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おもろかなし

 その悲劇は、九藤がまだ京都にいるころに怒りました。

 ちがう、起こりました。怒ってどうする、悲劇なのに。


 寒い冬の晩でした。


 真面目な学生さんだった九藤は、卒論のためのお勉強を、夜遅くまで頑張っておりました。


 頑張った、よし、今日はここで終了、と自分を認めてやり、寝る前にお風呂であったまろうと思いました。

 なにせ寒い冬の晩でしたから。

 九藤はユニットバスに足を運び、お湯が出るべく蛇口をひねりました。

 ひねりました。

 ひねりました。

 ひねりました、どこまでも。


 しかし湯が出て来る手応えはなく、ただ「カランカラン」という冷たい音がするばかり。


 悲劇です。水道管凍結という、まがうかたなき、悲劇です。


 おお、シェイクスピアもかくや!


 九藤は、震えながら、寝床に入るしかありませんでした。京都の底冷えというものは、実に恐ろしい魔物なのです。


 学生さんに、優しくないっ!


 その話を、後日、大学で同級生に話していたところ、後ろで何気に聞き耳を立てておられやがった某教授が、「くすり!」と笑いやがられました。


「くすり!」


 むっかぁー。人の悲劇を何だと思うておるのだ、蜜の味か!


 九藤が、京都の冬と、大学教授という人種をはなはだしくジト目で見る契機となったのが、このお話であります。



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