激闘の末に
なんとか1日1回投稿出来ている……
書き溜めしてないから、行き当たりばったり感が凄い……やっぱある程度先を見越して書かないとな、と思う作者です。
誤字が多くて申し訳ありません。いつも指摘してくださっている読者の方々、本当に有難うございます。今後ともこの作品を宜しくお願いします。
9/28 誤字を修正しました。
10/4 勇人の髪の色が黒に戻っている事を表すセリフを追加しました。
洞窟での激戦の後、俺はティアを背負って洞窟を脱出し、ギルドまで戻ってきた。ギルドへクエスト終了の報告を行い、報酬は後日頂くことにして宿へと戻る。受付の女性(リアさんというらしい)は、ティアの事を凄く心配してくれていて、その心遣いが有難かった。それと、クエスト終了の確認として冒険者カードを掲示した時に、何やら奥が騒がしくなっていたが、気にしない様にしよう。それよりも今はティアが大事だ。
宿に戻ってくると、ティアの部屋に行き彼女をベッドに寝かせる。バティンの攻撃が予想以上だった様で、未だに目を覚ましていない。看病をするにしてもそんな経験一切ないし、こういう時って何をすれば良いんだ?とりあえず宿屋の主人に頼んでお粥は作ってもらったが、起きて貰えないと食べられないし……辛抱強く待つしかないか。
それからしばらく時間が経過して、ようやくティアが目を覚ました。
「あれ……私……」
「ティア!?よかった、目が覚めた……」
「ユウトさん……」
ティアはまだ寝ぼけているのか、目がトロンとしている。なんか可愛いな。すると徐々に目が覚めてきたのか、最初はおぼろげにしか分からなかった俺の存在を認識したようだ。そして俺と目が合った瞬間、いきなり顔がリンゴのように真っ赤に染まった。
「ユ、ユウトさん!?」
「あ、あぁ。そうだけど」
なんでそんなに慌ててるんだ?逆にこっちがビックリしてしまった。
「もしかして私、気を失ってました?」
「あぁ、バティンとかいう魔族の攻撃を受けてからずっとだ。全然起きる気配が無かったからかなり心配したんだぞ?」
「え、えぇ。そうですね……」
ん?何か含みのある言い方だな……それに俺と目を合わせようともしないし。
「なぁ、どこかまだ体調が優れないのか?」
「え!?」
ティアの顔を覗き込むように尋ねると、ティアは物凄い勢いで距離を取った。加速でも使ったんじゃないのか?なんかショックだな……
「悪い、ティアに迷惑をかけるつもりじゃ無かったんだ。そんなに嫌がられるとは思わなかった」
「え?」
「宿屋の主人に作ってもらったお粥をここに置いておくから、後でゆっくり食べてくれ。出来れば、ティアとは今後も一緒のパーティーでやって行きたいから辞めてほしくは無いが、もし俺の事が嫌になったり、他のパーティーに移動したいと考えているなら––––––」
「ちょ!?何言ってくれちゃってんですか!?」
「ん?」
「いやいやいやいや、私がユウトさんの事を嫌いになるとかあり得ないでしょ?奴隷から解放してくれただけじゃなく、洞窟では私の事を助けてくれた貴方をどう嫌えばいいのか、こっちが教えて貰いたい位よ!」
あれ、違ったのか?今までティアがこんな反応をした事は無かったから、てっきり「こんなに頼りない人と同じパーティーで活動するなんて無理です」とか言われると思ってたんだけど。
「それより、その口調……」
「あ!すみません……つい、普段の話し方が……」
「いや、出来ればこれからもその感じで喋ってくれると嬉しいかな。丁寧に話されると、なんか距離を取られてるように感じで寂しいんだ」
「ですが……」
「ティア、忘れたのか?俺たちは"対等な関係"だろ?」
「……うん、分かった!じゃあこれからも宜しくね、ユウトさん!」
「出来れば"さん"も取ってくれて良いんだが……」
「それはちょっと難しいかも。もう少し待ってて」
「あぁ、分かった」
そんな感じで、俺たちは絆を深めていった。
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
ティアの体調が安定してきた頃、俺はティアに洞窟であった事を説明した。その上で相談があったからだ。
「私の治癒能力と、固有スキル……」
「あぁ。この二つは強力すぎる力だと思う。この力を知られたら、ティアは様々なパーティーに勧誘されると思う。だから、これからは人前であまりこの力を使ってほしくないんだ」
「私はユウトさん以外とパーティーを組むつもりは無いけど?」
「それは嬉しいんだけど、他の奴らに目撃されるだけでも厄介だから」
この子天然で嬉しい事言ってくれちゃってるけど、何?俺を悶え殺すつもりなの?さっきからドキドキしっぱなしなんですが。
「そもそも私の固有スキルは、まだ解放されていなかったはずだけど……」
「大体検討はついてる。ティアの固有スキルは【白銀ノ狼】だ」
