ギルドマスター
新キャラ登場します。あと今回は少し短めです。
もしかしたらあの洞窟での戦いで、俺のステータスが強化されたのではないかと考えていたが、いざ自分のステータスを見てみると、そこには代わり映えしないステータスが表示されていた。
叢雨 勇人 男 17歳
『異世界に召喚されし者』
【HP】267/267
【MP】53/72
【STR】 203
【VIT】 184
【INT】 94
【MIN】 124
【AGI】 216
【DEX】 142
固有スキル
【模倣】→[ーーー][ーーー]
パッシブスキル
【限界突破】【向上心】【女神の加護】
いや、ステータスは上がってるよ?今までと同じ様に。唯一変化してるのが分かるのが【模倣】のストック数が増えた事。嬉しいよ?嬉しいけどさ……これじゃただストックが増えた事しか分からないじゃん!もっとこう、劇的にステータスが強化されてたりとか、凄いスキルが現れたりとか!あの時、明らかにそんな感じの雰囲気出てたじゃん!
「あぁ〜、【情報閲覧】欲しい……」
あれがあれば【模倣】のスキルが、ストック数増加の他にどういった変化をしてるのか分かるのに……あの皇女様は最悪だったが、スキルは優秀だったよな。回数制限さえ無ければこんなに悩まなくても済むのに……
「まぁ、無いものをねだってもしょうがないか」
とりあえず俺のステータスの変化は、ステータスの上昇と、【模倣】のストック数増加って事で結論付けよう。もしかしたら使ってるうちに気づく事もあるかもしれないし。
「とりあえず、今日はもう寝るか」
明日はクエストの報酬を貰いに行くんだったか。ベッドに入るとすぐに睡魔が襲ってくる。俺はその睡魔に身を委ね、暗闇へ意識を落としていった。
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翌日、俺が朝のトレーニングから帰ってくると、ティアが俺の部屋で待っていた。
「………何してるんだ?」
「今日はユウトさんの部屋で待つ事にしてみました」
「いや、それは見れば分かるんだけど、何の用かを聞きたいんだが」
なんだかティアの行動に遠慮がなくなってきた気がする。無意識に置かれていた距離が縮まっているのが感じられて嬉しいんだが、以前とのギャップに少し戸惑っているのも事実だ。
「ユウトさんは、朝から一体どこで何をしてるの?」
「え、ええっと………」
「だって、私が起きたのはまだ日が昇る前なのに、既にいないっておかしいじゃん!」
危ねぇ〜!!それって俺がここを出たのとほぼ同じタイミングじゃん!下手したら目撃されてたかもしれない。
「なぁティア、少し落ち着こう。そんなに怒る事無いだろ?」
「だって、私達はパーティーなんだよ!?なのにパーティーの間で隠し事があるなんて私は嫌!」
「いや、どんなパーティーでも隠し事の一つや二つあると思うが……」
「ねぇユウトさん、私達は"対等な関係"なんだよね?」
「あ、あぁ」
「私は隠し事されるの嫌だな。だから教えてくれないかな?教えてくれるよね?ね?」
「…………はい」
ひぇぇぇ〜、ティアの後ろからどす黒いオーラが出てる!視線だけで人を殺せそうだよあの目は!
そして、俺はティアに朝のトレーニングについて説明した。鳴神に教えた時もそうだけど、一人で鍛錬してるのを誰かに知られるのって恥ずかしいんだよな……
「鍛錬ですか……それって私も一緒にやらせて貰ってもいいかな?」
「あぁ、一人の鍛錬もそろそろ限界だと思ってたし、そういう事ならむしろこっちからお願いしたい位だよ」
ステータスからも分かるように、ティアはかなり強いからな。彼女との鍛錬で得られる経験値はかなり多いはずだ。
「じゃあそういう事で。次の鍛錬の時にはちゃんと私も呼んでね?」
「あぁ、分かった」
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朝からのティアとの騒動が一段落してから二人で朝食を取り、俺たちはギルドに向かった。ギルドに入ると、セラさんが迎えてくれる。
「お待ちしてました、ユウトさん、ティアさん」
「どうも、セラさん」「こんにちは」
「早速ですが、御二方にはこちらに来ていただきたいのです」
そのまま受付で報酬を渡されるのかと思ったが、別な場所へ案内される。ギルドの中の階段を登り二階へ、その後現れた廊下を右に曲がり、突き当たりの部屋に入るよう促された。俺たちは指示された通りにその部屋へ入る。
そこには中央にテーブルが一つあり、それを挟むようにして向かい合う形で椅子が四つ。さらに奥には大きな机と大きな椅子。なぜこんな場所に案内されたのか……次第に不安が募っていく。
「あの、ここは?」
「はい、貴方達の冒険者カードに記された記録を見たギルドマスターが是非お会いしたいとの事でしたので、普段ギルドマスターが大事な顔合わせで用いられる部屋に案内させてもらいました」
ちょっと?いきなりギルドマスターと顔合わせとかレベル高すぎない?ギルドマスターってこのデッカい建物の中で一番偉い人の事だろ?そんな人が俺たちに会うなんてどんだけ暇なんだよ………
「もうすぐこちらにギルドマスターがお越しになると思いますので、そちらにおかけになってお待ちください」
「はぁ、ありがとうございます」
とりあえず、俺たちは目の前の椅子に腰掛ける。
「ギルドマスターってどんな人なのかな?」
「さぁ?分かんないけど、俺は怖い人が来ると思うな。人の上に立つって事は、威厳が無いといけないからな」
「そうですか〜?私は綺麗な人が来ると思うな。きっと凄く美人だと思う」
そんな風にギルドマスターの容姿を想像しながら到着を待つ。
すると扉がゆっくりと開かれ人影が見えた。そこにいたのは–––––
「お主らが洞窟の魔物を退け、魔族を追い払った者たちか。どちらも魔族を追い払えるほど強そうには見えんが……」
幼気な少女だった。こんな子供までギルドにはいるのか。それとも誰かの娘とかかな?それにしてもギルドマスター遅いな……いつまで待たせるんだ?
「おい小僧。お主が本当に魔族を退けたのか?」
「なぁ君、お兄さんに小僧とか言っちゃ駄目だろ?お父さんお母さんに習わなかったのか?」
「あ、あのユウトさん–––––」
ティアが何か言いたそうにしているが、俺の耳には入ってこない。そもそも幼女に会って早々小僧呼ばわりされたんだ。ここらで俺が目上の人に対する口の利き方って物を教えてあげないと、この子は碌な大人にならない!
「全く、この子の親はどういう教育をしてるんだか……でも俺だって子供の教育なんてした事無いからな……」
「ですから、ユウトさん–––––」
「こんな幼女に小僧呼ばわりとか、じゃあお前は何なんだっていう–––––ゴボァ!!」
唐突に俺は椅子ごと吹き飛ばされていた。滅茶苦茶痛いんですが!?何が起こったんだ?
「こんな立派なれでぃに向かって幼女呼ばわりとは何事か!この若造が!貴様の目は節穴か!!」
この子は何を言ってんだ?どう見たって幼女–––––
「あの、ユウトさん……」
そこで、慌てて駆け寄ってきたティアが俺に言う。
「多分あの方がギルドマスターでは無いかと」
「ふむ、そちらの女子は見る目がある様じゃな。如何にも妾がここの最高権力者であるギルドマスター、"シグレ"じゃ!!」
そう言って幼女––––もといギルドマスターの"シグレ"は、腰に手を当てて胸を張ったのだった。




