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新たなる仲間たち


「すごいなフエルテ様は」


 クレスト・モンキーであった柿の木に村人が集まっている。騎士たちが駆けつけると異形の手下たちはあらかたヘンティルとイノセンテによって始末されたそうだ。


「まったくだ。見たことのないビッグヘッドに対して冷静に対処するなんてすごいね」

「さすがは、前の村で赤い鶏冠の新種に体を齧られただけはある。真似できないよ」

「生い立ちが違うと精神構造も違うものだな。感心します」


 キノコや犬、アリの亜人たちが歓喜の声を上げていた。

 不思議なことに亜人たちは人間を嫌わない。別の形態での結婚にも抵抗がないのだ。

 なぜか人間だけの村だと亜人を忌み嫌い、別の村の血を混ぜることを恐れるのである。

 だが先ほどの言葉にフエルテは引き付けられた。


 なぜ彼らは前の村で自分がレッド・クレストにかじられたことを知っているのだろうか?

 役目を果たしたフエルテは屋根から降りた。そして勇者を出迎えたのは、主である司祭アモルである。その横にベニテングダケとサリハリアリの姉妹が挟んでいた。


「ごくろうさまフエルテ。無事に済んで何よりです」

「ああ、お疲れさま。そちらも無事で何よりだ」


 凱旋した英雄の表情は曇っていた。まるでびっしょりと朝露に濡れたようである。


「あら~、もしかして気にしているのですか~? フエルテ様が新種にかじられたことを知っている人がいることに~」


 そこにイノセンテが口を挟む。この無邪気な笑顔を浮かべる娘が核心を突いたからだ。


「なぜ知っている?」

「あらあたしたちは長老の娘よ。教団とは情報を交換しておりますの。情報は命綱と同じですのよ」


 姉のヘンティルが補足した。


「教会にある無線機のおかげですね。司祭や長老しか扱えない代物です」

「アモル様の言う通りです~。でもこれは教会とわたくしたちだけの秘密でしたけど、昨日の夕方から村中の噂になってましたです~」

「昨日の夕方からだって?」


 フエルテが訊ねた。無線機はフエゴ教団のある村にある物だ。これは教会と長老の家にしかない。そして扱えるのは教団本山で通信士の資格を獲ったものだけである。

 人の口に戸は立てられない。教団で内緒にしてもすぐにばれる。だが今回は噂になるのが早すぎるのだ。


「そうです~。しかも他の村でも同じ噂が昨日から流れてます~。これは異常ですね~」


 イノセンテの無邪気な声が不気味に思える。彼女は口調と裏腹に頭が切れるのだろう。

 村の狐娘は言った。ヘンティルは努力家だと。妹も同じということなのだ。


「それと思い出したことがあるわ」


 妹の後を姉が引き継ぐ。


「今回と同じ事件が、数年前別の村でも起きていたのよ。それも一度や二度ではなく複数もね。

司祭様と杖が襲われて命を落としたそうなの。

これは教会にある資料を読んだから思い出せたのね」


 それが本当ならどういうことだろうか。司祭とその杖が新種のビッグヘッドに襲われるなど偶然にしてはおかしい。


「やはりわたくしたちがアモル様たちを補佐しないといけないです~。これからもよろしくです~」


 イノセンテが無邪気に言った。司祭とその杖は「ハァ?」と顔を合わせる。


「実はあたしたちも杖候補なのです。カムパネルラ様とお父様とも相談してあなた方について行く予定でした。

本当は女のあたしより劣る筋肉の持ち主についていくつもりはなかったですが、合格です。さあまいりましょう!!」


 あまりの超展開にアモルとフエルテは茫然としていた。一番に教会に来ていたらカムパネルラの口から教えられたかもしれない。これは自分たちのミスだ。


「というわけで、アモルさん。あたしは負けませんからね」


 ヘンティルが自分と同行する司祭に指をさした。


「フエルテがだれを選ぶか、勝負よ!!」


 筋肉隆々のキノコ娘の宣言に、アモルは冷淡であった。


「……勝負にはならない。安心してくださいな」


 そう言って司祭は教会へ足を向ける。そっけない態度にヘンティルは真っ白い肌がランタンの如く火が灯された。


「きーっ、何あの態度。初めから相手にならないと思っているのね!!」

「お姉さま落ち着いて。お姉さまの筋肉ならフエルテ様のハートを確実に射貫くに違いありませんです~」


 妹は根拠のないことを言う。その言葉に姉は胸を高鳴らせるのだった。


「そうよね!! あんな腹に一物がある女なんかに負けるものですか!!」

「難しいです~。アモル様の一物が火を噴いたらお姉さまが大ピンチです~」


 姉妹の無邪気な会話にフエルテは肩をすくめた。


「……アモルと俺が結ばれることはない。決してな」


 フエルテのつぶやきに、ヘンティルが背中に張り付いた。


「あ~ら。身分のことを言っているのかしら? 確か司祭は家柄ではなく、才能で選ばれるはず。あなたとあの子が結ばれる可能性はあるのではなくて?」


 白いたくましい手が筋肉の鎧をなでる。それは鍛冶に鍛え抜かれたしなやかな造りであった。


「だからといって俺の胸を揉まないでくれ。硬くてつまらないだろう?」

「あ~ら。あたしの胸も硬いわよ。触ってごらんなさいな」


 ヘンティルが科を作る。中身と性別は女だが、体格が男なので微妙だ。


「あ~、お姉さまずるいです~。わたしくのおっぱいのほうが硬くて凶器になるですよ~」


 イノセンテが右手を組んだ。そしてビキニに包まれた胸を押し付ける。アリ特有のざらざらした肌と重厚な胸に腕が挟まれた。

 英雄色好むというが、フエルテにとって迷惑であった。

 姦しい姉妹は筋肉の英雄の気持ちに気づかず、自己陶酔するだけである。

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