「あぁ、あの髪が銀色になって凄くパワーアップする奴ね?そう言えばいつの間にか髪の色が黒に戻ってるね」
「そうだけど……知ってたの?」
「………」
こいつ、さてはあの時起きてたな?敵に捕まってたと思ったら気を失った振りをしてただけかよ……おかしいと思ったんだよ。バティンの攻撃を受けて、どうしてティアが気を失ってるのに、俺は平気なのか。俺の新しい力が目覚めたのかとも思ったけど、やっぱり違ったみたいだ。
「って事はお前……俺の言ったこと、聞いてた?」
「……はい」
はい終わった〜。あんなの聞かれるとか恥ずかしいなんてレベルじゃねーぞ!?本人起きてるって分かってたらあんな小っ恥ずかしいこと話さなかったわ!!これからどうやってティアといれば良いんだよ……
「で、でも!私、あんなにユウトさんに思って貰えてるって分かって嬉しかったの!それに獣人である私を女の子として見ててくれたし、あんなに強い魔族に一歩も引かなかったり、凄くカッコよ––––かった……です……」
しきりにフォローしてくれていたティアだったが、後半に差し掛かると徐々に勢いが落ちていき、最終的には俯いて顔を赤くしてしまった。
「お、おう……ありがとう」
「は、はい」
どう言葉を返して良いのかが分からず、つい素っ気なく返してしまう。やっぱ俺はこういう時ダメだな……
「そ、それより見てたなら話は早い。多分俺はあの時、ティアの固有スキルを【模倣】を使ってコピーしたんだと思う」
「どうしてそう思うの?」
「もしあの時コピーしたのが通常スキルなら、あいつが撤退なんて選択肢を取るとは思えない。もしそうなら、俺をコテンパンに叩きのめしてから魔族領に連れて帰ったはずだ。それにあの中で1番弱かったはずの俺が魔族を退けられるまでに強化出来たんだ。固有スキルをコピーした以外考えられない」
「ユウトさんはそんなに弱く無いと思うんだけど……」
「何か言ったか?」
「なんでもないよ。それより、今の話の何が問題なの?」
そして俺は1番の疑問をティアに伝える。
「俺がなぜあの時ティアのスキルをコピー出来たかが分からないんだ」
そう、俺は前に一度ティアのスキルをコピーする実験を行っていた。結果は失敗。その時は、ステータス的にティアの方が高いから当たり前だと結論付けていたが……今回コピー出来たと考えると、俺のスキルの制限は俺が思っているのとは違うのかもしれない。
「ティアは何か思い当たることは無かったか?」
「そう言われても…………あ!」
「何かあったのか!?」
「うん。あの時、ユウトさんの話を聞いてから、ユウトさんには一生勝てないだろうなって思ってたの。そしたら、急に体から力が抜かれていく感覚に陥ったの」
「それはまたどうして?」
「ユウトさんの強さは、ステータスとかそう言うものじゃなくて心の強さなんだって、どんなに強い敵が現れても、大切なもののために一歩も引かない意志の強さなんだって分かったから」
「なるほどな……」
今の話では、ティアはあの時に初めて俺が強いと自覚した。そして勝てないと悟った。それがステータスではなく、気持ちの面での強さだったとしても。
それなら、一応スキルの条件と一致するのか?スキルの内容は、あの時に謎の声を聞いてからなんとなく頭の中でイメージ出来たし、スキルを目撃するっていうのは、あのイメージの中に出てきた、白銀の狼の事だったんだろう。多分だが……
「ティアのお陰で分かんなかった事が解決できた。ありがとな」
「いえいえ、これ位ならいくらでも付き合いますから」
とりあえず、一番の疑問点に関しては解決できた。まだ他にも気になることはあるが……
「じゃあ、今日はゆっくり休んでくれ」
「分かった。お休み、ユウトさん」
「あぁ。お休み、ティア」
そうして俺は自分の部屋に戻る。
部屋に戻ってから、俺は自分の冒険者カードを取り出し、ステータス画面を表示させる。あの洞窟との戦いで、ティアの力が流れ込んでくる前に、内側から力が溢れてくるような感覚があった。俺の推測が正しければ、俺の内側に眠ってた力が解放されたはずだ。さらなる進化に期待を膨らませ、自分のステータス画面を覗く。するとそこには––––––
叢雨 勇人 男 17歳
『異世界に召喚されし者』
【HP】267/267
【MP】53/72
【STR】 158 →203
【VIT】134 → 184
【INT】47 → 94
【MIN】50 → 124
【AGI】142 → 216
【DEX】91 → 142
固有スキル
【模倣】→[ーーー][ーーー]
パッシブスキル
【限界突破】【向上心】【女神の加護】
…………あれ?なんか強化、地味じゃね?
勇人君、あんなに頑張ったのに可哀想、などと言う突っ込みは受け付けません。
ティアのステータスの上昇率も気になるところですね。近いうちに判明するかもしれません。




