで、この"乗っ取る"って部分が重要なのだけれど、私が身体を乗っ取る事が出来るのは、獣人だけなのよ……」
「え?それじゃあ根本から成り立たないじゃ無いですか」
「だから、貴方にはこれから獣人になって貰うわ。正確には人間と獣人のハーフって事になるのだけれど」
いや、随分と簡単に言いますね。種族が変わるって結構大事だと思うんだが……
「そんなに心配しなくても大丈夫よ!ちょっと私の血と貴方の血を混ぜ合わせるだけだから」
「いや…だけど……」
「これをしないと、貴方は助からないしあの子も救う事は出来ないわよ?」
「………それをすれば、ティアを、大切なものを守る力が手に入るんですか?」
「えぇ、私が保証するわ」
これから訳の分からない事をされると思うと不安に襲われるが、やるしか無い。
それに、俺に何が起こっても大切なものを救う事が出来るなら、俺に悔いは無い。
「分かりました。お願いします」
「即答…ね。見かけによらず、案外男らしいのね」
「一言余計ですよ……」
そう言うと、なんとルナは俺に近づき、そのまま口付けを交わした。
「んンンッ!?」
初めて味わう感覚。それと同時に身体の中に何かが流れ込んできて、力が溢れてくる。
そしてゆっくりと顔を話した彼女は、微笑みながら–––––
"これで貴方と私は一心同体。これからが楽しみだわ"
そう言うと、そのままどこかへ消えてしまった。
「って何勝手に消えてんだ!!いきなり何してくれちゃってんだよ!?」
俺の抗議は、誰にも届く事は無かった。それからすぐに、俺の意識は段々薄れていく。
彼女の言う事を信じるなら、今頃俺の体は彼女に乗っ取られてる頃だろう。
俺にできない事を彼女がしてくれると言うんだ。ここは素直に甘えておこう。自分で守る事が出来ないという事が悔しくはあるが……
そんな事を思いながら、またしても俺の意識は暗闇に沈んでいった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
私とユサムは、巨大な魔物と戦っていた。高速で振り下ろされる鋭い爪。その攻撃によって、地面に大きな爪痕が残される。
正直、今にも逃げ出したい位に勝てる気がしない。それでも何とか戦えているのは、ユサムのお陰だった。
彼は私が攻撃されそうになると、可能な限り魔物に攻撃を当て、注意を私から逸らしてくれる。そのお陰で私は余り魔物と対峙する事なく、戦闘を継続出来ていた。
「"ファイアショット"!」
「ふっ!!」
私とユサムの攻撃が魔物にヒットする。しかし、相手はダメージを受けるどころか、大して気にした様子もなく私達への攻撃を続行する。
「ダメです!攻撃が通りません!」
「マズイな……完全な火力不足だ。このままじゃまったくダメージを与えられずに死んじまうぞ?」
「ですが、私にはそんな攻撃は……」
「俺にもねぇな」
どうするんですか!?それじゃあ完全に詰んでるじゃないですか!?
「ここは一旦引くしか無いかな……援軍は期待できそうに無いし、隙を見て逃げるしか無いな」
「あんな俊敏な魔物から、どうやって逃げるんですか!!」
「それは……その……あれだ!相手の攻撃を跳ね返すとか」
「あんな重い一撃はね返せるわけ無いじゃ無いですか!?」
そんな事を話していた次の瞬間––––
「グオオオッオァァ!!」
「しまっ––––」
「マズイ!」
私は認識出来ないような速度で放たれた魔物の一撃を喰らい、吹き飛ばされ木にぶつかる。全身が、言う事を聞かず、立ち上がる事ができない。
「おい!大丈夫か!?」
「……何…とか…」
「グリォォァァ!」
魔物は一切疲れを見せず、衰える事をしなかった。
一瞬で私達との距離を詰め、前足による一撃を放つ。
それでも私は諦める訳にはいかなかった。彼を守ると決めたんだ!私も彼と対等な関係でいると!だから、最後まで諦めちゃダメだ!
最後の力を振り絞って迎え撃とうとした次の瞬間、一筋の光が私と魔物の間に割って入ってきた。
その直後、その光に吹き飛ばされ、魔物が地面を滑っていた。
「……ユウト?」
いつも見ていたその姿、髪の色は銀色に変化していたが間違いない。確かにユウトのものだ。
でもどこか違う。はっきりとは言えないが、纏っている雰囲気や、攻撃の仕方など、何もかもが以前のユウトと違う。
「さて、私の邪魔をするのは誰かしら?」
赤い瞳が、魔物を強く睨んでいた。
今回はどっちかと言うと、お話の方がメインだったかな……
新キャラも続々と登場して、段々名前を覚えるのがキツくなってきました……




