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夜、カイは突然窓の外が明るくなり、何かが燃えるような音を聞いて目を覚ます。カイは起き上がると窓の外を眺めるが、寝起きの為か頭が即座に働かない。



カイの視線の先で村が燃えている。それはもしかしたら村の家々が巨大な生物の吐く息によって燃やされているという事実を認めたくなかったからかもしれない。


「昨日の今日でもう襲撃とは、なにかあったのか?」


カイは窓の外を見ながら嫌な汗を流し、現実から逃避しそうになったが、突然自カイの部屋の扉が開き部屋に入ってきた人物によって覚醒させられた。


「カイ、大丈夫か!?」



荒々しく扉を開け、カイの部屋に血相を変えて入ってきたのはセンリだった。カイには親がいない為センリが慌てて起こしにきたのだろう。



カイもこれほど騒ぎが起きているにも関わらず寝続けていることはなかっただろうが、能力を発動させていない状態で先制攻撃を受けていたら命はなかったかもしれない。


家から脱出したカイとセンリの目に映るのは燃え盛る炎と逃げ惑う村人達の姿、そして雄たけび巨大な竜の亜種の姿だった。



村人達の全員が逃げ惑っているというわけではない、戦える村の男達は能力を使用しワイバーンに果敢に挑んでいた。


ここは魔物の襲撃が頻繁に発生する村だ。そこに住む男達はけして弱くはない。むしろ敵が竜の亜種である獰猛なワイバーンであろうと、一頭程度であれば何とか撃退できる筈だ。



だが今回村を襲ったワイバーンは番、二頭だったのだ。ワイバーンは通常の竜とは違い前足の部分がない。



そのため鉤爪による攻撃は、空からの攻撃時以外はない。だが、その鋭い牙による咬みつきと尻尾によるなぎ払い、そして何より強力な火炎は脅威的だ。


ワイバーンに応戦している村人の一人がウェポン系能力で出現させた斧でワイバーンの体を斬りつけるが、その鱗に阻まれて肉には届かない。斧による攻撃をくらい、怒りを増幅させたワイバーンは尻尾で、自らに抵抗してくる虫けら達をなぎ払う。


巨体に似合わぬそのスピードに避けられないと判断した村人は、その攻撃を斧で受け止め吹き飛ばされる。



ワイバーン尻尾を振るっている隙にもう一人がワイバーンの首を切り落としにかかるが、その攻撃もワイバーンの牙による反撃によって阻止される。



ワイバーンの牙が村人の体をかすり、ワイバーンの牙が当たった箇所が赤黒く変色していく。



ワイバーンの牙には毒があるのだ。幸い対峙するワイバーンは致死性の猛毒をもっていないようだが、毒が全身に廻れば身体が麻痺し動けなくなるだろう。



ワイバーンは一人脱落したのを確認すると、尻尾によって吹き飛ばされた村人に向かって火炎弾を放とうとする。ただでさえ村人達の勝ち目が少ないのに、これ以上人数が減ったら勝ち目は皆無になる。



勇敢にワイバーンに立ち向かっていた村人達の表情に焦りが見え始めた。尻尾で弾き飛ばされた村人はダメージの為か、即座に立ち上がることができない。



この激しい戦いの様子を今まで呆然と眺めていることしかできなかった二人も、ここにきてようやく行動を開始した。


民家の壁に叩きつけられ呻き声をあげることしか出来ない村人に向かって飛来する火炎弾は民家ごと村人を焼く前に突然軌道を変え、あらぬ方向に落下して炸裂した。命中しなかったのは偶然ではない。緊張した面持ちでワイバーンを見るセンリが原因だった。


センリの能力は炎を支配する能力だ。ワイバーンが吐き出した火炎弾の軌道を操作することぐらいはたやすく行える。だがセンリも始めて竜種に対峙することに緊張しているらしい。なかなか精神集中を上手く行えず、火炎弾の軌道をずらせたはいいものの、そのまま跳ね返すことはできなかったようだ。



「ふう、いくか!」



カイも自らの両頬を叩くと、覚悟を決める。全身が黒い鎧包まれ、カイはワイバーンに向かって雄たけびを上げながら突撃する。


ワイバーンは喚きながら走り寄ってくる黒い鎧を纏ったカイを睨みつけ、間合いに入ってくると同時に尻尾を振るった。その隙をついて村人が突き出した短剣がワイバーンの身体に突き刺さるが、短い刀身ではワイバーンに致命的なダメージは与えられない。



全力で突撃したせいでワイバーンの尻尾は丁度カウンターになったようで、かなりの勢いで弾きとばし、カイはピンボールのように吹っ飛んで燃え盛る瓦礫に突っ込んだ。


「ぐっ、いてぇ。けど死ぬほどじゃない」



カイは痛みに顔をしかめながら瓦礫の中から脱出すると、今度は冷静にワイバーンに接近する。カイの緊張がようやくほぐれてきたようだ。


とはいえ、最初にカウンターを受けてしまったのは痛かった。カイは腹部の痛烈な痛みに嫌な汗を流すが、立ち止まりはしない。


ワイバーンは短剣を振るう村人に気をとられ、吹き飛んだカイを見ていない。今が絶好の機会だ。カイは自分の拳が届く位置まで静かにワイバーンに近づくと、全力でその拳をワイバーンに向かって振りぬいた。


その拳の一撃は重く、ワイバーンの巨体が衝撃で浮き、ワイバーンの鱗越しに衝撃を肉体に伝えて行く。カイは腰を落とし、重く力強い拳をワイバーンに向かって何度も何度も撃ち込んでいく。








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