蛇にょろろ
蛇にょろろ
それは九藤がまだ保育園に通っていたころの出来事でした。
季節は春ぐらいでしたか、母が、ここはお母さんと表記しましょう。お母さんが、お迎えに来てくれました。
うちは共働きで、お母さんもお勤めしていたので、会社帰りです。
雨が降って、保育園からバス停までの道のそこかしこに水溜りが出来ていました。
二人して傘さしてばちゃばちゃばちゃ。
するとお母さんが突然、立ち止まりました。
九藤「どうしたの?」
お母さん「…あの水溜りに蛇がおる」
確かに一本の縄のような物が水溜りに落ちていましたが、お母さんの思い通りには行きませんよ、と九藤は思いました。
全く、子供を脅かそうと思って(笑)、と。
でもお母さん、ねばるんです。
それで九藤はよくよく、その縄を見ました。
すると、なんと、それがにょろろ、と動いたではありませんか!
九藤が悲鳴を上げると固まっていたお母さんも悲鳴を上げました。
二人して転がるように、その場から逃げ去ったのです。
蛇ってコンクリートの道の上にもいるのですね。水分があれば出るんでしょうか。
九藤は驚き、お母さんを疑って悪かったな、と思いました。
そしてちょっと面白おかしくなりました。
なぜあんな場所におられたのやら、蛇さんには蛇さんのご事情があったのでしょうねえ。




