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トレース・ファンタジー  作者: 青の剣士
第1章 俺は異世界にはお呼びじゃ無いらしいです
20/40

ギルマスの失踪

ブックマークが50件を突破!

ユニークアクセスも2000人を突破しました!

順調に読者が増えてくれてる様で嬉しいです。

読者からの意見、質問などなど有りましたら感想ページへ、どんどん書いてくれると有り難いです。

これからも『トレース・ファンタジー』を宜しくお願いします!

ネフトさんの店に転がり込んできたグリードから伝えられた情報は、最悪の情報であることを示していた。


「ギルマスが攫われたって、何で!?」


「知らねぇよ!でもギルマスが連れ去られている所を見たっていう奴がいたんだ!」


グリードが言うには、ピンク髮の少女––シグレは、黒づくめの男に抱えられ、森の方へ連れて行かれたらしい。

百歩譲ってシグレが連れて行かれたとしよう。でもその理由が分からない。


「マズイな……先に奴らに動かれたか。ユウト、ティア、今すぐにでも奴らを追ってくれ!急がないと手遅れになる!」


ネフトさんはかなり慌てている様だ。今までそんな情報無かったのにいきなり動かれたんだ。

そりゃ驚くに決まってる。

それは同時に、相手の出方が分からなくなってしまったという意味でもある。


「そうですね……!今逃げられたら、また行方が分からなくなってしまう。チャンスは今しか無い!」


「行きましょう、ユウトさん」


俺達は、急いでアルトニカ国付近の森へと向かった。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


アルトニカ城下町から走って5〜6分、俺達は森の入り口に着いた。

それにしても、この森には結構お世話になってるな。初めてのクエストもここでクリアしたし、初めてティアと会ったのもここだ。え?その二つは同じ時に起きたイベントだって?細かい事は気にすんな。


「何言ってるんですか?ユウトさん」


おっと失礼、口に出てたらしい。


「おそらくこの森にシグレさんは連れて行かれたんだと思います」


「あぁ、この森が一番姿を隠すにはもってこいだからな」


2人で森へと足を踏み入れる。中はとても静かだった。風に揺られ、葉が擦れる音だけが響いている。

日本でいう春と夏の間位の丁度過ごしやすい気温と、晴れやかな青空も相まって穏やかな気持ちになれる。


余談だが、この世界では日本と同じ様に季節という概念はあるらしいのだが、日本とは少しずれているらしい。

日本では周りが雪で覆われていたのに、こっちの世界で晴天が広がっているのはその為だ。今は夏に入る前にあたるらしい。


「敵は見つかったか?」


「いえ、見つかりません」


ティアは【気配探知】を持っている筈だが、そのティアでも気づかないという事は、よほど気配を消すのが上手い実力者か、気配を遮断するスキルを持っているのだろう。


その後も慎重に進んでいく。それにしても何か違和感があるな。何だろう?こう、しっくりこないというか、周りの雰囲気がなんか違うんだよな……


その瞬間右前方から殺気の様なものを感じ、反射的に横に飛ぶ。

今まで俺が立っていた所には、小さなナイフが刺さっていた。


「ほう?これを避けたか。まぐれか、はたまた反応して避けたのか」


木の陰から現れたのは、黒いローブを纏った人物だった。その顔はフードで覆われ、顔を見る事は出来ない。声を聞く限り、辛うじて男性であるという事は判断できる。


「お前がシグレを誘拐したのか」


「いかにも、私が攫った。ギルドマスターもそこにいる」


男が指を指した方を見ると、ロープの様なもので木に縛られ、気を失っているシグレの姿があった。

外傷は見られず、手荒な真似はされていない事がせめてもの救いだった。


「だが、ここでお前達にギルドマスターを渡すわけにはいかない。私も陛下の命を受けてここにいるのでな」


男はそう言うとフードを外した。こいつ、陛下の命とか言ったな。まさか–––––


「久し振りだな、異世界に召喚された者よ。元気そうで何よりだ」


「どの口で言ってんだよ、城の騎士様」


ローブの男は、城で俺を外に連行した騎士の1人だった。鎧着てなかったから気づかなかった。


「私もあれは本意じゃ無かった、異世界の知識が皆無な者に何も教えず外へ放り出すなど、死ねと言ってる様なものだからな」


「じゃあ何であんな事したんだよ」


「それが皇帝陛下の命令だからだ。私達は陛下の命令には逆らえない」


陛下陛下って、お前はロボットかよ?少しは自分の意思を持てよな……


「よって彼女も渡すわけにはいかない。大人しく引いてもらおう」


「悪いけどそれは聞けない相談だな。そこまで聞き分けが良い方では無いんでね。それに個人的にも城の奴らには少しムカついてるんだ」


背中のダーク=ブレイブを抜き、中段に構える。以前よりも剣は重いが、今はそれが頼もしい。


「私と戦う気か?皇女殿下に追放される程の実力しか持たないお前が私に勝てると思ってるのか?」


「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかだ。確かにお前は強いかも知れない。それでも俺は戦うしか無いんだよ、大切なものの為に!」


「随分と威勢が良いな。出来ればやりたくは無かったが……ここでお前を仕留めさせてもらう。

アルトニカ騎士団第9席、"ユサム・ランスロット"、参る!」


ローブの男–––ユサムは、手を前に掲げた。


「紅蓮のほのおよ・敵を撃ちぬけ–––"ファイアショット"!!」


その瞬間、ユサムの手から炎の玉が飛び出す。


「カハッ!!」


俺はその攻撃をまともに食らってしまう。直後、腹部に激しい痛みと炎の熱を同時に感じた。


「ガァァアァ!!」


「ユウトさん!」


くそっ!!痛ぇし熱い!何だこれ!?


「魔法での攻撃は初めてか。そりゃあ城からすぐに追い出されれば知らないのも無理は無いな」


これが魔法か。でも今の俺にはダーク=ブレイブがある。魔法による効果は無効化されるはず………

まさか、魔法無効スペルブレイクの効果って、装備者には効果が無くて武器に当てないと魔法を無効化出来ないのか!?

そう言う事は最初に教えてくれよ……


「ユウトさん、大丈夫ですか!?」


ティアが【回復の誓いエンゲージヒール】を使うため駆け寄ろうとするが–––––


「させるか––––"ファイアショット"!」


「ッッ!!」


ユサムの魔法攻撃によって牽制され、近づく事が許されない。

負傷した脇腹を抑えながら立ち上がる。


「ゴボァ!!……はぁ……はぁ……」


口から盛大に血を吐いてしまう。結構ダメージはデカイみたいだ。


「初級の魔法でそこまでダメージを負うのか。魔法に対する耐性はあまり無いみたいだな。流石、城から追い出されるだけはある」


「……うるせぇよ……」


「このっ!ユウトさんに何するんだ!!」


凄い速さでユサムの目前まで迫ったティアが、双剣による攻撃を放つ。


キィィン!!


ユサムはその一撃を、特に苦もなく腰に差していた剣で受け止める。


そこからティアの怒涛の連撃が炸裂した。


右、左、右上、左下、突き、左、上と途切れること無く放たれるティアの攻撃。その姿はまさに舞を舞っている様だった。


「くっ、速いな。反応するのがやっとか」


対するユサムは、少し表情に焦りが見えたが、それでも冷静にティアの攻撃を捌く。

両者の実力は拮抗している様に見えたが、ティアは全力なのに対して、ユサムにはまだ余裕が見られた。


「ふむ、そろそろ終わりにするか」


ティアの攻撃を剣で大きく弾くことで、連撃が止まる。大きく出来た隙を逃さず、ユサムはティアへ蹴りを入れ吹き飛ばす。


「ぐっ!!」


吹き飛ばされたティアは、そのまま地を這う。


「……何故お前程の実力がありながら、この男と共にいる?」


「……どういう…ことだ……!」


「一撃一撃は重く、キレがある。特にその速度には目を見張るものがある。この私が一瞬だが押されるほどだからな」


ユサムは淡々とティアの質問に答える。


「お前程の実力があればもっと上のランクまで上がれるだろう。何なら私の推薦で騎士にしてやっても良い。それなのに何故この男と共にいる事を選ぶんだ?」


「俺を仲間外れにするなよ」


俺はユサムへ背中から斬りかかる。


それをユサムは俺の気配を察知し、この不意打ちを難なく剣で受け止める。


「人が話をしてるんだ。邪魔はしないで貰おうか?」


「戦闘中に話をしてる方が悪いだろ。それが嫌なら、しっかり仕留めとけよ」


「それもそうだ」


俺は距離を取り改めて剣を構え直す。さっきの攻撃で相手に遠距離攻撃がある事が分かった。それが分かってれば対処の仕方もある。


こういう時は–––––


「先手必勝!!」


出来る限り最速でユサムへ接近しようとする。

しかし––––


「遅い!"ファイアショット"!」


無詠唱!?聞いてないぞ!

炎の玉が目前まで迫る。


迫ってくる炎がやけに遅く感じる。意識が研ぎ澄まされる様な感覚。


俺は炎の玉が飛んでくる軌道に、ダーク=ブレイブを滑り込ませる。


瞬間、炎の玉が霧散した。


「なっ!!」


「はぁぁぁ!!」


そうして俺はユサムへ渾身の一撃を放った。

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